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まさかの
しおりを挟む「飲んでもいいわよ。あいつらを油断させて捕らえる?」
「ダメだ! ハイデマリー殿下が犠牲になることはない!」
私の言葉にリュディガー様は声を荒げた。
「大丈夫ですわ。私は毒や薬には耐性があります。精神拘束系の魔法や薬、媚薬も全く効きません」
「それでもダメだ。危ない目に遭わせたくない。君は早く国に戻れ。戻ってくれ。魔法を使えばすぐに戻れるのだろう?」
リュディガー様は私の顔を覗きこむ。
「すぐに帰れますよ。でも帰る時は一緒です。あなたを置いて帰るなんて有り得ません」
私はリュディガー様の手を握った。
「だめだ。だめだハイデマリー殿下。私はこの邪悪な血を後世に残したくないんだ。あんな男が父親じゃなかったら……」
「リュディガー様……」
スティーブが一歩前に出た。
「このことを知るのは今ではもう私だけとなってしまいました。いや、現公爵も知っているでしょう。だからあなた様に辛く当たるのです。実はあなた様は公爵の息子ではありません。あなた様の実の父はブラウンフェル伯爵の子息だったモーリッツ様です」
スティーブの言葉にリュディガー様は固まる。
「えっ? どういうことだ? 母が不貞をしたと言うのか?」
「いえ、そうではありません。お二人は恋人同士でいらっしゃいました。結婚のお約束をされており、とても仲睦まじかったのです。しかし、モーリッツ様が火事で亡くなり、お腹に子供がいることを承知であの男が婚姻を申し出たのです。今思えば、ブラウンフェル伯爵家の火事もボーデ伯爵達の仕業かもしれません。結局原因は分からずじまいでしたからね」
スティーブは冷静な顔で怖いことを言う。
リュディガー様は衝撃を受けたようで固まっている。
「スティーブ、それでは、私は父も母もあの者達に殺されたのか?」
「そうなります。ブラウンフェル伯爵家のことはあの時私達も総出で調べましたが、残念ながら証拠を不自然なほどに消されていて分かりませんでした。あの頃、ボーデ伯爵家と現公爵が繋がっていて、あいつらが仲間だと分からなかった。悔しいです」
スティーブは目を伏せた。
私はスティーブの話を聞き、頭を整理した。
要するに敵は側妃と現ヴェルトミュラー公爵夫妻、マインラート。そして姉妹の親のボーデ伯爵か。
しかし、神の守護を馬鹿にしたこの国の貴族達も報いを受けなければならないと思う。
「リュディガー様、ご家族の仇を討ちましょう。あなたはあの男の邪悪な血など受け継いでいません。ブラウンシェル伯爵家のモーリッツ様とはどのような方だったのだったのかスティーブは知っているのですか?」
私はスティーブの顔を見た。
「はい。存じ上げております。今まで話さなかったのはこれ以上リュディガー様を混乱さすまいと思ってでしたが、そんな風にお思いならもっと早く話しておけばよかったです」
スティーブは眉根を寄せ、リュディガー様の実の父の話をはじめた。
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