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第19話 グローズクロイツ領改革計画その①
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「皆さんが私の話を受け入れてくれてくださり有難うございます。私はこのグローズクロイツ領のために頑張ります。よろしくお願いします」
アンネリーゼは頭を下げた。
「そんな他人行儀な挨拶はいらないよ。リーゼは前世も含めてリーゼだ。私の大事な娘だ」
「そうよ。私達にとっても大事な孫よ。あんな人の嘘に惑わされて距離を置いたことを後悔しているわ。今までの分も取り戻させてね」
みんなの言葉にリーゼははにかんだ笑顔を見せ、用意してきた資料をテーブルの上に広げた。
「グローズクロイツ領の土地は痩せていて作物がなかなか育ちません。それに育っても魔獣に襲われる可能性もあります。まず、ディーママの土魔法で土壌改良をして、私の光魔法で育ちやすい環境を作ります。できた畑の周りにはお父様やお祖父様が魔法で結界を作り、それにディーママが増強魔法をかけて強くします。この増強結界があれば、畜産も魔獣に襲われる心配がなくなります。みんなで力を合わせれば必ずできるはずです」
なるほど。畑や牧場の周りに強い結界を張れば安心だ。でもそれなら……。
「それならいっそ、この邸だけでなく、この領地を強い結界で覆ってしまってはどうかしら? 国境や森の近くはより強度を高めて、こちらからは簡単に出られるけどあちらからは絶対入ってこれないような仕掛けにすれば、領民達は安心じゃないですか。逃げる、戦うを考えないで生活ができます」
私の思いつきに祖父が頭を振る。
「無理だ。確かに私達は魔法で結界を張ることができるが、そこまで強いものは難しい。この邸の周りには何重にも魔法をかけてやっと魔獣が入ってこれないくらいの強度になったので、領民をここに避難させることができるようになった。そりゃディーが言うような事が出来たらどれだけ安心か」
義父はため息をついた。
「お義父様、私を誰だと思っているのですか? 結界を張る皆さんに増強魔法をかけさせてもらいます。そしてできた結界にも増強魔法をかけます。これなら問題なく思っているような結界ができます。領地全体を結界で覆えば、さっきリーゼが言っていた個別に結界を張る必要もないし、領地全体が安全になります。魔獣が出るたびに逃げる必要がなくなるので、領地の負担は減ると思いますよ」
私の言葉に皆驚いているようだ。
「でも、そんなことをしたらディーは魔力欠乏を起こすんじゃない? ディーが無理をしてはいけないわ」
義母が心配そうに私を見る。皆も同じことを思っていたようだ。
「心配してくれて有難うございます。でも私は大丈夫ですわ。かなり魔力が多いので、出した方が楽になるのです」
アンネリーゼに向かって微笑んだ。
「今でも定期的に魔石に余っている魔力を注いで体内魔力の調整をしているくらいです。だから私の魔力は大丈夫です。やりましょう!」
私は皆の顔を見た。
「わかった。でもくれぐれも無理はしないでくれ。辛くなったら中止しよう」
アルトゥール様からOKが出た。
まずは結界の張り直し、そして土壌改良だな。
「それから……」
アンネリーゼが次の資料を取り出した。
「私の前世では、寒い時にはビニールハウスという簡易な温室のような場所で温度を調節し、作物を栽培していました。グローズクロイツ領の冬は寒いので、皆冬籠りをしていますが、こんな設備があれば冬の農業も可能です」
温室での栽培か。いいな。
腕組みをして話を聞いていたアルトゥール様が口を開いた。
「試しに大きな温室を何棟か作り、周りに雪が積もらない魔法をかけておけばいいな。中の温度設定はさっきディーが言っていた魔石を使い、暖房の魔道具を中に入れれば温度は保てる。やってみるか」
「お父様、ハウス栽培は土だけではなく、水での栽培も可能です。水魔法と光魔法、そこにディーママの増強魔法で土を使わずに水だけの栽培もやってみる価値はあると思います」
アンネリーゼの言葉に皆目を丸くする。水だけの栽培なんて初めて聞いた。そう言われてみれば球根の花は水だけで栽培されている。できないことはないな。
「それにしても、アンネリーゼは光魔法が使えるのか。光魔法を使う者はあまりいないので、王家が欲しがるだろうな。やらんが」
義父が不敵に笑う。
「教会で属性検査をするのはまだ来年でしょ? よく自分の属性がわかったわね?」
この国では8歳になると教会で魔法の属性検査を受けなくてはならない。その時に自分の属性を知るのだが、アンネリーゼはなんで知っているのだろう?
