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体が窮屈で、葵は目を覚ます。
「ん……」
眠い目を数度瞬きすると、石の積まれた部屋が見えた。窓は無く、太い蝋燭明かりだけが数本点いている。立ち上がろうとした、葵の体は動かなかった。
「え」
手足が動かない。それもそのはずだ、膝をついた姿勢のまま、後ろ手で縛られて全身を縄で縛られ固定されている。上を見たら、天井から縄を吊っているのが見える。
「な、なにこれ」
もがいてロープから抜け出そうとするが、更に食い込むだけでちっとも解けない。
「だ、誰がこんな変態な事を!」
両足も開いた姿勢のまま固定されているので、スカートでこの格好は心もとなさ過ぎた。ロープに縛られた葵がもがいている時、部屋の扉が開く音がする。
「!」
後ろで重い鉄の扉を開く音がした後に、再び扉は閉じる。何かが葵の後ろに近づいて来る。葵の背に、それはそっと触れる。背骨を下に撫でて行く。
「本当に、魔力が無いのか」
低い声が聞こえる。
「誰なの!?」
葵は無理やり体をひねって後ろを見る。すると、黒い男が目に入った。彼は葵の背から手を離し、葵の眼の前に歩いて来る。
「私はイルブランド。君は名前があるのか」
「私は葵よ!」
「そうか……では、少し君の体を調べさせて貰う」
彼が、葵の頬に触れる。視線を合わせて、見つめる。男は、長い黒髪をしていて、目が紫水晶のような色をしていた。こんな状況で無ければ、その美しい顔に見惚れていただろう。
「何よ」
「いや」
男が目を逸らして、葵の髪に触れる。純日本人ではあるが、葵の髪は色素の薄い茶色をしていた。長さは、セミロングで、毎日丁寧にケアしているので天使の輪っかもばっちりあってピカピカしている。その髪に男が触れている。
「驚く事に本当に魔力が無いな、魔力が蓄積しやすい髪にすら無いとは」
「まりょくって、魔力の事? 無いわよ私、そんなの」
普通の日本人に、そんな物あるはずが無い。あったなら、今頃きっと色々試していただろう。空を飛んだりとか、この男を燃やしたりとか。
「ふむ」
男が葵の顎をあげさせる、そして顔を近づけてキスをして来た。
「!」
あまりにも突飛な行動に驚く。どこの世界に、牢屋に入れた女に突然キスして来る馬鹿がいるのだろうか。しかし、ロープで縛られているので、逃げられない。唇が当たった後に、濡れた舌が潜り込んで来る。男の舌が、葵の口の中を探っている。後ろに背を反って逃げる。
「んっ、ふっ」
眉を寄せて、顔を振って抵抗するが、男に顔を押さえられロープで縛られているので大した抵抗はできない。男の舌は歯列をなぞり、舌を隅々まで撫でた後、ようやく離れた。葵は荒く呼吸をする。
「唾液にも魔力は無しか……」
冷静な声で男は言う。
「ちょっと、あんたなにするのよ!」
「最初に言っただろ、調べると。おまえの体には魔力が無いと聞く。本当に無いのか、隅々まで調べるんだ」
男が立ち上がり、葵の背中に触れる。
「私に触るなー!!」
男の手が上から下へとおりて行く。その手は今度は腕に触れて調べるように撫でた後に、葵の手に触れる。
「これはなんのまじないだ、色が付いている」
男は葵の指先を見ているようだった。
「ネイルアートの事? 爪を塗って飾ってるのよ」
「なんの為に」
「おしゃれの為よ!」
好きなキャラクターを密かに推す為のおしゃれである。キャラクターモチーフの色で塗っている。
「なんの利益も無いのに、飾るのか……」
「貴方だって、胸にじゃらじゃら首飾りを着けてるじゃない!! ひらひらした服も着てるし!」
さっき前に来た時に、目に入ったのだ。一昔前のファンタジーキャラかと言う格好を彼はしていた。
「この装飾はまじないが施されているものだ。この服だって、上級魔物の毛を織り込んである服だ」
どちらも実用的な物だったらしい。
「あぁ、そうですか」
男が葵の手にふにふにと、触れている。
「おまえは、裕福な家の者なのか。手が、随分綺麗だが」
「平民です」
葵の手が綺麗なのは、葵が水仕事の後にきちんと気を使ってハンドケアを行っているからである。葵は根がオタクの凝り性なので、メイクにハマってからはとことんスキンケアに全力を出していた。特にそれを見せる恋人もいないのだが。
「そうか……そうは見えないが……」
男の手が後ろから伸びて来て、葵の首に触れる。
「生地は良いが、随分簡素な服だな」
そう言いながら、男の手がブラウスのボタンを外す。
「ちょっ! 何するのよ!!」
「隅々まで調べると言っただろ」
ボタンが全て外されて下着が露わになる。男の手が下着の上から触れて来る。
「変態、変態、変態!!!」
「はぁ、少し黙っていてくれないか」
「嫌よ!」
なおも男は、葵の体に触れている。キャミソールを捲って、ブラに触れる。
「どうやって、外すんだこれは」
男の手がブラをいじっている。
「外さないでよ!」
「千切るか」
男の手がブラを引っ張る。
「待ってー!!! それ八千円したのー!!!!」
お気に入リブランドのブラを破かれてはたまらない。
「後ろ! ホックが後ろについてるから、それを外して!!」
仕方なくブラの外し方を教える。
「ホック……?」
男が葵の背中を弄る。
「手でつまむ感じで外して」
しばらく、男が背中をいじった後にブラが外れる。そして今度は直接、男の手が葵の胸に触れる。
