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最終話 次は女の子がいいわ
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あれから10年の月日が過ぎた。
ラメルテオン国はプレジデントになったマーロックス侯爵が旗を振り、新しい国になっているようだ。
国交の無かったゾニサミド王国とも国交を結び、交流する様になった。
外相となったエアハルト様の妹が、ラメルテオン国の宰相になったテオの夫人だということもあり、短期間で仲良くなったようだ。
とはいえ、ゾニサミド王国は獣人の国なので他国とは違い緩くのんびりしている。
でも、そこは獣人。有事の際はピシッと戦闘態勢になるらしい。
私はエル・ドルソー辺境伯夫人になった。辺境伯夫人、そして魔法医療師としてまぁまぁ活躍している。
今は育児の為に冒険者はお休みしている。そろそろ復帰してまた暴れたいと思っている。
だがしかし……。
「だめだめ。冒険者なんて危ないだろう? エルを危険な目に合わせたくないんだ」
私の番のディート様は相変わらず過保護炸裂だ。
子供達はみんな生暖かい目で見ているので母としてはちょっと恥ずかしい。
「母上いつもながら大変ですね」
長男のフリッツは苦笑いしている。
「フリッツも番が見つかるとあんなになっちゃうのよ」
「まさか、私はなりませんよ」
フリッツは抵抗しているが絶対なる。
祖父と父を見ていてわからないのだろうか?
私は今は8人の子供がいる。結婚してから毎年のように妊娠出産を繰り返している。
8人とも全て男なので今度こそ女の子だといいなぁとお腹を撫でる。
今、私は9人目を妊娠中だ。
我が家はお義父様、お義母様、ディート様、私、子供達は上からフリッツ、キース、ロルフ、アレクシス、ブルーノ、エミール、ヘルムート、ケヴィン。
毎日、子熊達がわちゃわちゃしている。
ラメルテオン国にいた頃は10年後こんな生活をしている自分なんて想像すらしていなかった。
カール様と結婚してラメルテオン王国の王妃になるはずだった。
ラメルテオンは王国から国となり、今は議会で貴族も平民も関係なく一緒に政治をしているようだ。
でも、まだまだ貴族と平民の壁は厚いそうだ。
当時平民に人気のあった元王妃を担ぎ出し、その壁を薄くしたかったようだが、元王妃様は今でも領地でのんびり暮らしているらしい。
あの時生まれ変わってカール様からラルフ様になったあの子は10歳になったそうだ。
今度はあんな風にならないように元国王陛下と元王妃様がしっかり愛情を持って育てているらしい。
「亡くなったお兄様が……」とカール様のやった事を話しているという。
ゾニサミド王国はたまに魔獣が出没するくらいで概ねのんびりしている。この国に呼んでくれて、ディート様と会わせてくれたローゼ姉様には感謝しかない。
そうそう、ローゼ姉様は王妃様としてバリバリ働いている。
「エルにも王妃補佐として働いて欲しいのだけど、そんなに毎年出産していては無理ね」と笑う。
私はもう王宮の仕事は懲り懲り。
あの時婚約を解消したら秘密が漏れないように消されるか、捕まって幽閉かどちらしかないと思い、逃げて正解だった。
あの時逃げたからこそこんな楽しい毎日を過ごせている。
うっ、痛い。
そろそろ陣痛が始まったみたいだ。自分に楽に出産できるように魔法をかける。
なんせ9人目なので慣れたものだ。
「ディート様、陣痛が始まりましたわ」
「えっ? では、助産師を呼んできてもらうよ」
ディート様は従者に魔法助産師を呼びに行ってもらった。
「8時間くらいかな? 一緒に頑張ろう」
そう言って私を背中から抱きしめる。
子供達は全員ディート様が立ち会い、私に魔力を流してくれた。どの子もディート様の魔力の中で安心して出産できた。
獣人はみんなそうするらしい。
番で良かったなぁと思う。
私はとても幸せだから、みんなも幸せになって欲しい。
その為にこれからも頑張るわ。
とりあえず今は、次に生まれてくる子が女の子であるように神様に祈るとしよう。
6時間後、元気に産まれてきたのは4500グラムのビッグな男の子の子熊ちゃんだった。
10人目こそは女の子ですように……。
了
皆さんありがとうございました。
ラメルテオン国はプレジデントになったマーロックス侯爵が旗を振り、新しい国になっているようだ。
国交の無かったゾニサミド王国とも国交を結び、交流する様になった。
外相となったエアハルト様の妹が、ラメルテオン国の宰相になったテオの夫人だということもあり、短期間で仲良くなったようだ。
とはいえ、ゾニサミド王国は獣人の国なので他国とは違い緩くのんびりしている。
でも、そこは獣人。有事の際はピシッと戦闘態勢になるらしい。
私はエル・ドルソー辺境伯夫人になった。辺境伯夫人、そして魔法医療師としてまぁまぁ活躍している。
今は育児の為に冒険者はお休みしている。そろそろ復帰してまた暴れたいと思っている。
だがしかし……。
「だめだめ。冒険者なんて危ないだろう? エルを危険な目に合わせたくないんだ」
私の番のディート様は相変わらず過保護炸裂だ。
子供達はみんな生暖かい目で見ているので母としてはちょっと恥ずかしい。
「母上いつもながら大変ですね」
長男のフリッツは苦笑いしている。
「フリッツも番が見つかるとあんなになっちゃうのよ」
「まさか、私はなりませんよ」
フリッツは抵抗しているが絶対なる。
祖父と父を見ていてわからないのだろうか?
