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番ってどんな感じなのだろう?

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*やっと恋バナです。
遅れてきたヒーロー、クマ獣人のディートヘルム・ドルナーとエルはどうなるのでしょうか?*

 エアハルト様が戻ってきて、ラメルテオン王国がどうなったのか詳しく教えてもらった。

 それにしてもそんなことになっていたなんて。

 父が蚊帳の外だったというのはちょっと笑ったけど、実は知っていて知らないふりをしていたんじゃないかと思う。

 父の腹黒さは半端ない。

 知らないうちに全てが終わるなんて、楽だものね。

 自分は遥か離れたリズミック王国から高みの見物を決め込む。
 母の母、つまり私のお祖母様がリズミック王国出身だから、あちらには知り合いや親戚もたくさんいる。

 きっと私をゾニサミドに逃す前から、宰相達がかいた筋書きを知っていたのだろう。ミカルディスもまさか実の娘まで宰相についているとは思わなかっただろうな。どんな筋書きだったのか気になる。腹黒マリウスがその辺りよく知っているはず。聞いてみよう。

 まぁ、リズミック王国に行った父母からは近いから遊びに来いと行くとか言われている。祖国が大変な時に気楽な人達だ。まぁ、私も変わらないか。


 ディート様は私の番だとカミングアウトしたあの日から、私のそばには常にいるようになった。

 義父母を見ていると、番とはそんな感じなのかな?と思う。
 義母の話によると、純血種の獣人同志だとちょっと危ない人だと思ってしまうくらいヤバいらしい。

「ディートはハーフだからまだマシよ」
と笑っていた。

 しかし、この状態でまだマシなのか?

 私はディート様の膝の上に座らせられ、後ろから抱きしめられている。


見ようによってはクマの胸から顔だけ出てるように見える。クマの親子か?

「ディート様、私は今までこんな座り方をしたことがないので何だか変な感じなのですが」

「うん、俺もこんな座り方をするのは初めてだ。慣れてないから座り心地が悪くてすまない」

 いや、座り心地はかなりいい。

「重いでしょう?」

「いや、全く重くない」

 いやいや、重いだろう。

「私は以前に元婚約者から『エルは大きいし、重いから横抱きなど無理だな。婚儀の時はどうすればいいか』と頭を抱えられたことがありますわ。ラメルテオン王国は婚儀の際に新郎が新婦を横抱きにして教会の外に出て、みんなに祝福してもらう慣習があるのです」

「軟弱な男だ。破棄して良かった」

 確かに軟弱だな。というか、ディート様から見たら誰でも軟弱だろう。

「エルは別に大きくないし、重くもない。細くて心配なくらいだ」

 そんなこと初めて言われたわ。確かにこの国の女性はみんながっしりしている。獣人だからか筋肉質な感じがする。

 こないだお会いしたエアハルト様の奥様はしなやかな筋肉がついていてかっこよかった。背も私より10センチくらい高い。
 
 クールビューティーな女性だったな。


「エル、ふたりでいる時は他の者の事は考えないでほしいな」

 身体を曲げて私の耳元に口を寄せ、小さい声でぼそっと呟く。
ゾクっとしちゃうわ。

「ディート様、確かに婚約はしていますが、私はまだディート様のことを何も知らないんです。結婚式までの間、ディート様の事を教えてください」

「俺のこと? つまらない男だよ。でもエルに好きになってもらえるように努力する」

「私はもっとつまらない女ですよ。小さい頃から勉強ばかりさせられていました。そして捨てられて、この地に逃げて来たんです。ギズモノですわ。しかも死んでます。番というだけで私を娶らないといけないなんてディート様がお気の毒ですわ」

 そう言って振り返るとクマさんは眉根を寄せている。

「エルが辛いならそんな奴消してやる。俺は気の毒じゃない。世界でイチバン幸せだ。いつもエルを笑顔にするのが俺の使命だ」

 消す? クマさん過激だわ。でもこの人といると安心できる。

 カール様といる時みたいに四方八方に神経を向けなくてもいい。失敗のお尻拭きなどすることもないだろう。

 生まれてから今まで誰にも甘えて生きてこなかったら。この人ならその分甘えてもいいのかも?

「甘えてもいいですか?」

 ディート様は耳まで真っ赤になった。

「当たり前だろう。俺以外にはそんな顔しないでくれよ」

 私、どんな顔をしているんだろう?

 そう思っていたら、マシュマロを口に入れられた。

 甘いわ~。
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