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9話 披露パーティーは色々あるわね
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朝食を終え、自室に戻った私は、腕捲りをして待ち構えていたメアリー率いる侍女達に捕まった。
「世界一の花嫁にさせていただきます」
みんな気合い十分だ。身包み剥がされ、湯浴みのあとはマッサージ。顔や身体をぎゅうぎゅうされる。いつものマッサージは気持ちいいが今朝のは正直、痛い。リンパを流してむくみを取るらしいが、こんなにぎゅうぎゅうやらないとリンパとやらは流れないのか?
してもらっている時は痛いが、あとはスッキリだった。身体もだが、小さめの顔がより小さくなったような気がする。
そのあとは髪やメイク、ドレスを着せてもらい、出来上がった。
顔合わせの時とは全く違う感じのシンプルなシルエットのドレスだが、立体的なレースモチーフを縫い付け、刺繍で間を埋めている。多分この世に二つとないドレスだろう。
セレナール商会はやっぱり凄いな。こんなドレスをよく作ったもんだわ。
そして、侍女達の努力により、まるで中身とは違う美しい私に変身した。
部屋を出るとアルトゥール様が魂が抜けたような顔で立っていた。
「お待たせいたしました。いかがでしょうか?」
アルトゥール様は無言だ。あれほど言葉を交わすことが大事だと言ったのに。
私はアルトゥール様の鳩尾にパンチを入れた。
ドスッ
「うっ」
アルトゥール様は鳩尾を押さえ、背中を丸める。
「き、綺麗だ。綺麗過ぎて見惚れてしまった」
顔を上げたアルトゥール様は赤い顔でへへへと笑った。
教会に到着した私達は扉を開き中に入る。
婚姻式は領地内の教会で本当に身内だけ招いて行われた。お互いの両親、アルトゥール様の子供達、私の兄と弟達。そして国王夫妻。
もうみんな座っている。
私達は神に夫婦の誓いをした。
神父様が『3度目はありませんよ』と言ったので笑うべきかどうか迷ってしまい、アルトゥール様を見ると、やはり困った顔をしていた。
そんなこんなで式は終わり、領民達を招いた披露パーティーが始まった。色々な人が次から次に挨拶に来る。
貴族だけではなく、平民も多数いる。アルトゥール様は「辺境の地は貴族や平民の垣根はそれほど無い。身分など気にしていては、敵からこの地を守ることは難しい」と言っていた。
ほとんどの領民は招待されているようで、要塞のような屋敷のホールや中庭は人でいっぱいだった。皆喜んでくれているようだ。前の時は王都で式を挙げ、披露パーティーも王都でしたらしい。元奥さんの希望だったそうだが、余程辺境の地が嫌だったのだろうか?
まぁ、今となってはどうでもいいことだな。
「あなたが領主様の後妻様ですのね」
誰だ? なんだか失礼な女だな。真っ赤な露出の多いドレスを着て、派手な化粧をした女が声をかけてきた。
アルトゥール様や近くにいるブルーノ様、コンラート様の顔を見ると、皆、眉をひそめている。
私も怪訝な顔をしていると、女はふっと笑った。
「失礼いたしました。私はクリステル・ハスと申しましす。ハス男爵家の娘ですわ。今はハス商会の仕事をしております。何かご要望の品がございましたら、なんでもお持ちいたしますので、ご贔屓して下さいませ。それではまた」
薄笑いを浮かべたまま下手くそなカーテシーをしてホールに消えていった。
「アル様、今の方は?」
私はアルトゥール様の顔を見た。
「あれは元妻の真実の愛の相手の妻だった女だ」
夫に逃げられた妻か。それにしても胡散臭そうな人だったな。あの薄ら笑いは腹の中真っ黒な感じがした。
「あの女はアルに『夫はあなたの奥さんに唆されて、私達を捨てたのよ。慰謝料を払って頂戴』と言ってきたんです」
アルトゥール様の後ろに控えていたブルーノ様が怒り心頭な様子で私に告げた。
「払ったのですか?」
「まさか、こちらにはあちらの元夫が一緒に逃げようと書いた手紙があったので、出るところに出て、勝ち取りました。あんな女と結婚していたら逃げたくもなるでしょうが、どちらを選んでも大差ない気がしますね」
ブルーノはふんと鼻を鳴らした。
逃げた男は女運がないのかもしれない。でも、本当に真実の愛の相手ならどんな酷い性格であっても受け入れ愛するのだろう。真実の愛って大変だな。