「転生者あるあるです。私は鑑定のスキルを持っているので、ステータスボードというものが見えるのです。そこにはその人の属性や加護、魔力のレベルなどが載っています。転生したと気がついた時、ひょっとして見られるかもしれないと、ステータスボードを呼び出してみたら、出てきました」
ステータスボード? 鑑定のスキル? なんじゃそれ?
全くアンネリーゼは訳がわからなすぎて面白い。そのステータスボードには使える魔法属性が書いているのか。
「リーゼ、それって誰のでも見られるの?」
「もちろん。ディーママは火属性、風属性、土属性、それに聖属性。そして魔力は♾️。回復魔法の他に、増強魔法や無効化の魔法など色々なスキルを持っているわ」
♾️? 私の魔力って無限なのか。それなら出して出して出しまくれるな。私は嬉しくてヘラヘラしてしまった。
「私は光属性なんだけど、転生者チートでほとんどの魔法は何となく使えるみたいです。色んなスキルもあるし、グローズクロイツ領の役に立つと思う」
アンネリーゼはシラっと言った。転生者チートってなんだ?
「ねぇ、転生者チートって何?」
私は小声でアンネリーゼに聞いてみた。
「転生してきた者に与えられた、何でもできるチカラみたいなものかな」
アンネリーゼは意味ありげにふふふと笑った。
何だかわからないが、良いものなのだろう。とにかく私達にはやれるチカラがあるのだ。やるしかない。
まずは、グローズクロイツ領改革計画の第一弾、結界増強計画だな。
◆◆◆
結界を張る魔法が使える者達が屋敷に集められた。
いよいよ、始まったな。
アンネリーゼは頭を下げた。
「そんな他人行儀な挨拶はいらないよ。リーゼは前世も含めてリーゼだ。私の大事な娘だ」
「そうよ。私達にとっても大事な孫よ。あんな人の嘘に惑わされて距離を置いたことを後悔しているわ。今までの分も取り戻させてね」
みんなの言葉にリーゼははにかんだ笑顔を見せ、用意してきた資料をテーブルの上に広げた。
「グローズクロイツ領の土地は痩せていて作物がなかなか育ちません。それに育っても魔獣に襲われる可能性もあります。まず、ディーママの土魔法で土壌改良をして、私の光魔法で育ちやすい環境を作ります。できた畑の周りにはお父様やお祖父様が魔法で結界を作り、それにディーママが増強魔法をかけて強くします。この増強結界があれば、畜産も魔獣に襲われる心配がなくなります。みんなで力を合わせれば必ずできるはずです」
なるほど。畑や牧場の周りに強い結界を張れば安心だ。でもそれなら……。
「それならいっそ、この邸だけでなく、この領地を強い結界で覆ってしまってはどうかしら? 国境や森の近くはより強度を高めて、こちらからは簡単に出られるけどあちらからは絶対入ってこれないような仕掛けにすれば、領民達は安心じゃないですか。逃げる、戦うを考えないで生活ができます」
私の思いつきに祖父が頭を振る。
「無理だ。確かに私達は魔法で結界を張ることができるが、そこまで強いものは難しい。この邸の周りには何重にも魔法をかけてやっと魔獣が入ってこれないくらいの強度になったので、領民をここに避難させることができるようになった。そりゃディーが言うような事が出来たらどれだけ安心か」
義父はため息をついた。
「お義父様、私を誰だと思っているのですか? 結界を張る皆さんに増強魔法をかけさせてもらいます。そしてできた結界にも増強魔法をかけます。これなら問題なく思っているような結界ができます。領地全体を結界で覆えば、さっきリーゼが言っていた個別に結界を張る必要もないし、領地全体が安全になります。魔獣が出るたびに逃げる必要がなくなるので、領地の負担は減ると思いますよ」
私の言葉に皆驚いているようだ。
「でも、そんなことをしたらディーは魔力欠乏を起こすんじゃない? ディーが無理をしてはいけないわ」
