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結局、大して眠る事もできないまま一夜が開けた。使用人に確認したが、怪しい手紙は届かなかったらしい。心配で食事も喉に通らないアレクサンダーは、紅茶だけ飲みながら考え込んだ。
―やはり、誘拐では無いのか……?
朝一で、警察署に向かい捜査の報告を聞いた。
「いやはや、昨夜は遅くまで五十人程の警官で捜索を行ったのですが、手がかりらしき物を得る事はできませんでした」
刑事が、冷や汗を流している。
「たった五十人の警官しか動員しなかったのか」
この広い街中で、それはあまりに心もとなかった。
「申し訳ありません、なにぶん夜分の事ですので……」
街の治安を維持するためにある警察組織が役にたたないのは、みんな知っている。
「とにかく、今日はもっと多くの警官達を手配して探索させるんだ。良いな」
「はい、もちろんです」
アレクサンダーは、重く息を吐き警察署を出た。警察が役に立たないのなら、別の専門の人間に頼むだけだ。そして、馬車を走らせてアレクサンダーが辿り着いたのは、とある建物だった。お世辞にも、その建物は綺麗とは言えない。しかし、目的の男はそこに住んでいる。アレクサンダーはドアをノックする。すると、中からメイドが出て来る。
「すまないが、ロドリゴ氏はご在宅かな」
「主人は、就寝中です」
現在の時間は朝の十時過ぎだ、若干寝すぎのように感じる。
「急ぎの用なんだ、起こしてくれ」
「主人は寝起きが悪いので、申し訳ありませんが、それは無理です」
アレクサンダーは眉間に寄った皺を押さえる。
「私の妻が誘拐されたんだ、一刻を争う事態なんだよ」
メイドは困った顔をする。
「すまないが通してくれないか。無礼なのは百も承知だ、しかし彼を頼るしかもう手段が無いんだ」
普段なら、こんな礼儀知らずな事はしない。しかし今は、なりふりかまっていられなかった。
「……」
メイドが、体をどかす。アレクサンダーは、部屋の中に入る。
「寝室はどこだ」
メイドは上を指差す。アレクサンダーは、階段を上って、二階の部屋のドアに手をかける。一つ目は応接間、二つ目が寝室だった。男がベッドの上で眠っている。
「失礼、ロドリゴ氏!! 起きていただけないか!!」
大声で叫ぶ。
「むぅ」
男は唸り、布団に潜る。
「ロドリゴ氏! お願いだ起きてくれ!!」
布団を引き剥がす。途端、アレクサンダーの喉元に刃が指し当てられる。
「……なんだ君は」
男は枕の下に隠していた短刀を抜き、アレクサンダーに向けている。素早い動きだったが、顔はまだ眠そうだ。
「すまない、君に依頼があって来たんだ」
「……良い背広を着ている。しかも、特注品だ。カフスボタンは、外国製の珍しい物か……大貴族のようだ」
男は短剣を鞘に戻す。
「朝早くから、警察署に行って、彼らの無能ぶりに落胆して私のところに来たのかね」
「その通りだ」
男がベッドから立ち上がる。
「なぜ、私が警察署から来たと」
「大半の貴族は、そういう経緯で私の元に来るからだ。鎌をかけただけさ」
男が、笑う。
「アルタ!」
メイドが緊張した様子で、おずおずと部屋に入って来る。そして、彼の着替えの手伝いをする。
「それで、話をしてくれ。今更、服を着ながらの無礼くらい許してくれるだろう」
「そうだな……実は私の妻が誘拐されたんだ」
「ふむ。身代金の要求は」
「ない」
「では、別の目的か」
庶民にしては、多少良いスーツを着た男はネクタイを自分で締める。
「何か心辺りはあるかい」
「いや……。しかし私の家は、大貴族だ。妬みや恨みを多く持たれているだろう」
「ふむ。君は上院議員のようだね。では、政敵のやった事だろうか」
アレクサンダーはやや驚く。
「なぜ、私が上院議員だと」
「議員のバッチをいつも、右胸に付けているんだろ。穴の痕がある」
今はバッチを付けていなが、アレクサンダーのスーツの胸元には確かにうっすらと穴の痕があった。彼は、寝起きの一瞬でそれを見たようだ。
「政敵か……数が多すぎて、厄介だな」
「しかし、政敵が相手だとしても、なんの欲求もして来ないのは妙な話だな。君、今日が実は大事な議員会議の日と言うわけじゃないんだろう」
「あぁ、今日は特にそんな予定は無い」
「ますます謎だな……では、やはり目的は君の妻自身にあったのか?」
男が懐中時計をポケットに入れる。
「なぜ、妻が攫われる必要がある」
「ところで、君の名前を聞いていなかったな」
