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【閑話】ウィルヘルムの独白
しおりを挟む*ウィルヘルムは素の時は私ではなく俺になります。
ベルからアデライドが改心したと聞いた。
友達になってと言われたらしい。
甘い。やっぱりベルは甘いな。
セレスを護衛につけているが、わざとアデライドや側妃が接触しやすいように王太子妃教育の時は付き添わせていない。
もちろん影は付けている。
やっとアデライドが引っかかった。
ベルは喜怒哀楽が激しい。普段はうまく隠せているが俺やセレスやヒューイ殿にはすぐわかる。
今回のアデライドのこともマジで喜んでいるようだ。
疑えよ。なんで疑わないんだ?
側妃側もグリーデン公爵の具合が良くなくて焦り出したのだろう。
どの医者もお手上げで原因不明な病だからな。
前の世界の俺と同じ。
俺はグリーデン公爵夫人を仲間に引き込んだ。
夫人は自分を裏切り愛妾を沢山囲っている公爵を恨んでいる。
そして側妃と愛人関係になり、子供を作り、その子供を国王の子と謀ったことに心を悩ませていた。
バレてしまえば国家反逆罪に問われるかもしれない。家はお取り潰しになり、全く関係の無い自分と嫡男にも被害が及ぶ。
あの男のせいでそんな事になったら大変だと思っていた。
俺は秘密裏に夫人に接触し、囁いた。
「公爵は私を亡き者にして、自分の娘のアデライドを女王にし、自分が操ろうとしている。これは国家反逆罪だ。そもそも自分の娘を国王の娘だと騙した時点で国家反逆罪だろう」
夫人は真っ青になり震えている。
「申し訳ございません。私は何も知らなかったのです」
「わかっています。夫人に罪はない。私に協力してもらえませんか。協力していただければ私は何も言いません。アデライドは国王の娘ですよ」
俺が微笑むと夫人は頷いた。
「何でも協力いたします。どうかグリーデン公爵家と嫡男のディックだけは助けてください」
「もちろんです。ディック殿は次期グリーデン公爵になり、我が国を支えていただくつもりです」
俺はグリーデン公爵家を味方につけた。
俺の息のかかった料理人と何人かのメイドをグリーデン家に入れた。
そして前の世界で俺がされたように毎日少しづつ毒を与えた。
即効性のない、緩やかに身体に影響をもたらす毒だ。
毒はヨーセット王国で作っているモノをヒューイ殿経由で手に入れ、料理人に渡し、毎日の食事に入れる。
銀に反応しないように開発した特別な毒だ。
公爵の毒味役の侍女はもちろん俺の手のモノだ。公爵と愛人関係にあるので公爵は信用して側に置いている。
暗部のモノは毒に免疫があるので毒味くらいの少量の毒では全く問題ない。念の為毒消しの薬も飲んでいる。
そしてハニートラップはお手のモノだ。公爵が若い女を求めるたびに次々と暗部の女性を与え、毒で弱った身体を閨事でも弱らせていく。
5年が経ち公爵の身体は緩やかに毒に蝕まれている。あと10年くらいは生きていてもらいたいな。
嫡男は清廉潔白な男だ。野心もない。公爵のように悪事に手を染めることはないだろう。
俺を敵に回すとどうなるか父親を見て知っているからね。
さて、アデライドをどうしようか。このままベルにはアデライドを信用させておいた方が面白いな。
「殿下はひどいですわね。婚約者を囮にするのですか?」
セレスに非難された。
「でも、それが1番手っ取り早いだろう? ベルには影も付けている。ジェフリーにベルを守るように言っておくよ。アデライドが嫉妬するようにね」
「腹黒ですわね」
「王太子だからね。この国を潰すわけにはいかないんだよ」
ベルを危険な目に合わせるつもりはない。
でも囮にはなってもらう。
ベルは優しくて甘いから必要以上に俺達が何をやっているのか情報は与えない。もちろん自分が囮にされているのも気がつかない。
「私もジェフリーと一緒にベルティーユ嬢の側にいるようにしよう」
「あぁ、頼みます。ジェフリーとふたりでベルをチヤホヤしてアデライドを煽って下さい」
「任せてくれ」
ヒューイ殿は頼りになる。
亡くなった侍女の弟を仲間に引き入れ、側妃の側近として近づけている。
弟は側妃に危ない薬を与えている。薬が切れると精神が落ち着かなくなり、イライラするようで側妃は薬をくれる侍女の弟の言いなりになってきている。
目には目を毒には毒を、凌辱にはハニートラップをだ。
そうそうジェフリーはどうやらベルが好きなようだ。
でも根っからの貴族なので今の世界でも王女とベルを二股をかけたいらしい。
だが、ジェフリーがベルに近づこうとしていると、なぜかヒューイ殿が邪魔している。
ノバック公爵とジェフリーを見張るためにノバック家に滞在してもらうことにしたのだが、まさかヒューイ殿がベルに懸想するとは面白い。
復讐が全て終わってからどうするか考えよう。
俺達の復讐は長期戦だ。まだまだ先は長い。気を引き締めて前に進もう。
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