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フェノバール家のサロンでは

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 西の辺境の地が落ちついたので、私たちは屋敷に戻ってきた。

 屋敷にはリーゼお姉様が来ていた。

「なんだ、久しぶりに魔獣退治に行こうかと思っていたのに、片づいちゃったのね」

 退治って? お姉様は今、妊娠8カ月だ。
 こんな大きなお腹で戦うのだろうか?

「義兄上方、なんとか言ってもらえませんか? リーゼは全く私の言う事を聞かずにうちの鍛錬場で部員たちに稽古をつけてるんですよ」

 エリアスお義兄様は呆れた顔をしてルカ様とジェットお兄様に訴えている。

「無理だよ。リーゼを止められる奴なんていない。強いて言えばママが雷を落とせば止めるかもな」

「無理だろ。ママはこの件には神なは落とさないよ。それにリーゼのお腹の子は剣聖の跡継ぎだから平気だよ」

 ジェットお兄様、しれっと予言?

「予言ですか?」

「予言と言うか神託。上の女の子は剣聖。下の男の子は暗部の方の跡継ぎ。エリアスは左うちわだな」

 ジェットお兄様はそう言いながら部屋から出て行った。

「ほら、ジェットお兄様もああ言ってるし大丈夫よ」

 リーゼお姉様は勝ち誇ったように笑う。こうなったらだれにも止められない。

「ミーナ、俺たちも早く子どもが欲しいな」

 いやいや、まだ結婚してませんが。でも、ジュリアンに会いたいな。

「ルカ様、ジュリアンが来てくれるかしら?」

「ジュリアン? ジュリアンって誰?」

 リーゼお姉様が話に入ってきた。

「ジュリアンは前世の私の息子なんです。私はジュリアンが3歳の時に死んじゃったから、また会いたくて……」

 へ? ふと見ると、リーゼお姉様と今、お菓子を持って入ってきたママが号泣している。

「3歳なんていちばん可愛い時じゃないの。そんな時にいきなりお別れだなんて」

「ほんとほんと、リュカ兄様は再婚しなかったの?」

 ママとリーゼお姉様がルカ様に聞く。

「しねーよ。俺はミーナだけ。ジュリアンは俺とミーナの両親と乳母が育てた。跡を継いで2代目国王になったからな」

 なぜか赤い顔をして消えてしまった。

「ヴィーナ、すぐにジュリアン君に会えそうだね。お腹の中の子と結婚させよう。うん。それがいい」

 リーゼお姉様はまだお腹の中にもいないジュリアンと自分の娘を結婚させようと盛り上がっている。

「とりあえずお菓子食べましょう。リュープリンさんがカロリーを押さえたお菓子を作ってくれたのよ」

 美味しそうなお菓子が並んでいる。

 やっぱりフェノバール家は平和だなぁ。この平和が毎日続くように私は神に祈る。

 ドラマチックなんてもういらないわ。
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