アレクサンダーは、はっとする。慌てていて、名すら告げていなかった。
「アレクサンダー・イズスターだ」
「あぁ、イズスター。聞いた事がある名前だ」
男は笑みを含んだ声でつぶやく。
「では、君は変わり者の貴族か」
「なんだそれは」
「ちょっとした噂だよ。君は変わった理由で妻を募集して、そしてその女を娶った」
ロドリゴが振り向く。
「庶民の噂も馬鹿にできないものだ」
アレクサンダーは眉間に皺を寄せる。
「そうだとしても、私の妻が攫われる理由にはならない」
「いやいや、正にそれが原因だよ」
男はアレクサンダーの横を通り過ぎて、応接間へ行く。そして、ソファに座る。テーブルの上に置かれたグラスを手に取って、琥珀色の液体を注いで飲む。
「これはあくまで噂なのだが、君の妻はいささか容姿に問題があったのだろう」
アレクサンダーは黙って男の言葉を聞く。
「この国では、異質は脅威だ。貴族の娘であるのなら、彼女の置かれていた環境は容易に想像がつく」
一杯の酒を飲み終わった男が立ち上がる。
「私は、少し調査に出る。何、夕方には君の奥方の居場所を突き止められるだろう」
出て行こうとする男の腕を掴む。
「私も着いて行く」
男は片眉をあげる。
「素人の君に何ができると」
「妻が心配なんだ、協力させてくれ」
「やれやれ、調査の足を引っ張らないでくれよ」
そうして、アレクサンダーは彼とともに馬車に乗り込んだ。馬車はアレクサンダーが乗って着た物ではなく、二ランク下の庶民用の馬車を呼んで乗った。
「治安の悪い場所で、高い馬車に乗るのは命取りだよ。それに目立つ」
前方に座った男が、にやりと笑う。アレクサンダーは、若干男に胡散臭さを感じながらも男の調査に協力した。
男はまず、パトリシアの実家について調べ始める。直接エレウィット家に聞き込みに行っても本当の事は教えてくれないだろうと、踏んだ彼は、以前雇われていた使用人達に聞き込みをした。三人に聞き取りし、内二人は大した情報を持っていなかった。そして、三人目のメイドは興味深い話をしてくれた。
「パトリシア様が攫われたのですか……」
彼女は、顔にあばたのある女だった。白髪まじりの、四〇近い女に見える。
「おいたわしい……あの方は、相変わらず不幸に取り憑かれているのですね……」
彼女は不意に涙をこぼして、ハンカチを目元に押し当てる。
「君は、エレウィット家のパトリシアについて何か知っているのかい」
彼女がロドリゴを見る。アレクサンダーが彼女の夫であり、今はさらわれた彼女を探している事は最初に伝えた。
「本当は、過去の主人の話をするのは良く無い事なのですが……」
彼女は顔を曇らせる。
「すまないが、パトリシアを見つけるためなんだ。協力してくれ」
メイドは机を見つめ、そして口を開く。
「私は、エレウィット家でランドリーメイドをやっておりました」
ランドリーメイドとは、洗濯を専門に行うメイドだった。過酷で、あまり希望者のいない仕事である。
「私はこのような顔ですから、あまり表立った仕事もできず地下でずっと洗濯をやっておりました」
女は自分の顔に触れる。
「しかし、食事は他のメイドや執事達とともに食べていたので屋敷の噂はよく耳にしていました。私は長い間エレウィット家には長男さんしかいらっしゃらないと思っていました。なぜなら、メイド達の話題にはロニー坊っちゃんの事ばかりが上がっておりましたので。しかし、洗濯には女児の服があるので、不思議にも思っておりました」
アレクサンダーは話を聞きながら、眉をすぼめる。
「私が、始めてパトリシアお嬢様の話を聞いたのは、ボヤ騒ぎが起きた時でした。朝、メイドが暖炉の準備をしてしばらくして見に行ったところ暖炉から火が出ていたそうです。すぐに気づいたので、火は燃え広がらずに済んだのですが、部屋の半分程は燃えました。そして、ボヤの起きた部屋はパトリシア様の寝室でした」
アレクサンダーは目を見開く。
「彼女は無事だったのか」
「えぇ。すぐに逃げたので、火には巻き込まれずに済んだそうです」
アレクサンダーはほっと息をつく。
「ですが、同僚達はそれが、悪魔の仕業だと噂していました」
「悪魔……?」
「私はそれまで、パトリシアお嬢様の事は本当に知りませんでした。ですが、子ども達の世話をする事があるメイドや執事はお嬢様の事を知っていました。みなは、パトリシアお嬢様が不吉な存在であると噂していたのです」
「君はその理由を知っているのか」
「……えぇ。お嬢様の顔を見まし」
「たかが痣があるだけで、悪魔などと言うとは……」
アレクサンダーは、自らの内に怒りが降り積もるのを感じた。