「ディー様、あの女狐には気をつけて下さい」
ブルーノ様が言う。
「大丈夫よ。それよりリーゼやリーンに近づかないように気をつけてほしいわ。リーゼをこれ以上傷つけなくない」
私はアルトゥール様を見た。
「わかった。リーゼとリーンが外出する時には、できるだけ私が一緒に行く。ダメな時はラート、頼む」
「承知」
コンラート様は胸を叩く。
「私もいるわ。私がリーゼとリーンを守ります」
まだ私の力に対して半信半疑なコンラート様とブルーノ様は含み笑いをしている『はいはい分かりました』と言いたげた。まぁ、すぐにわかることだ。
◇◇ ◇
「アルトゥール様、西の森に魔獣が出ました。かなり大量のようです。いかがいたしますか」
パーティーを楽しんでいる私達のところに連絡が入った。
「ディー、こんな日に申し訳ない。西の森に行ってくる」
アルトゥール様は披露パーティーの最中に新妻をほっぽり出して魔獣退治に行くことに申し訳なさを感じているようだ。
「私達、騎士団が行きます。アルはこのままここにいてくれ」
低い声でコンラート様が言う。
「しかし……」
騎士団だけでは心配なのか? アルトゥール様は行きたそうだ。
それなら……。
「私も行きます!」
「ダメだ!」
「ダメと言われても行きます!」
ダメと言われてはいそうですかと引き下がる私だと思っているのか?
話が聞こえたようで、父達が側に来て、アルトゥール様に声をかけた。
「アルトゥール殿、ディーは、はいそうですかと言うことを聞くような人間ではありません。私達も一緒に行きます」
父と兄、すぐ下の弟も参加する気のようだ。
「分かりました。ディー、危なくなったらすぐに逃げるんだ。いいな」
アルトゥール様は私を心配してくれているんだな。嬉しくなる。うちの男達は誰も私の心配なんかしてくれないものね。
私達はパーティーに参加している人に達には気づかれないように中座し、すぐに着替えてエントランスに集まった。
さぁ、初めての魔獣退治だ。やってやろうじゃないの。
「世界一の花嫁にさせていただきます」
みんな気合い十分だ。身包み剥がされ、湯浴みのあとはマッサージ。顔や身体をぎゅうぎゅうされる。いつものマッサージは気持ちいいが今朝のは正直、痛い。リンパを流してむくみを取るらしいが、こんなにぎゅうぎゅうやらないとリンパとやらは流れないのか?
してもらっている時は痛いが、あとはスッキリだった。身体もだが、小さめの顔がより小さくなったような気がする。
そのあとは髪やメイク、ドレスを着せてもらい、出来上がった。
顔合わせの時とは全く違う感じのシンプルなシルエットのドレスだが、立体的なレースモチーフを縫い付け、刺繍で間を埋めている。多分この世に二つとないドレスだろう。
セレナール商会はやっぱり凄いな。こんなドレスをよく作ったもんだわ。
そして、侍女達の努力により、まるで中身とは違う美しい私に変身した。
部屋を出るとアルトゥール様が魂が抜けたような顔で立っていた。
「お待たせいたしました。いかがでしょうか?」
アルトゥール様は無言だ。あれほど言葉を交わすことが大事だと言ったのに。
私はアルトゥール様の鳩尾にパンチを入れた。
ドスッ
「うっ」
アルトゥール様は鳩尾を押さえ、背中を丸める。
「き、綺麗だ。綺麗過ぎて見惚れてしまった」
顔を上げたアルトゥール様は赤い顔でへへへと笑った。
教会に到着した私達は扉を開き中に入る。
婚姻式は領地内の教会で本当に身内だけ招いて行われた。お互いの両親、アルトゥール様の子供達、私の兄と弟達。そして国王夫妻。
もうみんな座っている。
私達は神に夫婦の誓いをした。
神父様が『3度目はありませんよ』と言ったので笑うべきかどうか迷ってしまい、アルトゥール様を見ると、やはり困った顔をしていた。
そんなこんなで式は終わり、領民達を招いた披露パーティーが始まった。色々な人が次から次に挨拶に来る。
貴族だけではなく、平民も多数いる。アルトゥール様は「辺境の地は貴族や平民の垣根はそれほど無い。身分など気にしていては、敵からこの地を守ることは難しい」と言っていた。
ほとんどの領民は招待されているようで、要塞のような屋敷のホールや中庭は人でいっぱいだった。皆喜んでくれているようだ。前の時は王都で式を挙げ、披露パーティーも王都でしたらしい。元奥さんの希望だったそうだが、余程辺境の地が嫌だったのだろうか?
