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45 獣化修行
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魔法使いクリストフェルには、定期的に通って貰って、精神訓練を受けていた。
「よーし、なりたい姿を思い浮かべるんだ」
瞑想で心を落ち着け、俺は自分のなりたい姿を思い浮かべる。
「うぅ……」
今回は人になるのではない。
以前になった、頭まで獣化する状態になる練習をしていた。
なぜあの形態になるのかと言うと、以前は突然あの姿になってずっと戻れなかったからだ。
今後の為に、自由に戻れるようになる為に訓練する必要を感じたのだ。
「ぐぅ……」
俺は必死に、獣頭を思い浮かべる。
「うーむ、全くダメだな」
クリストフェルが呆れたように言う。
「マジか」
俺は眉を寄せて目を閉じている。
「微塵も姿が変わっていない」
「ぐぬぬぬ」
「以前は、何がきっかけで姿を変えたんだ?」
クリストフェルに尋ねられて、俺は赤色に染まるアデーレの姿を思い出す。
心臓がバクバクと鳴る。
「ア、アデーレが……死にかけたんだ」
「……そうか。それは随分衝撃的なきっかけだな」
クリストフェルはしばらく黙る。
「大事な人を守る為に、獣の本性が全面に出たと言う事か。凶暴性、攻撃性。おそらく、幽霊犬グレーの心とも強く共鳴したのだろう」
俺の心臓はまだ強く鳴っている。
あの時の事は、出来るなら、あまり思い出したくない。
「よし、ならば『恋人を守るんだ』と強く思え。それがきっと、変身のきっかけになる」
「そ、そうか?」
「あぁ。だが極力凶暴性は抑えろよ。あんまり獣の性分が強い状態で姿が変わられても、俺が困る」
俺は頷いて、集中する。
(アデーレを守る、アデーレを守る……)
俺は闇の中にアデーレの姿を思い浮かべる。
(アデーレは俺の大事な人だ、もう二度と危険な目には合わせない)
とたん、体の骨がばきばきと鳴り、筋肉が膨らみ盛り上がるのを感じる。
(アデーレを守る為に、俺は強くなる……!)
ぱちっと目を開ける。
クリストフェルが立ち上がって、俺に輝く杖を向けている。背中に彼の飼い犬の、ラフコリーを隠している。
「おまえ、人間の言葉は喋れるのか?」
疑惑の目を向けられている。
「しゃ、喋れるぞ!!!」
俺は慌てる。
「おまえはミツアキだな?」
「ミツアキだ!」
「恋人が好きだな?」
「大好きだ!!」
「ふむ、精神状態はやや興奮気味だが、一応安定しているようだ」
(興奮してるのは、おまえが杖を向けて戦闘体勢だから焦ってるんだよ!!!!)
クリストフェルが杖を下ろす。
ラフコリーのシャーロットが後ろから出て来て俺をじっと見る。
俺は自分の両手を見た後に、顔に触れる。
(視界が高いし、犬の鼻がある)
「成功だな!」
俺は嬉しくなる。尻尾がばたばた揺れている。
「ふむ、話には聞いていたが、本当に人狼化してしまうんだな。背丈まで伸びるとは」
クリストフェルが俺をまじまじと見る。
「二人分のマナが混ざっているから、体格の大幅な変化も起きるのか……どれ、その状態で解析をさせろ」
クリストフェルが魔法陣を出して、俺の体を解析し始める。
俺は座って、シャーロットを撫でながら分析を待った。
十分後、分析が終わる。
「過剰分のマナは、普段はどこに行っているんだ……? 外部に勝手に放出されているのか……?」
クリストフェルは一人ブツブツと呟く。
「なぁ、これ戻る時は、次は人型をイメージすれば良いんだよな?」
「あぁそうだ」
俺は目を閉じて、今度は人のイメージをする。
一時間後、俺はうなる。
「おい、戻れないぞ」
「そうだな」
「いや、そうだなじゃなくて!! どうするんだコレ!!!」
「この形は元に戻りにくいらしい。しかし、呼びにくいな。それぞれの形態に簡易の名前を付けるか」
クリストフェルが腕組みして少し考える。
「人型を第一形態、耳と尻尾がはえただけのを第二形態、顔だけ人間なのを第三形態、顔まで獣化したのを第四形態と呼ぶ事にする」
(私はあと変身を二段階残しているんですよ……みたいになってるな俺)
「第四形態は、幽霊犬グレーとの魂の結びつきが強いのだろう。戻るのはかなりの集中がいるな。以前はどうやって、戻ったんだ」
その質問に俺は、肩を跳ねさせる。
「どうした?」
俺は視線を反らす。
「……アデーレとエッチな事したら戻った……」
「あぁなるほど、精を外に出したのか。確かに、獣の興奮を収めるには良い方法だ」
俺は顔が熱い。
「け、けど瞑想でも元に戻れるんだろ?」
