上 下
116 / 161
番外編

神様お願い

しおりを挟む
 レベッカさんに案内されて仕事場に行くとたくさんの女性達が仕事をしていた。

「ソフィアさんはどの方ですか?」

 私が小声で聞くと、レベッカさんは奥の方に目をやる。

「いちばん奥にいるあのブロンドの髪の人です」

 ソフィアさんはブロンドの長い髪を後ろでひとつに束ねている。細くて薄幸そうな女性に見えた。

「話をしてみますか?」

 レベッカさんに聞かれた。

「はい」

「ダメですよ姉上。見るだけです」

 ロバートに叱られたが無視だ。

「ここではなんなので別の部屋でもよろしいですか?」

「そうですね。では、元の部屋にしましょうか。ソフィアさんを連れてきますね」

 私達が元の部屋に戻るとレイチェルが来ていた。

「気になって、家で待ってられなくて来ててしまいました」

「まったく、姉上にも君も……」

 ロバートが文句を言おうとしたので遮った。

「レイチェルが来てくれて良かったわ。今からソフィアさんと話をしようと思うの。レイチェルがいた方がソフィアさんも話しやすいだろうから呼ぼうと思っていたの。以心伝心ね」

「良かった~」

 レイチェルは私に叱られるかと思っていたらしい。

 叱るわけなんかないじゃない。

コンコン

「失礼します」

 レベッカさんに連れられたソフィアさんが入ってきた。

 ソフィアさんは私達を見て驚いている。

「ソフィア、こちらはロバートのお姉様のミディアローズ様。フェノバール公爵夫人よ」

「ソフィアさん、お会いできて嬉しいわ」

 ソフィアさんは戸惑っているようだ。

「ソフィアと申します」

 決めた!

 ソフィアさんが目の前に立った瞬間そう思った。

 私は怖がらせないように優しく微笑んだ。

「ソフィアさん、あなたに縁談を持ってきたの。持ってきたと言うか、命令ね。領主夫人命令です。断る事はできないわよ」

「姉上!」

「お義姉様」

 もうこの人しかいない。私は腹を括った。


「ソフィアさん、お掛けになってね」

 私は椅子をすすめた。

「もったいのうございます」

「何言ってるの。私あなたに一目惚れしたの。義弟のお嫁さんにしたいの。結婚しても刺繍の仕事はつづけても構わないわ。義弟は筋脳だけど良い子よ」

 ソフィアさんは困った顔をしている。

「ソフィア、私喋っちゃったの。ごめんね。お義姉様もロバート様も本当の事を知っているの。もう、いいでしょ?」

 レイチェルがソフィアさんの前に出て跪く。

「私ずっと後悔してたの。あの時私が本当の事をロバート様とアンソニー様に話していたら、ソフィアはあんな目に遭わずに済んだのに、きっとふたりはなんとかしてくれたわ。あなたもアンソニー様と幸せになれたのに、私だけ幸せになってしまったわ。アンソニー様はずっとあなたを思っていて独身だし、あなたは嫁ぎ先で虐げられてた。私が悪いのよ……」

 レイチェルは涙を流している。

「ごめんなさい。私が黙っていてとお願いしたばかりにあなたに辛い思いをさせてしまっていたのね。知らなかった。レイチェルは何も悪くないのに。ごめんなさい」

 ソフィアさんもレイチェルの手を握り泣いている。

 幸せにならなきゃダメだ。私が絶対幸せにする。

 ソフィアさんが幸せになるように神様に祈ろう。幸せにしなかったら神様だって許さない。ジェットに頼んで神様に会わせてもらって締め上げてやる。

 神様! ソフィアさんを幸せにして下さい。

 しないと許さないから。



しおりを挟む
感想 533

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

彼が愛した王女はもういない

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。 どちらも叶わない恋をした――はずだった。 ※関連作がありますが、これのみで読めます。 ※全11話です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。