「噂で聞いただけなのですが、家の物が突然壊れたり、家族や親戚に不幸があったりしたそうです。それらが全て、パトリシア様の悪魔のせいだとされていました……」
「馬鹿らしい……そんな事があるわけない……」」
アレクサンダー、怒気を含んだ声でつぶやく。
「私も、パトリシアお嬢様に悪魔など憑いていないと思っています。むしろ悪魔が憑いているのは……」
彼女はその先を口にするのを恐れるように、口を覆う。
「何か知っているのか」
「……本当に悪魔が憑いているのは、あの家族です」
メイドは机をにらみつける。
「彼ら家族は、お嬢様に悪魔が憑いていると信じていました。暖炉の火が燃えたり、家で不幸が続いた時にその疑いは頂点に達したようです。私は詳しい話はわかりません。しかしパトリシアお嬢様は、外に連れて行かれ、そして帰って来た時には酷い傷を背中に受けていました」
アレクサンダーは目を見開く。
「どういう事だ」
「なぜか、他のメイド達はお嬢様の世話を断りました。ですので、ランドリーメイドの私が呼ばれてお嬢様の看病を致しました。お嬢様は、背中に鞭で打たれた複数の痕があり皮膚は腫れ、酷い有様でした……一晩中痛みに呻き、数日はベッドから起き上がる事もできませんでした。本当にかわいそうなお嬢様……」
彼女が涙を流す。
「なぜ、彼女はそんな怪我を……」
「悪魔祓いさ」
黙って話を聞いていたロドリゴが口を開く。
「悪魔祓い?」
「悪魔の憑いた人間を鞭打ち、聖水を駆けて悪魔を退治するのさ」
「そんな方法で、悪魔が祓えると」
「馬鹿げているが、彼らはそれを信じているんだ」
「……お嬢様の体が回復した後、私は首を切られました。穢れていると言われたのです」
「それは……なんと身勝手な」
「いえ、私はカフェで運良く皿洗いの仕事に就けたので、良いのです。それよりも、あの屋敷に残ったお嬢様がいったいあの後もどんな扱いを受け続けたのか……それを想像するだけで胸が痛くなるのです」
女はつらそうにうつむく。
「彼女の心配をしてくれてありがとう。パトリシアは、必ず私が幸せにするから安心して欲しい」
アレクサンダーは立ちあがる。
「話を聞かせてくれてありがとう」
「ロドリゴ氏、行こう」
「失礼します」
二人は店を出て馬車に乗る。
「……酷い話だ」
「全く持ってだな。実の家族に、悪魔と罵られて生きるなど、酷い生き地獄だ」
アレクサンダーは、ロドリゴを見る。
「あの話は君の調査の手助けになったか」
「もちろんだ。悪魔祓いに鞭打ちを好んで行うのはフォーラム教だ」
「フォーラム教……」
「もしかしたら、彼女は再び悪魔祓いをするためにフォーラム教の人間達に捕まったのかもしれない」
「どうやって助け出す」
「フォーラム教のアジトに乗り込むさ」
男は不敵に笑う。そして馬車は、裏道に突き進んでいった。
下りた場所は、治安の悪い事で有名な場所である。ロドリゴが、一つの建物に近づきドアを開ける。
「なんだおまえ」
中から、長身の男が出て来る。
「すまない、少し通してくれ」
ロドリゴは、次の瞬間に男を杖で殴って倒す。
「!」
アレクサンダーは慌てて、男の様子を見る。
「大丈夫死んでないさ。それより、君はここで待っていてくれ」
「いや、俺も一緒に行く」
「君に何かあったら、一大事だぞ」
「家の一大事より、妻の命の方が大事だ」
「……ふっ、どうやら君は相当にイカれているらしい」
二人は、家の中に踏み込む。すると中から男達が出て来る、ロドリゴは仕込み杖を抜いて向かって来る男達を切る。アレクサンダーは、殴りかかって来た男の拳を避けて、かわりに重い拳を眼目に叩き込む。
「ひゅー、なかなかやるね。貴族様のわりに随分体を鍛えている」
「……いざと言う時に彼女を守れるように鍛えてるんだ」
再び襲いかかって来る男達。それを二人は、難なく倒す。
「なんだか、君のお嫁さんに興味が出て来たぞ。それだけ君が惹かれてる理由はなんだろうか」
アレクサンダーは手近にあった瓶で男を殴る。
「横恋慕してくれるなよ」
思わず、牽制する。奥の部屋行くと、地下への階段がある。そこを二人は、警戒しながら下りる。地下からは、冷たい風が流れて来る。
「妙な匂いがするな」
「異国のお香だな」
ゆっくりと音をたてないように、暗い地下を進む。そこは、四方を石で組まれた廊下だった。強く香りのする方へと進む。すると、奥から何かつぶやく声が聞こえる。暗がりに、光が小さく差し込んでいる。二人は扉に近づき、そっと中を見る。
「!」
