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温度差

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 アデライド様とのお茶会に呼ばれた。女の子の友達が欲しいと言うので、セレスとナディアを連れて行くと、なぜかジェフリー様とヒューイ様がいた。

「ベル、よく来てくれたわね。ありがとう」

 アデライド様は嬉しそうに笑っている。

 私はセレスとナディアを紹介した。

「ふぅ~ん。あなたはグラン辺境伯令嬢なのね。あなたはルブラン侯爵令嬢ね」

 王女はなんだか高飛車だな。

 3人の間に火花が散っているようだ。

「まぁまぁ、3人ともチョコレートはどうかな? 最近王都で流行っている店のチョコレートなんだよ」

 ジェフリー様は睨み合っている3人にチョコレートをすすめる。

「ベルもぜひ食べてみて」

 私はあの日のことがトラウマになっていてチョコレートは食べられない。

「ジェフリー様、私はアレルギーでチョコレートが食べられないのです」

「そうなのか。知らなかった。ヒューイ殿は知っていたのですが?」

「もちろん」

 何で知ってるんだ?

 そもそもアレルギーではないし。

「ベルは私が持ってきたダックワーズを食べればいいよ」

 ヒューイ様は味方だし、安心だ。ダックワーズはサクッとしていて美味しい。

 結局初めてのアデライド王女のお茶会はマウントの取り合いをする王女VSセレス&ナディアの戦いの場となった。

 お茶会がお開きとなり、帰りの馬車を待っているとアデライド様が近寄ってきた。

「やっぱりジェフリー様はベルのことが好きなんだわ。お茶会の間中ずっとベルの側にいてベルに優しくしていたわ。ヒューイ様だってそうよ」

 それはアデライド様がマウント合戦してたからでしょ。

「そんなことはありません。アデライド様の思い違いですわ」

「今度はふたりでお茶会をしましょう。ベル、あなたはお兄様の婚約者なのだからジェフリー様にちょっかいださないでね」

 出してません。

 それより、まだお茶会をするのか。めんどくさいな。

 馬車が到着したので、私は愛想笑いをしながらアデライド様に別れを告げた。


 次の日王太子妃教育でウィル様に会った。

「ベル、昨日のアデライドとのお茶会はどうだった?」

「なかなか大変でしたわ。アデライド様がセレスやナディアにマウントを取ろうとして3人でバチバチ火花を散らしていました」

「それは面白いな」

 他人事だと思って笑っている。


 私は何をしているんだろう?

 ウィル様、ヒューイ様、セレス、みんなそれぞれ復讐にむけていろんなことををしている。

 私は何もしていない。

 それどころか、憎いアデライド様、ジェフリー様、ノバック公爵、父とも普通に接している。

 復讐しなきゃいけないんだけどなぁ。

 そもそも、私に毒入りのチョコレートを食べさせたのは本当にアデライド様だったのだろうか?

 ジェフリー様を自分のものにしたいから私を殺した?

 あの時はそう思ったけど本当にそうなのか?

 元を糺せばグリーデン公爵に行き着くのかもしれないが、私はちゃんと会ったこともない。側妃とだってちゃんと会ったことはない。

 ふたりにアデライド様が私が憎いから殺したいと言ったのだろうか?

 なんかもう復讐なんてめんどくさくなってきた。

 私は殺されなければそれでいい。

 みんなとの温度差がありすぎてね。

 はぁ~。

 私は大きなため息をついた。

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