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夢なら覚めないで欲しい(ブランシュ視点)

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 まさかこんなに早くクロヴィス様に会うなんて、しかもいきなり婚約なんてびっくりしてしまう。

 これが夢なら覚めないで欲しい。

 きっと神様が私を可哀想に思い素敵な夢を見せてくれているのだろう。

 婚約が決まってからクロヴィス様は毎日アカデミーの帰りに私に会いにきてくれる。
 こんなに幸せでいいのかと不安になるけど夢だしいいよね。


 私は13歳になり、アカデミーに入学することになった。
 クロヴィス様とヘンリーお兄様はアカデミーの高等科に進み、セレスティアお姉様は高等科の3年生になった。

 我が国は13歳になると貴族の子供は皆、王立アカデミーに入学する。中等科は13歳から15歳、16歳から18歳は高等科。高等科は専攻科が分かれている。
 クロヴィス様とヘンリーお兄様は経営科、セレスティアお姉様は淑女科に在籍している。

 私も前は淑女科にいた。卒業したらクロヴィス様と結婚して幸せになるはずだったのに、あの男と無理矢理結婚させられた。

 入学式のあと、アカデミーではパーティーがある。
 中等科、高等科の生徒と先生が参加する。
 前の入学パーティーはまだクロヴィス様と出会う前だったので父がエスコートしてくれた。

 今日はもちろんクロヴィス様がエスコートしてくれる。
 入学式は制服だが、パーティーはドレス着用だ。私はクロヴィス様色のドレスを着た。
 セレスティアお姉様をエスコートしているのは婚約者のランディス公爵子息のハワード様だ。
 お姉様がアカデミーを卒業したらハワード様と結婚することが決まっている。

 前にルブラウン家とうちとでしていた共同事業は今はランディス公爵家としていて、ルブラウン家とは全く接点がない。

 ルブラウン家はこの夢の中の世界では存在しないのかもしれないな。

「ブランシュ、どうしたの?」

 ぼんやりと考えていたら隣にいるクロヴィス様が心配して私の顔を覗き込んできた。

「ありがとうございます。大丈夫ですわ。人が多いのでぼんやりしちゃいました」

 私はへへへと笑った。

 その時、あの男に似た人の姿を発見した。

 いや、間違いなくあの男だ。

 一瞬目があったような気がした。

 まさか、ここは夢の中の世界。私の夢に勝手に出てこないで! せっかく幸せな気分でいるのに。

 クロヴィス様が私の腕をぎゅっと掴んで私を隠すように前に出た。

「ブランシュ、危ないから私の後ろにいるといい」

 そうね。さっき人が多くてぼんやりしたと言ったものね。

 まさか、クロヴィス様もあの男に気がついて私を隠したなんてそんな事あるわけないわね。

「クロヴィス、ブランシュ、そろそろ家に戻った方がいい」

 ヘンリーお兄様が側に来てクロヴィス様にそう言った。

「そうだね。ブランシュも人が多くて疲れたみたいだし、そろそろもどろうか」

 言い方は優しいが私に有無を言わせない圧を感じる。私はこくんと頷いた。

 会場を出てクロヴィス様のエスコートでスタンリッド家の馬車に乗る。

 私達は向かいあって座った。

 私はあの時のショックからか、少し震えが止まらない。

 クロヴィス様はそれに気がついたようで私の隣に座り直し、私の肩をか抱きしめてくれた。

「結婚はブランシュがアカデミーを卒業してからだと決まったけど、もし、嫌じゃなかったらすぐにでも入籍しないか? 一緒に暮らすのは卒業してからでいい。とにかく早くスタンリッド家の人間になって欲しい」 

 クロヴィス様が突然そんなことを言う。

「不安なんだ。ブランシュを誰かに取られるんじゃないかって。爵位が上の者がゴリ押ししてきたら逆らえない。でも結婚していたら離縁させてまでブランシュを私が取り上げようとはしないだろう」

 爵位が上の者がゴリ押し?

 これってルブラウン家の事をいっているのかしら?

 嫌だ! 絶対に嫌だ! もうクロヴィス様から離れたくない。

「はい。私もクロヴィス様と早く結婚したいです」

「よかった。では、シューナアス伯爵に話をしてみるね」

 クロヴィス様は家に戻るとすぐにご両親に話をしたようだ。次の日スタンリッド家から我が家に話がきた。

 父はいい顔はしなかったが、兄や姉も私達の味方になってくれて一緒に父を説得してくれた。

 入籍はするが、卒業までは白い結婚を約束すること。結婚式が済むまでは私はシューナアス家で暮らす事。その条件で渋々入籍を認めてくれた。

 次の佳き日に私達は入籍し、私はブランシュ・スタンリッドとなった。


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