そこには頭巾を被った黒ずくめの集団がいた。壇上の上にいる男が、何か呪文を唱えている。そして、男の前には女が後ろ手を縄で縛られて背を向けて座っている。アレクサンダーにはそれがパトリシアだとすぐにわかる。踏み込もうとしたら、ロドリゴに止められる。
「(やめろ、人数が多すぎる)」
「(だが、パトリシアが捕まっているんだぞ!)」
小声で言い争う。
「(これを使え)」
ロドリゴが押し付けて来た冷たい鉄の塊は銃だった。
「(使い方はわかるな)」
アレクサンダーは、戸惑いながらうなずく。銃は、個人での所持が禁止されている。基本的に軍隊に所属する兵隊だけが扱う物だった。アレクサンダーは貴族の義務として、成人後一年徴兵で軍に所属していた。なので、銃の扱いはわかる。そしてコレが、どれだけ危険な物なのかも理解していた。ロドリゴも、拳銃を構える。
「(行くぞ)」
ロドリゴが先に部屋に入る。黒ずくめの彼らが一斉に振り向く。ロドリゴは、彼らに銃を向けた。
「儀式を中断しろ」
ざわめく男達。
「ひざまずいて、体を低くしろ!!」
アレクサンダーも叫ぶ。するとざわめく男達は、地面に這いつくばる。しかし、パトリシアの隣に立つ男は毅然として立ったままだった。その男とだけは、頭巾を被っていなかった。
「おまえもだ!」
アレクサンダーは男に銃を向ける。
「この者には悪魔が憑いている。それを、祓うのは当然の事だ」
アレクサンダーは、ちらりと男の足下にいるパトリシアを見る。彼女は薄い衣服を着せられて、頭から水を浴びせられて震えている。そして露わになった、その背には既に鞭で打った痕が生々しく残っていた。思わず、引き金を引く指に力が入る。
「何が悪魔だ。彼女は俺の妻だ、悪魔に取り憑かれてなどない!」
「ならば、見てみろ」
男がパトリシアの背を押す。するとパトリシアは力無く後ろに倒れる。
「!」
アレクサンダーは彼女を見て驚く。パトリシアは白目を剥いて、口から泡を拭いている。目の下にはクマができていて、顔色は真っ白だ。
「これが証拠だ。この女は悪魔を身の内に飼っている。だから、こうして抵抗を見せるのだ」
アレクサンダーは銃口を下ろして、男の足を撃ち抜いた。
「ぐっ!」
すぐに駆け寄って、倒れたパトリシアの体を見て抱き上げる。
「何が、悪魔祓いだ!! こんなのはインチキだ!!」
アレクサンダーは部屋の黒服達に目を走らせる。
「この症状は麻薬中毒の物だ。腕に注射の痕がある。儀式のために強制的に起こされたモノだ!!」
ロドリゴが男達の黒頭巾を次々取る。そしてアレクサンダーは見覚えのある男を見つける。
「メディナ・ヘラルド! おまえが妻をここに連れて来たんだな!!」
アレクサンダーは低い声で叫ぶ。メディナは、床に這いつくばったまま震えている。
「パ、パトリシアは悪魔に取り憑かれているんだ……!!」
「黙れ! 俺の妻に手を出した事、一生後悔するが良い」
アレクサンダーは、男から視線を切り部屋を出る。しばらくすると、遅れてやって来た警察達が部屋になだれ込んで来る。ロドリゴが後ろから追いかけて来る。パトリシアは腕の中で、不気味な痙攣を起こしている。
「早く医者に見せなければ……」
「よくこの症状が麻薬中毒のモノだとわかったな」
「……少し前から貴族の間でも麻薬が流行っていたんだ。サロンによっては、その手のモノを部屋に焚いているところまである。あの部屋でも、香の飾りに混ざって麻薬の匂いがした」
あの信者達もトランス状態にあったのだろう。
「おまえさん探偵に向いているな」
「冗談を言うな、二度とごめんだ。後は任せる」
屋敷を出て、馬車に乗り込む。
「あぁ、あの野郎はきっちり警察が牢屋にブチ込んでくれると思うぜ」
アレクサンダーは震える彼女の体を抱きながら、早く馬車が屋敷に着く事を願った。
屋敷に着くとパトリシアをすぐに寝室に寝かせて、医者を呼んで診せた。医者は驚きつつも、治療にあたってくれた。そして一時間後、どうにかパトリシアの容態は落ちついた。
「しばらくは、離脱症状に苦しむと思います。鎮静剤を置いていきますので、酷い時には飲ませください」
「あぁ、わかった」
医者が帰った後、アレクサンダーは彼女の横に座る。眠るパトリシアの頬をそっと撫でる。ひとまず、彼女が生きていた事にほっとした。
つづく
結局、大して眠る事もできないまま一夜が開けた。使用人に確認したが、怪しい手紙は届かなかったらしい。心配で食事も喉に通らないアレクサンダーは、紅茶だけ飲みながら考え込んだ。
―やはり、誘拐では無いのか……?
