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しおりを挟むカミロ王子が、上段から切りかかって来るのを剣で受け止める。受け止めた手が、ぶるぶると震えた。
(強くなってる……!)
彼が続けざまに、攻撃して来るのを後ろに下がりながら剣で受け止めて行く。早いペースで何度も高く音が、響く。
「くっ」
彼の突きを寸でで避ける。そこから、更にペースが上がって行く。
(まずい……)
美桜はとっさにステータスストッパーを三から四に上げた。そして彼の剣を跳ね上げた。剣は彼の手を離れ遠くへ落ちて行く。しかしカミロ王子は諦めずにこちらに向かって来た。美桜の懐に入った彼は、短剣を持っている。美桜は剣を捨てて、短剣を持った彼の手を掴み素早くねじ上げて、そのまま彼の体を地面に投げた。
「ぐっ……」
彼が鈍い声を上げて、短剣を落とす。勝負はついた。
(あ、あぶなかった……)
もう少しで押し負けるところだった。美桜は、手を緩めて離れる。
「つつつ……いやぁ、やっぱり君は強いな」
彼が腕を撫でる。
「ありがとうございます。ですが、私はカミロ王子の成長に驚いています。まさかこれ程短い期間に、ココまでレベルアップをするとは……」
「君にそう言って貰えると嬉しいな」
美桜はアナライズで彼のステータスを見る。
【カミロ王子 レベル五 ジョブ剣聖】
美桜は目を見開く。
「どうかした?」
「い、いえ……少し、感動していただけです。カミロ王子の成長に……」
(やった!! カミロ王子が剣聖になってる!!!)
「そうか。先生に喜んで貰えて嬉しいよ」
「先生だなんて……」
カミロが立ち上がる。
「少し休憩しないか」
「そうですね」
壁際に行って、持参して来ていた水を飲み、クッキーを食べる。
「……この戦争はあと、どれくらい続くんだろうな」
美桜は、ごくりと水を飲みこむ。
(戦争はようやく中盤に入った段階……まだまだ続く……)
「私にはわかりかねます……ただ、まだ先はあるように思うのです」
「そうか……しかし何故、敵はいっきに攻めて来ないんだろうな?」
美桜は少し、首を傾げる。
「敵は、徐々に強い敵を投入しているだろう。そうではなくて、強い奴をいっきに出して攻めれば、我々を圧倒出来るのに、何故やらないのだろうと思ったんだ」
美桜は少し黙る。
(ゲームの説明書にそれの説明書いてあったのよね……)
「あの……仮定の話しとして聞いて貰えますか。確証はないです」
「あぁ」
「ゲートに小さい穴が空いてると想像してください。穴は最初は小さく、弱い魔物しか通れません。けれど弱い魔物も沢山通る内に、穴は少しずつ広がっていきます。すると、中程度の実力の魔物も通れるようになります……穴は広がり、いずれ強敵が出て来るようになるかもしれません」
「……なるほど! それは、納得の出来る考え方だ。だから敵は弱い魔物ばかり投入して来るんだな……」
「まぁ、あくまで仮説なのですが」
「いや、案外的を得ているのかもしれない」
カミロはうんうんと頷いた。
(まぁ、このぐらいのネタバレは良いでしょう)
つづく
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