まぁ、今となってはどうでもいいことだな。
「あなたが領主様の後妻様ですのね」
誰だ? なんだか失礼な女だな。真っ赤な露出の多いドレスを着て、派手な化粧をした女が声をかけてきた。
アルトゥール様や近くにいるブルーノ様、コンラート様の顔を見ると、皆、眉をひそめている。
私も怪訝な顔をしていると、女はふっと笑った。
「失礼いたしました。私はクリステル・ハスと申しましす。ハス男爵家の娘ですわ。今はハス商会の仕事をしております。何かご要望の品がございましたら、なんでもお持ちいたしますので、ご贔屓して下さいませ。それではまた」
薄笑いを浮かべたまま下手くそなカーテシーをしてホールに消えていった。
「アル様、今の方は?」
私はアルトゥール様の顔を見た。
「あれは元妻の真実の愛の相手の妻だった女だ」
夫に逃げられた妻か。それにしても胡散臭そうな人だったな。あの薄ら笑いは腹の中真っ黒な感じがした。
「あの女はアルに『夫はあなたの奥さんに唆されて、私達を捨てたのよ。慰謝料を払って頂戴』と言ってきたんです」
アルトゥール様の後ろに控えていたブルーノ様が怒り心頭な様子で私に告げた。
「払ったのですか?」
「まさか、こちらにはあちらの元夫が一緒に逃げようと書いた手紙があったので、出るところに出て、勝ち取りました。あんな女と結婚していたら逃げたくもなるでしょうが、どちらを選んでも大差ない気がしますね」
ブルーノはふんと鼻を鳴らした。
逃げた男は女運がないのかもしれない。でも、本当に真実の愛の相手ならどんな酷い性格であっても受け入れ愛するのだろう。真実の愛って大変だな。
「ディー様、あの女狐には気をつけて下さい」
ブルーノ様が言う。
「大丈夫よ。それよりリーゼやリーンに近づかないように気をつけてほしいわ。リーゼをこれ以上傷つけなくない」
私はアルトゥール様を見た。
「わかった。リーゼとリーンが外出する時には、できるだけ私が一緒に行く。ダメな時はラート、頼む」
「承知」
コンラート様は胸を叩く。
「私もいるわ。私がリーゼとリーンを守ります」
まだ私の力に対して半信半疑なコンラート様とブルーノ様は含み笑いをしている『はいはい分かりました』と言いたげた。まぁ、すぐにわかることだ。
◇◇ ◇
「アルトゥール様、西の森に魔獣が出ました。かなり大量のようです。いかがいたしますか」
パーティーを楽しんでいる私達のところに連絡が入った。
「ディー、こんな日に申し訳ない。西の森に行ってくる」
アルトゥール様は披露パーティーの最中に新妻をほっぽり出して魔獣退治に行くことに申し訳なさを感じているようだ。
「私達、騎士団が行きます。アルはこのままここにいてくれ」
低い声でコンラート様が言う。
「しかし……」
騎士団だけでは心配なのか? アルトゥール様は行きたそうだ。
それなら……。
「私も行きます!」
「ダメだ!」
「ダメと言われても行きます!」
ダメと言われてはいそうですかと引き下がる私だと思っているのか?
話が聞こえたようで、父達が側に来て、アルトゥール様に声をかけた。
「アルトゥール殿、ディーは、はいそうですかと言うことを聞くような人間ではありません。私達も一緒に行きます」
父と兄、すぐ下の弟も参加する気のようだ。
「分かりました。ディー、危なくなったらすぐに逃げるんだ。いいな」
アルトゥール様は私を心配してくれているんだな。嬉しくなる。うちの男達は誰も私の心配なんかしてくれないものね。
私達はパーティーに参加している人に達には気づかれないように中座し、すぐに着替えてエントランスに集まった。
さぁ、初めての魔獣退治だ。やってやろうじゃないの。
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