朝一で、警察署に向かい捜査の報告を聞いた。
「いやはや、昨夜は遅くまで五十人程の警官で捜索を行ったのですが、手がかりらしき物を得る事はできませんでした」
刑事が、冷や汗を流している。
「たった五十人の警官しか動員しなかったのか」
この広い街中で、それはあまりに心もとなかった。
「申し訳ありません、なにぶん夜分の事ですので……」
街の治安を維持するためにある警察組織が役にたたないのは、みんな知っている。
「とにかく、今日はもっと多くの警官達を手配して探索させるんだ。良いな」
「はい、もちろんです」
アレクサンダーは、重く息を吐き警察署を出た。警察が役に立たないのなら、別の専門の人間に頼むだけだ。そして、馬車を走らせてアレクサンダーが辿り着いたのは、とある建物だった。お世辞にも、その建物は綺麗とは言えない。しかし、目的の男はそこに住んでいる。アレクサンダーはドアをノックする。すると、中からメイドが出て来る。
「すまないが、ロドリゴ氏はご在宅かな」
「主人は、就寝中です」
現在の時間は朝の十時過ぎだ、若干寝すぎのように感じる。
「急ぎの用なんだ、起こしてくれ」
「主人は寝起きが悪いので、申し訳ありませんが、それは無理です」
アレクサンダーは眉間に寄った皺を押さえる。
「私の妻が誘拐されたんだ、一刻を争う事態なんだよ」
メイドは困った顔をする。
「すまないが通してくれないか。無礼なのは百も承知だ、しかし彼を頼るしかもう手段が無いんだ」
普段なら、こんな礼儀知らずな事はしない。しかし今は、なりふりかまっていられなかった。
「……」
メイドが、体をどかす。アレクサンダーは、部屋の中に入る。
「寝室はどこだ」
メイドは上を指差す。アレクサンダーは、階段を上って、二階の部屋のドアに手をかける。一つ目は応接間、二つ目が寝室だった。男がベッドの上で眠っている。
「失礼、ロドリゴ氏!! 起きていただけないか!!」
大声で叫ぶ。
「むぅ」
男は唸り、布団に潜る。
「ロドリゴ氏! お願いだ起きてくれ!!」
布団を引き剥がす。途端、アレクサンダーの喉元に刃が指し当てられる。
「……なんだ君は」
男は枕の下に隠していた短刀を抜き、アレクサンダーに向けている。素早い動きだったが、顔はまだ眠そうだ。
「すまない、君に依頼があって来たんだ」
「……良い背広を着ている。しかも、特注品だ。カフスボタンは、外国製の珍しい物か……大貴族のようだ」
男は短剣を鞘に戻す。
「朝早くから、警察署に行って、彼らの無能ぶりに落胆して私のところに来たのかね」
「その通りだ」
男がベッドから立ち上がる。
「なぜ、私が警察署から来たと」
「大半の貴族は、そういう経緯で私の元に来るからだ。鎌をかけただけさ」
男が、笑う。
「アルタ!」
メイドが緊張した様子で、おずおずと部屋に入って来る。そして、彼の着替えの手伝いをする。
「それで、話をしてくれ。今更、服を着ながらの無礼くらい許してくれるだろう」
「そうだな……実は私の妻が誘拐されたんだ」
「ふむ。身代金の要求は」
「ない」
「では、別の目的か」
庶民にしては、多少良いスーツを着た男はネクタイを自分で締める。
「何か心辺りはあるかい」
「いや……。しかし私の家は、大貴族だ。妬みや恨みを多く持たれているだろう」
「ふむ。君は上院議員のようだね。では、政敵のやった事だろうか」
アレクサンダーはやや驚く。
「なぜ、私が上院議員だと」
「議員のバッチをいつも、右胸に付けているんだろ。穴の痕がある」
今はバッチを付けていなが、アレクサンダーのスーツの胸元には確かにうっすらと穴の痕があった。彼は、寝起きの一瞬でそれを見たようだ。
「政敵か……数が多すぎて、厄介だな」
「しかし、政敵が相手だとしても、なんの欲求もして来ないのは妙な話だな。君、今日が実は大事な議員会議の日と言うわけじゃないんだろう」
「あぁ、今日は特にそんな予定は無い」
「ますます謎だな……では、やはり目的は君の妻自身にあったのか?」
男が懐中時計をポケットに入れる。
「なぜ、妻が攫われる必要がある」
「ところで、君の名前を聞いていなかったな」
アレクサンダーは、はっとする。慌てていて、名すら告げていなかった。
「アレクサンダー・イズスターだ」
「あぁ、イズスター。聞いた事がある名前だ」
男は笑みを含んだ声でつぶやく。
「では、君は変わり者の貴族か」
「なんだそれは」