「ふむ……」
男の手がバッチリ葵の胸を掴んでいる。しかも、揉んでいる。
「ふむじゃないわよ! なんで胸揉む必要あるのよ!」
「魔力が入ってないかと思ってな」
「胸に魔力なんか入ってるわけないじゃない!」
「いや、女のココは魔力袋の一つだぞ」
「マジで」
男は熱心に葵の胸を揉み続けて、手を離す。
「やはり無いか」
「十分ぐらい揉まれてた気がする……」
男の手が葵のお腹を撫でた後に、今度は太ももに下りて行く。
「セクハラは困りますお客様ー!」
「誰が客だ」
男の手は葵のスカートの中に入って来る。
「ちょっ! いや、本当そこはダメだって!」
「姦しい女だな」
男のため息が聞こえた気がする。
「これはなんだ……」
黒のタイツを履いていたので、彼の手はまだ直接触れていない。彼は、タイツをひっぱっている。
「タ、タイツです」
「また、妙な物を履いているな……」
スカートを捲り彼の手が、葵の太ももを撫でお尻を撫でて行く。いくら、薄い布一枚隔てているとは言え寒気がする。
「本当、止めて貰えませんかんね!」
「止める気は無い」
そう彼が言った瞬間に、タイツが破れる音がする。
「ちょっ!」
男が黙る。
「なに、破ってるんですか!!」
「私は悪くない。この軟弱な布地が悪いのだ」
「いや、どう考えても貴方が悪いですよね!!」
「まぁ良い」
空いた穴が更にビリビリと広げられる。
「止めてくださいよ!!」
「そろそろ黙ってくれ、雰囲気が出ない」
「なんの雰囲気ですか!」
彼は答えずに、葵のパンティに触れた。それはつまり、秘部なわけで。
「ぎゃーーーーー! 変態!」
葵は暴れる。ロープに縛られながら、全力で暴れた。
「無駄な抵抗だと思うがな」
彼の指先が下着の上から秘部に触れている。さすがに、本当に恥ずかしくなって来た。しかも、かなり敏感な所を触られている。
(クリトリスをぐりぐりするんじゃない!)
葵は眼を閉じて、男の愛撫に耐える。歯を食いしばって、声が出ないようにした。万が一、声が出たら羞恥で死ねるだろう。下着をどけて、彼の手が直接秘部に触れる。
「!」
葵は目を見開く。
「まって、それ以上の事はしないよね?」
「必要ならばする」
男の指が、葵の秘部の中に入って来た。
「いっ!」
痛みで、顔をしかめる。いくらか、秘部は濡れていたが、それでも痛い。しかも男は、指を入れた後にしばらく中を探っている。
「……貴様、もしや処女か」
葵は俯いたまま唸る。
「そ、そうですよ処女ですよ。処女の秘部を、無作法に触らないでください……!」
「……そうか」
指は更に奥に入り込んだ後に、引き抜かれる。
(い、いたかった!)
初めての異物の挿入は、終始痛かったと言う感想しかない。
「魔力の篭りやすい所を調べたが、およそ魔力の痕跡は見つけられなかった。確かにおまえは、魔力がゼロのようだ」
男が、葵の目の前に立つ。
「そうですか、わかって良かったですね。それで、私をどうするんですか? 解剖でもする気ですか!」
葵は男を見上げて睨む。
「……確かに稀有な肉体だ、解剖して構造を更に深く調べるのも良いだろう」
言われて葵は血の気がひくのがわかった。
「い、いやですよそんなの! 死にたくない!」
「死にたくないと言って、生きられる程この世界は優しくは無いのだがな」
男はため息をつく。
「だが、私からおまえに一つ提案をしてやろう」
「なんですか」
男は笑みを浮かべている。それが、少し不気味である。
「おまえが私の専属の娼婦になると言うのなら、私の城で庇護しやっても良いぞ」
言われて、葵は男の言葉が理解できずに脳が止まる。
(しょうふって、娼婦の事? 違う?)
「それ、具体的になにするんですか……」
「娼婦なのだから、夜の供をするに決まっているだろう」
「エッチな?」
「あぁ」
やはりショウフとは、娼婦の事らしい。
「い、嫌です!」
なんで異世界に来て、体を売らないといけないんだ。しかも、こんな男に。
「では、どうするんだ」
「どうって……」
「予定通り、解剖されるか」
「それはもっと嫌です!」
葵は首を大きく横に振る。
「なら娼婦になるしかないな」
「そっちも嫌……」
「嫌ばかりだな……仕方ない、ならば一度おまえを城から出してやろう」
「本当ですか!」
「まぁ、おまえのような弱い者では、一日と持たないだろうがな」
「そんな事無いですよ!」
男は、葵のロープに触れる。すると、驚く程簡単にロープは取れた。
「魔力の影響は受けないが、魔力を練った術はちゃんと効くんだな」
男は興味深そうに葵を見ている。葵は立ち上がり、スカートやブラウスを元に戻す。タイツは破かれてしまったが、ひとまずスカートで隠れる。
「本当に、城を出ても良いんですよね」
「あぁ、構わない」
彼が葵の腕に触れる。すると瞬時に、二人は外に居た。後ろには大きな黒い城がある。葵はこの城の中に先程まで居たらしい。
「おえっ」
突然の瞬間移動に葵は気持ちが悪くなる。
「大丈夫か、やはり城にいるか?」
「い、嫌です」
葵は男の手かは離れて、ふらふらと歩き城から出る。一度振り向くと、遠くで男が葵を見ていた。葵は慌てて視線を切り、街に向かって歩き始める。さっきは失敗してしまったが、今度こそ街の人々に馴染んで見せる。
つづく
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