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番外編
神様お願い
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レベッカさんに案内されて仕事場に行くとたくさんの女性達が仕事をしていた。
「ソフィアさんはどの方ですか?」
私が小声で聞くと、レベッカさんは奥の方に目をやる。
「いちばん奥にいるあのブロンドの髪の人です」
ソフィアさんはブロンドの長い髪を後ろでひとつに束ねている。細くて薄幸そうな女性に見えた。
「話をしてみますか?」
レベッカさんに聞かれた。
「はい」
「ダメですよ姉上。見るだけです」
ロバートに叱られたが無視だ。
「ここではなんなので別の部屋でもよろしいですか?」
「そうですね。では、元の部屋にしましょうか。ソフィアさんを連れてきますね」
私達が元の部屋に戻るとレイチェルが来ていた。
「気になって、家で待ってられなくて来ててしまいました」
「まったく、姉上にも君も……」
ロバートが文句を言おうとしたので遮った。
「レイチェルが来てくれて良かったわ。今からソフィアさんと話をしようと思うの。レイチェルがいた方がソフィアさんも話しやすいだろうから呼ぼうと思っていたの。以心伝心ね」
「良かった~」
レイチェルは私に叱られるかと思っていたらしい。
叱るわけなんかないじゃない。
コンコン
「失礼します」
レベッカさんに連れられたソフィアさんが入ってきた。
ソフィアさんは私達を見て驚いている。
「ソフィア、こちらはロバートのお姉様のミディアローズ様。フェノバール公爵夫人よ」
「ソフィアさん、お会いできて嬉しいわ」
ソフィアさんは戸惑っているようだ。
「ソフィアと申します」
決めた!
ソフィアさんが目の前に立った瞬間そう思った。
私は怖がらせないように優しく微笑んだ。
「ソフィアさん、あなたに縁談を持ってきたの。持ってきたと言うか、命令ね。領主夫人命令です。断る事はできないわよ」
「姉上!」
「お義姉様」
もうこの人しかいない。私は腹を括った。
「ソフィアさん、お掛けになってね」
私は椅子をすすめた。
「もったいのうございます」
「何言ってるの。私あなたに一目惚れしたの。義弟のお嫁さんにしたいの。結婚しても刺繍の仕事はつづけても構わないわ。義弟は筋脳だけど良い子よ」
ソフィアさんは困った顔をしている。
「ソフィア、私喋っちゃったの。ごめんね。お義姉様もロバート様も本当の事を知っているの。もう、いいでしょ?」
レイチェルがソフィアさんの前に出て跪く。
「私ずっと後悔してたの。あの時私が本当の事をロバート様とアンソニー様に話していたら、ソフィアはあんな目に遭わずに済んだのに、きっとふたりはなんとかしてくれたわ。あなたもアンソニー様と幸せになれたのに、私だけ幸せになってしまったわ。アンソニー様はずっとあなたを思っていて独身だし、あなたは嫁ぎ先で虐げられてた。私が悪いのよ……」
レイチェルは涙を流している。
「ごめんなさい。私が黙っていてとお願いしたばかりにあなたに辛い思いをさせてしまっていたのね。知らなかった。レイチェルは何も悪くないのに。ごめんなさい」
ソフィアさんもレイチェルの手を握り泣いている。
幸せにならなきゃダメだ。私が絶対幸せにする。
ソフィアさんが幸せになるように神様に祈ろう。幸せにしなかったら神様だって許さない。ジェットに頼んで神様に会わせてもらって締め上げてやる。
神様! ソフィアさんを幸せにして下さい。
しないと許さないから。
「ソフィアさんはどの方ですか?」
私が小声で聞くと、レベッカさんは奥の方に目をやる。
「いちばん奥にいるあのブロンドの髪の人です」
ソフィアさんはブロンドの長い髪を後ろでひとつに束ねている。細くて薄幸そうな女性に見えた。
「話をしてみますか?」
レベッカさんに聞かれた。
「はい」
「ダメですよ姉上。見るだけです」
ロバートに叱られたが無視だ。
「ここではなんなので別の部屋でもよろしいですか?」
「そうですね。では、元の部屋にしましょうか。ソフィアさんを連れてきますね」
私達が元の部屋に戻るとレイチェルが来ていた。
「気になって、家で待ってられなくて来ててしまいました」
「まったく、姉上にも君も……」
ロバートが文句を言おうとしたので遮った。
「レイチェルが来てくれて良かったわ。今からソフィアさんと話をしようと思うの。レイチェルがいた方がソフィアさんも話しやすいだろうから呼ぼうと思っていたの。以心伝心ね」
「良かった~」
レイチェルは私に叱られるかと思っていたらしい。
叱るわけなんかないじゃない。
コンコン
「失礼します」
レベッカさんに連れられたソフィアさんが入ってきた。
ソフィアさんは私達を見て驚いている。
「ソフィア、こちらはロバートのお姉様のミディアローズ様。フェノバール公爵夫人よ」
「ソフィアさん、お会いできて嬉しいわ」
ソフィアさんは戸惑っているようだ。
「ソフィアと申します」
決めた!
ソフィアさんが目の前に立った瞬間そう思った。
私は怖がらせないように優しく微笑んだ。
「ソフィアさん、あなたに縁談を持ってきたの。持ってきたと言うか、命令ね。領主夫人命令です。断る事はできないわよ」
「姉上!」
「お義姉様」
もうこの人しかいない。私は腹を括った。
「ソフィアさん、お掛けになってね」
私は椅子をすすめた。
「もったいのうございます」
「何言ってるの。私あなたに一目惚れしたの。義弟のお嫁さんにしたいの。結婚しても刺繍の仕事はつづけても構わないわ。義弟は筋脳だけど良い子よ」
ソフィアさんは困った顔をしている。
「ソフィア、私喋っちゃったの。ごめんね。お義姉様もロバート様も本当の事を知っているの。もう、いいでしょ?」
レイチェルがソフィアさんの前に出て跪く。
「私ずっと後悔してたの。あの時私が本当の事をロバート様とアンソニー様に話していたら、ソフィアはあんな目に遭わずに済んだのに、きっとふたりはなんとかしてくれたわ。あなたもアンソニー様と幸せになれたのに、私だけ幸せになってしまったわ。アンソニー様はずっとあなたを思っていて独身だし、あなたは嫁ぎ先で虐げられてた。私が悪いのよ……」
レイチェルは涙を流している。
「ごめんなさい。私が黙っていてとお願いしたばかりにあなたに辛い思いをさせてしまっていたのね。知らなかった。レイチェルは何も悪くないのに。ごめんなさい」
ソフィアさんもレイチェルの手を握り泣いている。
幸せにならなきゃダメだ。私が絶対幸せにする。
ソフィアさんが幸せになるように神様に祈ろう。幸せにしなかったら神様だって許さない。ジェットに頼んで神様に会わせてもらって締め上げてやる。
神様! ソフィアさんを幸せにして下さい。
しないと許さないから。
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