「ちょっとした噂だよ。君は変わった理由で妻を募集して、そしてその女を娶った」
ロドリゴが振り向く。
「庶民の噂も馬鹿にできないものだ」
アレクサンダーは眉間に皺を寄せる。
「そうだとしても、私の妻が攫われる理由にはならない」
「いやいや、正にそれが原因だよ」
男はアレクサンダーの横を通り過ぎて、応接間へ行く。そして、ソファに座る。テーブルの上に置かれたグラスを手に取って、琥珀色の液体を注いで飲む。
「これはあくまで噂なのだが、君の妻はいささか容姿に問題があったのだろう」
アレクサンダーは黙って男の言葉を聞く。
「この国では、異質は脅威だ。貴族の娘であるのなら、彼女の置かれていた環境は容易に想像がつく」
一杯の酒を飲み終わった男が立ち上がる。
「私は、少し調査に出る。何、夕方には君の奥方の居場所を突き止められるだろう」
出て行こうとする男の腕を掴む。
「私も着いて行く」
男は片眉をあげる。
「素人の君に何ができると」
「妻が心配なんだ、協力させてくれ」
「やれやれ、調査の足を引っ張らないでくれよ」
そうして、アレクサンダーは彼とともに馬車に乗り込んだ。馬車はアレクサンダーが乗って着た物ではなく、二ランク下の庶民用の馬車を呼んで乗った。
「治安の悪い場所で、高い馬車に乗るのは命取りだよ。それに目立つ」
前方に座った男が、にやりと笑う。アレクサンダーは、若干男に胡散臭さを感じながらも男の調査に協力した。
男はまず、パトリシアの実家について調べ始める。直接エレウィット家に聞き込みに行っても本当の事は教えてくれないだろうと、踏んだ彼は、以前雇われていた使用人達に聞き込みをした。三人に聞き取りし、内二人は大した情報を持っていなかった。そして、三人目のメイドは興味深い話をしてくれた。
「パトリシア様が攫われたのですか……」
彼女は、顔にあばたのある女だった。白髪まじりの、四〇近い女に見える。
「おいたわしい……あの方は、相変わらず不幸に取り憑かれているのですね……」
彼女は不意に涙をこぼして、ハンカチを目元に押し当てる。
「君は、エレウィット家のパトリシアについて何か知っているのかい」
彼女がロドリゴを見る。アレクサンダーが彼女の夫であり、今はさらわれた彼女を探している事は最初に伝えた。
「本当は、過去の主人の話をするのは良く無い事なのですが……」
彼女は顔を曇らせる。
「すまないが、パトリシアを見つけるためなんだ。協力してくれ」
メイドは机を見つめ、そして口を開く。
「私は、エレウィット家でランドリーメイドをやっておりました」
ランドリーメイドとは、洗濯を専門に行うメイドだった。過酷で、あまり希望者のいない仕事である。
「私はこのような顔ですから、あまり表立った仕事もできず地下でずっと洗濯をやっておりました」
女は自分の顔に触れる。
「しかし、食事は他のメイドや執事達とともに食べていたので屋敷の噂はよく耳にしていました。私は長い間エレウィット家には長男さんしかいらっしゃらないと思っていました。なぜなら、メイド達の話題にはロニー坊っちゃんの事ばかりが上がっておりましたので。しかし、洗濯には女児の服があるので、不思議にも思っておりました」
アレクサンダーは話を聞きながら、眉をすぼめる。
「私が、始めてパトリシアお嬢様の話を聞いたのは、ボヤ騒ぎが起きた時でした。朝、メイドが暖炉の準備をしてしばらくして見に行ったところ暖炉から火が出ていたそうです。すぐに気づいたので、火は燃え広がらずに済んだのですが、部屋の半分程は燃えました。そして、ボヤの起きた部屋はパトリシア様の寝室でした」
アレクサンダーは目を見開く。
「彼女は無事だったのか」
「えぇ。すぐに逃げたので、火には巻き込まれずに済んだそうです」
アレクサンダーはほっと息をつく。
「ですが、同僚達はそれが、悪魔の仕業だと噂していました」
「悪魔……?」
「私はそれまで、パトリシアお嬢様の事は本当に知りませんでした。ですが、子ども達の世話をする事があるメイドや執事はお嬢様の事を知っていました。みなは、パトリシアお嬢様が不吉な存在であると噂していたのです」
「君はその理由を知っているのか」
「……えぇ。お嬢様の顔を見まし」
「たかが痣があるだけで、悪魔などと言うとは……」
アレクサンダーは、自らの内に怒りが降り積もるのを感じた。
「噂で聞いただけなのですが、家の物が突然壊れたり、家族や親戚に不幸があったりしたそうです。それらが全て、パトリシア様の悪魔のせいだとされていました……」