義母が心配そうに私を見る。皆も同じことを思っていたようだ。
「心配してくれて有難うございます。でも私は大丈夫ですわ。かなり魔力が多いので、出した方が楽になるのです」
アンネリーゼに向かって微笑んだ。
「今でも定期的に魔石に余っている魔力を注いで体内魔力の調整をしているくらいです。だから私の魔力は大丈夫です。やりましょう!」
私は皆の顔を見た。
「わかった。でもくれぐれも無理はしないでくれ。辛くなったら中止しよう」
アルトゥール様からOKが出た。
まずは結界の張り直し、そして土壌改良だな。
「それから……」
アンネリーゼが次の資料を取り出した。
「私の前世では、寒い時にはビニールハウスという簡易な温室のような場所で温度を調節し、作物を栽培していました。グローズクロイツ領の冬は寒いので、皆冬籠りをしていますが、こんな設備があれば冬の農業も可能です」
温室での栽培か。いいな。
腕組みをして話を聞いていたアルトゥール様が口を開いた。
「試しに大きな温室を何棟か作り、周りに雪が積もらない魔法をかけておけばいいな。中の温度設定はさっきディーが言っていた魔石を使い、暖房の魔道具を中に入れれば温度は保てる。やってみるか」
「お父様、ハウス栽培は土だけではなく、水での栽培も可能です。水魔法と光魔法、そこにディーママの増強魔法で土を使わずに水だけの栽培もやってみる価値はあると思います」
アンネリーゼの言葉に皆目を丸くする。水だけの栽培なんて初めて聞いた。そう言われてみれば球根の花は水だけで栽培されている。できないことはないな。
「それにしても、アンネリーゼは光魔法が使えるのか。光魔法を使う者はあまりいないので、王家が欲しがるだろうな。やらんが」
義父が不敵に笑う。
「教会で属性検査をするのはまだ来年でしょ? よく自分の属性がわかったわね?」
この国では8歳になると教会で魔法の属性検査を受けなくてはならない。その時に自分の属性を知るのだが、アンネリーゼはなんで知っているのだろう?
「転生者あるあるです。私は鑑定のスキルを持っているので、ステータスボードというものが見えるのです。そこにはその人の属性や加護、魔力のレベルなどが載っています。転生したと気がついた時、ひょっとして見られるかもしれないと、ステータスボードを呼び出してみたら、出てきました」
ステータスボード? 鑑定のスキル? なんじゃそれ?
全くアンネリーゼは訳がわからなすぎて面白い。そのステータスボードには使える魔法属性が書いているのか。
「リーゼ、それって誰のでも見られるの?」
「もちろん。ディーママは火属性、風属性、土属性、それに聖属性。そして魔力は♾️。回復魔法の他に、増強魔法や無効化の魔法など色々なスキルを持っているわ」
♾️? 私の魔力って無限なのか。それなら出して出して出しまくれるな。私は嬉しくてヘラヘラしてしまった。
「私は光属性なんだけど、転生者チートでほとんどの魔法は何となく使えるみたいです。色んなスキルもあるし、グローズクロイツ領の役に立つと思う」
アンネリーゼはシラっと言った。転生者チートってなんだ?
「ねぇ、転生者チートって何?」
私は小声でアンネリーゼに聞いてみた。
「転生してきた者に与えられた、何でもできるチカラみたいなものかな」
アンネリーゼは意味ありげにふふふと笑った。
何だかわからないが、良いものなのだろう。とにかく私達にはやれるチカラがあるのだ。やるしかない。
まずは、グローズクロイツ領改革計画の第一弾、結界増強計画だな。
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結界を張る魔法が使える者達が屋敷に集められた。
いよいよ、始まったな。
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