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番外編
自動結界貼付魔道具完成披露会
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アーサー様が自動結界貼付装置という魔道具を開発した。
前々から各辺境の地に定期的に結界を張りに行くのが大変だと魔導士団からリクエストがあり、アーサー様と息子のルイス、そしてシャルが中心となり、フェノバール商会魔道具事業部がやっとのことで商品化に成功した。
価格はかなり高いのだが、国から補助が出る。
早速、辺境の地の中でもいちばん魔獣の被害が多い西の辺境の地に設置されることになり、私達は西の辺境の地に来ている。
「ミディア様、お久しぶりです」
メリーアンさんが私を迎えてくれた。メリーアンさんはフェノバール魔法医療病院の元看護師長で今でも魔法医療学校に特別講師として時々来てくれている。
なぜ、メリーアン様が西の辺境の地にいるかって?
それはね、メリーアン様は4年前にここ辺境の地にお嫁にきたの。今では辺境伯夫人なのです。もちろん西の辺境地魔法医療病院の責任者でもある。
「お久しぶりですっていっても一昨日会ったばかりですけどね」
「確かに打ち合わせで一昨日あったばかりでしたわね」
メリーアン様はふふふと笑う。
「ごめんなさいね。うちの人、相変わらずミディア様が苦手らしくて今日も逃げ回ってるんですよ。ヘタレでしょう?」
ちなみにメリーアン様が言う“うちの人“とはジャック・モダフィニル辺境伯閣下。
リカルド様の親友? みたいな人だ。
私が結婚した頃、ちょっとだけフェノバール領にいた。あの頃ジャック様は心がひん曲がっていたので、当時猪突猛進で真っ直ぐだった私と仲良くなかったのだ。
あれから28年、色々と波に揉まれ、改心して良い人になったらしい。
その頑張りが認められ、復権され、今は辺境伯として日々精進している。
そして、4年前にリカルド様が愛のキューピッドとなり、子供の頃からずっと好きすぎて拗らせまくっていたメリーアン様と50歳を過ぎてからゴールインした。
あの時、メリーアン様に「本当にあんな人と結婚して大丈夫なの?」と聞いたら、「生まれてからの18年はずっと私が寄り添ってきたから、死ぬまでのあと18年はあの人に寄り添ってもらうことにしましたの。毎日こき使いますわ。辺境の医療も気になっていたので、同じ行くなら辺境伯夫人の方が権限もあるし、動きやすいし、動かせやすいでしょ? これからの西の辺境の地は私の独裁政治ですわ」と笑っていた。
リカルド様は「ミディアにはちょっと難しい大人の感情かな」と言う。
私、十分大人なんだけどなぁ。リカルド様にとっては幾つになっても私は子供っぽいらしい。
ジャック様と仲が良くないのは、私だけでなく、このプロジェクトのリーダーのアーサー様もだ。
ただ、辺境伯補佐のジャック様の弟のミゲル様とは同じ年で仲がいいので、今回の辺境の地側の窓口はミゲル様と言うことになった。
「ジャックは相変わらず、ミディアとアーサーが苦手なんだな。また、隠れているのか?」
「はい。兄はミディア様やアーサー様に合わす顔がないと申しておりまして、今日もどこかからこっそり見ていると思います」
ミゲル様もいつもながら呆れている。
「それでは、用意ができましたので、結界の張り方のデモンストレーションをはじめます。皆さんお集まり下さい」
シャルが呼びに来た。
いよいよ、フェノバール商会の新商品、自動結界貼付魔道具の初披露だ。
国境には沢山の人が、一目見ようと集まっていた。
特に東南北の辺境伯代理の方々は興味津々のようだ。
装置自体はさほど大きなものではない。装置についている地図で結界を張る場所を指定し、高さや強度を決めスイッチを押すだけ。
今はまだ現場近くでないと反応できないがいずれは遠隔でもできるようにするつもりだ。
「西の辺境伯夫人のメリーアン・モダフィニル様、スイッチをお願いします」
シャルの呼びかけにメリーアン様は頷きスイッチを押した。
装置から流れるように霧のようなものが溢れ出した。
国境一面に透明だが、存在感のある結界があっという間に張られた。
「あら、こんなに簡単にできちゃうのね。今まで何人もの魔導士の方々にお願いしていたのに。ありがたいわ。でも、魔導士の方はお仕事がへるのではなくて?」
「心配ご無用です。定期的に魔導士が魔力を補充しますので、魔導士の仕事はなくなりません」
ルイスがメリーアン様に説明している。
「実際、魔獣が出たり、攻撃を受けるてみないと、本当に使えるかどうかわからんな」
メリーアン様の後ろからひょっこり顔を出した大きなおじさんがそんなことを言う。
アーサー様は怖い顔になっている。
「あなた! そんなことを言ってせっかくのお祝いムードに水を差さないでくださいませ。全くもう」
メリーアン様はそう言っておじさんの耳を引っ張った。
「皆様、この人の言うことは気にしないでくださいませ。さぁ、あちらにお祝いの席をもうけておりますので、どうか楽しんでください」
おじさんの鳩尾に肘鉄を喰らわしながらメリーアン様はにっこり微笑む。
大きなおじさんはばつが悪そうに頭を掻いている。
「ジャックも幸せそうでよかったな」
リカルド様が嬉しそうにぽつりと呟いた。
前々から各辺境の地に定期的に結界を張りに行くのが大変だと魔導士団からリクエストがあり、アーサー様と息子のルイス、そしてシャルが中心となり、フェノバール商会魔道具事業部がやっとのことで商品化に成功した。
価格はかなり高いのだが、国から補助が出る。
早速、辺境の地の中でもいちばん魔獣の被害が多い西の辺境の地に設置されることになり、私達は西の辺境の地に来ている。
「ミディア様、お久しぶりです」
メリーアンさんが私を迎えてくれた。メリーアンさんはフェノバール魔法医療病院の元看護師長で今でも魔法医療学校に特別講師として時々来てくれている。
なぜ、メリーアン様が西の辺境の地にいるかって?