「馬鹿らしい……そんな事があるわけない……」」
アレクサンダー、怒気を含んだ声でつぶやく。
「私も、パトリシアお嬢様に悪魔など憑いていないと思っています。むしろ悪魔が憑いているのは……」
彼女はその先を口にするのを恐れるように、口を覆う。
「何か知っているのか」
「……本当に悪魔が憑いているのは、あの家族です」
メイドは机をにらみつける。
「彼ら家族は、お嬢様に悪魔が憑いていると信じていました。暖炉の火が燃えたり、家で不幸が続いた時にその疑いは頂点に達したようです。私は詳しい話はわかりません。しかしパトリシアお嬢様は、外に連れて行かれ、そして帰って来た時には酷い傷を背中に受けていました」
アレクサンダーは目を見開く。
「どういう事だ」
「なぜか、他のメイド達はお嬢様の世話を断りました。ですので、ランドリーメイドの私が呼ばれてお嬢様の看病を致しました。お嬢様は、背中に鞭で打たれた複数の痕があり皮膚は腫れ、酷い有様でした……一晩中痛みに呻き、数日はベッドから起き上がる事もできませんでした。本当にかわいそうなお嬢様……」
彼女が涙を流す。
「なぜ、彼女はそんな怪我を……」
「悪魔祓いさ」
黙って話を聞いていたロドリゴが口を開く。
「悪魔祓い?」
「悪魔の憑いた人間を鞭打ち、聖水を駆けて悪魔を退治するのさ」
「そんな方法で、悪魔が祓えると」
「馬鹿げているが、彼らはそれを信じているんだ」
「……お嬢様の体が回復した後、私は首を切られました。穢れていると言われたのです」
「それは……なんと身勝手な」
「いえ、私はカフェで運良く皿洗いの仕事に就けたので、良いのです。それよりも、あの屋敷に残ったお嬢様がいったいあの後もどんな扱いを受け続けたのか……それを想像するだけで胸が痛くなるのです」
女はつらそうにうつむく。
「彼女の心配をしてくれてありがとう。パトリシアは、必ず私が幸せにするから安心して欲しい」
アレクサンダーは立ちあがる。
「話を聞かせてくれてありがとう」
「ロドリゴ氏、行こう」
「失礼します」
二人は店を出て馬車に乗る。
「……酷い話だ」
「全く持ってだな。実の家族に、悪魔と罵られて生きるなど、酷い生き地獄だ」
アレクサンダーは、ロドリゴを見る。
「あの話は君の調査の手助けになったか」
「もちろんだ。悪魔祓いに鞭打ちを好んで行うのはフォーラム教だ」
「フォーラム教……」
「もしかしたら、彼女は再び悪魔祓いをするためにフォーラム教の人間達に捕まったのかもしれない」
「どうやって助け出す」
「フォーラム教のアジトに乗り込むさ」
男は不敵に笑う。そして馬車は、裏道に突き進んでいった。
下りた場所は、治安の悪い事で有名な場所である。ロドリゴが、一つの建物に近づきドアを開ける。
「なんだおまえ」
中から、長身の男が出て来る。
「すまない、少し通してくれ」
ロドリゴは、次の瞬間に男を杖で殴って倒す。
「!」
アレクサンダーは慌てて、男の様子を見る。
「大丈夫死んでないさ。それより、君はここで待っていてくれ」
「いや、俺も一緒に行く」
「君に何かあったら、一大事だぞ」
「家の一大事より、妻の命の方が大事だ」
「……ふっ、どうやら君は相当にイカれているらしい」
二人は、家の中に踏み込む。すると中から男達が出て来る、ロドリゴは仕込み杖を抜いて向かって来る男達を切る。アレクサンダーは、殴りかかって来た男の拳を避けて、かわりに重い拳を眼目に叩き込む。
「ひゅー、なかなかやるね。貴族様のわりに随分体を鍛えている」
「……いざと言う時に彼女を守れるように鍛えてるんだ」
再び襲いかかって来る男達。それを二人は、難なく倒す。
「なんだか、君のお嫁さんに興味が出て来たぞ。それだけ君が惹かれてる理由はなんだろうか」
アレクサンダーは手近にあった瓶で男を殴る。
「横恋慕してくれるなよ」
思わず、牽制する。奥の部屋行くと、地下への階段がある。そこを二人は、警戒しながら下りる。地下からは、冷たい風が流れて来る。
「妙な匂いがするな」
「異国のお香だな」
ゆっくりと音をたてないように、暗い地下を進む。そこは、四方を石で組まれた廊下だった。強く香りのする方へと進む。すると、奥から何かつぶやく声が聞こえる。暗がりに、光が小さく差し込んでいる。二人は扉に近づき、そっと中を見る。
「!」