「おそらくな」
「なら、瞑想頑張るよ」
俺はそれから、三時間ほど人に戻る為の瞑想を頑張った。
つづく
「よーし、なりたい姿を思い浮かべるんだ」
瞑想で心を落ち着け、俺は自分のなりたい姿を思い浮かべる。
「うぅ……」
今回は人になるのではない。
以前になった、頭まで獣化する状態になる練習をしていた。
なぜあの形態になるのかと言うと、以前は突然あの姿になってずっと戻れなかったからだ。
今後の為に、自由に戻れるようになる為に訓練する必要を感じたのだ。
「ぐぅ……」
俺は必死に、獣頭を思い浮かべる。
「うーむ、全くダメだな」
クリストフェルが呆れたように言う。
「マジか」
俺は眉を寄せて目を閉じている。
「微塵も姿が変わっていない」
「ぐぬぬぬ」
「以前は、何がきっかけで姿を変えたんだ?」
クリストフェルに尋ねられて、俺は赤色に染まるアデーレの姿を思い出す。
心臓がバクバクと鳴る。
「ア、アデーレが……死にかけたんだ」
「……そうか。それは随分衝撃的なきっかけだな」
クリストフェルはしばらく黙る。
「大事な人を守る為に、獣の本性が全面に出たと言う事か。凶暴性、攻撃性。おそらく、幽霊犬グレーの心とも強く共鳴したのだろう」
俺の心臓はまだ強く鳴っている。
あの時の事は、出来るなら、あまり思い出したくない。
「よし、ならば『恋人を守るんだ』と強く思え。それがきっと、変身のきっかけになる」
「そ、そうか?」
「あぁ。だが極力凶暴性は抑えろよ。あんまり獣の性分が強い状態で姿が変わられても、俺が困る」
俺は頷いて、集中する。
(アデーレを守る、アデーレを守る……)
俺は闇の中にアデーレの姿を思い浮かべる。
(アデーレは俺の大事な人だ、もう二度と危険な目には合わせない)
とたん、体の骨がばきばきと鳴り、筋肉が膨らみ盛り上がるのを感じる。
(アデーレを守る為に、俺は強くなる……!)
ぱちっと目を開ける。
クリストフェルが立ち上がって、俺に輝く杖を向けている。背中に彼の飼い犬の、ラフコリーを隠している。
「おまえ、人間の言葉は喋れるのか?」
疑惑の目を向けられている。
「しゃ、喋れるぞ!!!」
俺は慌てる。
「おまえはミツアキだな?」
「ミツアキだ!」
「恋人が好きだな?」
「大好きだ!!」
「ふむ、精神状態はやや興奮気味だが、一応安定しているようだ」
(興奮してるのは、おまえが杖を向けて戦闘体勢だから焦ってるんだよ!!!!)
クリストフェルが杖を下ろす。
ラフコリーのシャーロットが後ろから出て来て俺をじっと見る。
俺は自分の両手を見た後に、顔に触れる。
(視界が高いし、犬の鼻がある)
「成功だな!」
俺は嬉しくなる。尻尾がばたばた揺れている。
「ふむ、話には聞いていたが、本当に人狼化してしまうんだな。背丈まで伸びるとは」
クリストフェルが俺をまじまじと見る。
「二人分のマナが混ざっているから、体格の大幅な変化も起きるのか……どれ、その状態で解析をさせろ」
クリストフェルが魔法陣を出して、俺の体を解析し始める。
俺は座って、シャーロットを撫でながら分析を待った。
十分後、分析が終わる。
「過剰分のマナは、普段はどこに行っているんだ……? 外部に勝手に放出されているのか……?」
クリストフェルは一人ブツブツと呟く。
「なぁ、これ戻る時は、次は人型をイメージすれば良いんだよな?」
「あぁそうだ」
俺は目を閉じて、今度は人のイメージをする。
一時間後、俺はうなる。
「おい、戻れないぞ」
「そうだな」
「いや、そうだなじゃなくて!! どうするんだコレ!!!」
「この形は元に戻りにくいらしい。しかし、呼びにくいな。それぞれの形態に簡易の名前を付けるか」
クリストフェルが腕組みして少し考える。
「人型を第一形態、耳と尻尾がはえただけのを第二形態、顔だけ人間なのを第三形態、顔まで獣化したのを第四形態と呼ぶ事にする」
(私はあと変身を二段階残しているんですよ……みたいになってるな俺)
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その質問に俺は、肩を跳ねさせる。
「どうした?」
俺は視線を反らす。
「……アデーレとエッチな事したら戻った……」
「あぁなるほど、精を外に出したのか。確かに、獣の興奮を収めるには良い方法だ」
俺は顔が熱い。
「け、けど瞑想でも元に戻れるんだろ?」
「おそらくな」
「なら、瞑想頑張るよ」
俺はそれから、三時間ほど人に戻る為の瞑想を頑張った。
つづく
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