それはね、メリーアン様は4年前にここ辺境の地にお嫁にきたの。今では辺境伯夫人なのです。もちろん西の辺境地魔法医療病院の責任者でもある。
「お久しぶりですっていっても一昨日会ったばかりですけどね」
「確かに打ち合わせで一昨日あったばかりでしたわね」
メリーアン様はふふふと笑う。
「ごめんなさいね。うちの人、相変わらずミディア様が苦手らしくて今日も逃げ回ってるんですよ。ヘタレでしょう?」
ちなみにメリーアン様が言う“うちの人“とはジャック・モダフィニル辺境伯閣下。
リカルド様の親友? みたいな人だ。
私が結婚した頃、ちょっとだけフェノバール領にいた。あの頃ジャック様は心がひん曲がっていたので、当時猪突猛進で真っ直ぐだった私と仲良くなかったのだ。
あれから28年、色々と波に揉まれ、改心して良い人になったらしい。
その頑張りが認められ、復権され、今は辺境伯として日々精進している。
そして、4年前にリカルド様が愛のキューピッドとなり、子供の頃からずっと好きすぎて拗らせまくっていたメリーアン様と50歳を過ぎてからゴールインした。
あの時、メリーアン様に「本当にあんな人と結婚して大丈夫なの?」と聞いたら、「生まれてからの18年はずっと私が寄り添ってきたから、死ぬまでのあと18年はあの人に寄り添ってもらうことにしましたの。毎日こき使いますわ。辺境の医療も気になっていたので、同じ行くなら辺境伯夫人の方が権限もあるし、動きやすいし、動かせやすいでしょ? これからの西の辺境の地は私の独裁政治ですわ」と笑っていた。
リカルド様は「ミディアにはちょっと難しい大人の感情かな」と言う。
私、十分大人なんだけどなぁ。リカルド様にとっては幾つになっても私は子供っぽいらしい。
ジャック様と仲が良くないのは、私だけでなく、このプロジェクトのリーダーのアーサー様もだ。
ただ、辺境伯補佐のジャック様の弟のミゲル様とは同じ年で仲がいいので、今回の辺境の地側の窓口はミゲル様と言うことになった。
「ジャックは相変わらず、ミディアとアーサーが苦手なんだな。また、隠れているのか?」
「はい。兄はミディア様やアーサー様に合わす顔がないと申しておりまして、今日もどこかからこっそり見ていると思います」
ミゲル様もいつもながら呆れている。
「それでは、用意ができましたので、結界の張り方のデモンストレーションをはじめます。皆さんお集まり下さい」
シャルが呼びに来た。
いよいよ、フェノバール商会の新商品、自動結界貼付魔道具の初披露だ。
国境には沢山の人が、一目見ようと集まっていた。
特に東南北の辺境伯代理の方々は興味津々のようだ。
装置自体はさほど大きなものではない。装置についている地図で結界を張る場所を指定し、高さや強度を決めスイッチを押すだけ。
今はまだ現場近くでないと反応できないがいずれは遠隔でもできるようにするつもりだ。
「西の辺境伯夫人のメリーアン・モダフィニル様、スイッチをお願いします」
シャルの呼びかけにメリーアン様は頷きスイッチを押した。
装置から流れるように霧のようなものが溢れ出した。
国境一面に透明だが、存在感のある結界があっという間に張られた。
「あら、こんなに簡単にできちゃうのね。今まで何人もの魔導士の方々にお願いしていたのに。ありがたいわ。でも、魔導士の方はお仕事がへるのではなくて?」
「心配ご無用です。定期的に魔導士が魔力を補充しますので、魔導士の仕事はなくなりません」
ルイスがメリーアン様に説明している。
「実際、魔獣が出たり、攻撃を受けるてみないと、本当に使えるかどうかわからんな」
メリーアン様の後ろからひょっこり顔を出した大きなおじさんがそんなことを言う。
アーサー様は怖い顔になっている。
「あなた! そんなことを言ってせっかくのお祝いムードに水を差さないでくださいませ。全くもう」
メリーアン様はそう言っておじさんの耳を引っ張った。
「皆様、この人の言うことは気にしないでくださいませ。さぁ、あちらにお祝いの席をもうけておりますので、どうか楽しんでください」
おじさんの鳩尾に肘鉄を喰らわしながらメリーアン様はにっこり微笑む。
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