私は今は8人の子供がいる。結婚してから毎年のように妊娠出産を繰り返している。
8人とも全て男なので今度こそ女の子だといいなぁとお腹を撫でる。
今、私は9人目を妊娠中だ。
我が家はお義父様、お義母様、ディート様、私、子供達は上からフリッツ、キース、ロルフ、アレクシス、ブルーノ、エミール、ヘルムート、ケヴィン。
毎日、子熊達がわちゃわちゃしている。
ラメルテオン国にいた頃は10年後こんな生活をしている自分なんて想像すらしていなかった。
カール様と結婚してラメルテオン王国の王妃になるはずだった。
ラメルテオンは王国から国となり、今は議会で貴族も平民も関係なく一緒に政治をしているようだ。
でも、まだまだ貴族と平民の壁は厚いそうだ。
当時平民に人気のあった元王妃を担ぎ出し、その壁を薄くしたかったようだが、元王妃様は今でも領地でのんびり暮らしているらしい。
あの時生まれ変わってカール様からラルフ様になったあの子は10歳になったそうだ。
今度はあんな風にならないように元国王陛下と元王妃様がしっかり愛情を持って育てているらしい。
「亡くなったお兄様が……」とカール様のやった事を話しているという。
ゾニサミド王国はたまに魔獣が出没するくらいで概ねのんびりしている。この国に呼んでくれて、ディート様と会わせてくれたローゼ姉様には感謝しかない。
そうそう、ローゼ姉様は王妃様としてバリバリ働いている。
「エルにも王妃補佐として働いて欲しいのだけど、そんなに毎年出産していては無理ね」と笑う。
私はもう王宮の仕事は懲り懲り。
あの時婚約を解消したら秘密が漏れないように消されるか、捕まって幽閉かどちらしかないと思い、逃げて正解だった。
あの時逃げたからこそこんな楽しい毎日を過ごせている。
うっ、痛い。
そろそろ陣痛が始まったみたいだ。自分に楽に出産できるように魔法をかける。
なんせ9人目なので慣れたものだ。
「ディート様、陣痛が始まりましたわ」
「えっ? では、助産師を呼んできてもらうよ」
ディート様は従者に魔法助産師を呼びに行ってもらった。
「8時間くらいかな? 一緒に頑張ろう」
そう言って私を背中から抱きしめる。
子供達は全員ディート様が立ち会い、私に魔力を流してくれた。どの子もディート様の魔力の中で安心して出産できた。
獣人はみんなそうするらしい。
番で良かったなぁと思う。
私はとても幸せだから、みんなも幸せになって欲しい。
その為にこれからも頑張るわ。
とりあえず今は、次に生まれてくる子が女の子であるように神様に祈るとしよう。
6時間後、元気に産まれてきたのは4500グラムのビッグな男の子の子熊ちゃんだった。
10人目こそは女の子ですように……。
了
皆さんありがとうございました。
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感想ありがとうございます。
10人目は女の子でしょうか?
獣人は皆子沢山のようでエル以外も沢山うんでいるようです。
もし10人目が女の子だったらお嫁に行くのは大変でしょうね。
10人は大変そうだ…
感想ありがとうございます。10人は大変です。
王家に嫁いだ者がいるのに国交がないのは、少々、矛盾があるように感じます。
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