そこには頭巾を被った黒ずくめの集団がいた。壇上の上にいる男が、何か呪文を唱えている。そして、男の前には女が後ろ手を縄で縛られて背を向けて座っている。アレクサンダーにはそれがパトリシアだとすぐにわかる。踏み込もうとしたら、ロドリゴに止められる。
「(やめろ、人数が多すぎる)」
「(だが、パトリシアが捕まっているんだぞ!)」
小声で言い争う。
「(これを使え)」
ロドリゴが押し付けて来た冷たい鉄の塊は銃だった。
「(使い方はわかるな)」
アレクサンダーは、戸惑いながらうなずく。銃は、個人での所持が禁止されている。基本的に軍隊に所属する兵隊だけが扱う物だった。アレクサンダーは貴族の義務として、成人後一年徴兵で軍に所属していた。なので、銃の扱いはわかる。そしてコレが、どれだけ危険な物なのかも理解していた。ロドリゴも、拳銃を構える。
「(行くぞ)」
ロドリゴが先に部屋に入る。黒ずくめの彼らが一斉に振り向く。ロドリゴは、彼らに銃を向けた。
「儀式を中断しろ」
ざわめく男達。
「ひざまずいて、体を低くしろ!!」
アレクサンダーも叫ぶ。するとざわめく男達は、地面に這いつくばる。しかし、パトリシアの隣に立つ男は毅然として立ったままだった。その男とだけは、頭巾を被っていなかった。
「おまえもだ!」
アレクサンダーは男に銃を向ける。
「この者には悪魔が憑いている。それを、祓うのは当然の事だ」
アレクサンダーは、ちらりと男の足下にいるパトリシアを見る。彼女は薄い衣服を着せられて、頭から水を浴びせられて震えている。そして露わになった、その背には既に鞭で打った痕が生々しく残っていた。思わず、引き金を引く指に力が入る。
「何が悪魔だ。彼女は俺の妻だ、悪魔に取り憑かれてなどない!」
「ならば、見てみろ」
男がパトリシアの背を押す。するとパトリシアは力無く後ろに倒れる。
「!」
アレクサンダーは彼女を見て驚く。パトリシアは白目を剥いて、口から泡を拭いている。目の下にはクマができていて、顔色は真っ白だ。
「これが証拠だ。この女は悪魔を身の内に飼っている。だから、こうして抵抗を見せるのだ」
アレクサンダーは銃口を下ろして、男の足を撃ち抜いた。
「ぐっ!」
すぐに駆け寄って、倒れたパトリシアの体を見て抱き上げる。
「何が、悪魔祓いだ!! こんなのはインチキだ!!」
アレクサンダーは部屋の黒服達に目を走らせる。
「この症状は麻薬中毒の物だ。腕に注射の痕がある。儀式のために強制的に起こされたモノだ!!」
ロドリゴが男達の黒頭巾を次々取る。そしてアレクサンダーは見覚えのある男を見つける。
「メディナ・ヘラルド! おまえが妻をここに連れて来たんだな!!」
アレクサンダーは低い声で叫ぶ。メディナは、床に這いつくばったまま震えている。
「パ、パトリシアは悪魔に取り憑かれているんだ……!!」
「黙れ! 俺の妻に手を出した事、一生後悔するが良い」
アレクサンダーは、男から視線を切り部屋を出る。しばらくすると、遅れてやって来た警察達が部屋になだれ込んで来る。ロドリゴが後ろから追いかけて来る。パトリシアは腕の中で、不気味な痙攣を起こしている。
「早く医者に見せなければ……」
「よくこの症状が麻薬中毒のモノだとわかったな」
「……少し前から貴族の間でも麻薬が流行っていたんだ。サロンによっては、その手のモノを部屋に焚いているところまである。あの部屋でも、香の飾りに混ざって麻薬の匂いがした」
あの信者達もトランス状態にあったのだろう。
「おまえさん探偵に向いているな」
「冗談を言うな、二度とごめんだ。後は任せる」
屋敷を出て、馬車に乗り込む。
「あぁ、あの野郎はきっちり警察が牢屋にブチ込んでくれると思うぜ」
アレクサンダーは震える彼女の体を抱きながら、早く馬車が屋敷に着く事を願った。
屋敷に着くとパトリシアをすぐに寝室に寝かせて、医者を呼んで診せた。医者は驚きつつも、治療にあたってくれた。そして一時間後、どうにかパトリシアの容態は落ちついた。
「しばらくは、離脱症状に苦しむと思います。鎮静剤を置いていきますので、酷い時には飲ませください」
「あぁ、わかった」
医者が帰った後、アレクサンダーは彼女の横に座る。眠るパトリシアの頬をそっと撫でる。ひとまず、彼女が生きていた事にほっとした。
つづく
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