93 / 161
番外編
色んな人生があるのね
しおりを挟む
「メリーアン嬢が来てくれることになってよかったな」
視察から戻ってきたリカルド様が私の肩をポンと叩く。
ジェットから念話で聞いたのかな?
「そうそう、メリーアン様とメグ先生は従姉妹だったの。長い間音信不通だったらしく、ふたりとも喜んでいましたわ」
「そうだね。ふたりとも色々あったからね」
リカルド様は知っていたのか? 色々あったって?
「メグ先生はもともと侯爵令嬢だったんだ。私よりひとつ年上で婚約者候補だったんだ」
驚いた。そんなこと今の今まで知らなかった。
リカルド様は話を続ける。
「先に他の人と婚約が決まってね、私の婚約者候補から降りたんだ。10歳くらいだったかな」
「離縁したと仰ってました」
「うん。子供ができなくて実家に帰されたと聞いている。義両親や夫に酷い目に合わされたようで、母が憤慨していたよ」
「王妃様が?」
「うん。メグ先生の母上と母が友達なんだ。離縁してから、しばらく侯爵家でのんびりしていたけど、自立したいと母に相談に来て、母が医師になることを薦めたんだ」
やっぱり王妃様は頼りになるなぁ。
「メグ先生とメリーアン嬢は従姉妹だし、メリーアン嬢がこちらに戻って来ても安心だな」
「そうですわね」
リカルド様は嬉しそうだ。
「チャーリーとは大丈夫だった? 辛そうじゃなかった?」
メリーアン様の事を心配しているんだな。
「大丈夫みたいでしたよ。チャーリー先生には何もされていないと仰ってました」
「確かに直接は何もしていないが、私もチャーリーもメリーアン嬢をあんな目に合わせた側だからね」
それでリカルド様はメリーアン様に会わないようにしているのか。なんだかんだ理由をつけて顔を合わさないようにしている。
「メリーアン様はもう気にされていないようでしたよ。リカルド様ももういいのではないですか? 機会があれば逃げないでメリーアン様に会ってみては?」
「そうだな。私は逃げてばかりいるな」
もうすっかり、回復したと思っていたが、まだ心の隅っこにあの時のことがこびりついているようだ。きっとメリーアン様もチャーリー様もそうなのだろう。大人だから顔に出さないだけなんだな。
「そういえば、メグ先生の元夫はそのあと再婚したが結局子供に恵まれなくて分家筋から養子をとったよ。原因はメグ先生ではなく、夫の方だったんだな。貴族は男中心だから虐げられている夫人も多い。メグ先生がそんな夫人達を支援しているのは自分と重なっているんだろうな」
メグ先生はそんなことをしているのか?
知らなかった。
「知らなかったですわ。なんで教えてくれなかったのですか?」
私はちょっと怒ったようにリカルド様を睨んだ。
「えっ? 本当に? 知っていると思っていたよ」
「私も応援したいです」
「うん。メグ先生喜ぶと思うよ。フェノバール領に逃げて来ればいい。悪意のある者は入れないからね」
リカルド様、グッドアイデアだ。
「では、早速メグ先生に会いに行って来ます」
私は移動魔法で王都にあるメグ先生の病院に飛ぼうとしたが、リカルド様に腕を掴まれた。
「だめだよ。今日は久しぶりにふたりでゆっくりできるのに。ゆっくりしよう。メグ先生のところには前触れを出して、明日にでも行けばいい」
そう言うと、リカルド様は私を抱き上げた。
「お姫様、今日はふたりでしっぽりしよう」
しっぽりって何?
え? え? え?
視察から戻ってきたリカルド様が私の肩をポンと叩く。
ジェットから念話で聞いたのかな?
「そうそう、メリーアン様とメグ先生は従姉妹だったの。長い間音信不通だったらしく、ふたりとも喜んでいましたわ」
「そうだね。ふたりとも色々あったからね」
リカルド様は知っていたのか? 色々あったって?
「メグ先生はもともと侯爵令嬢だったんだ。私よりひとつ年上で婚約者候補だったんだ」
驚いた。そんなこと今の今まで知らなかった。
リカルド様は話を続ける。
「先に他の人と婚約が決まってね、私の婚約者候補から降りたんだ。10歳くらいだったかな」
「離縁したと仰ってました」
「うん。子供ができなくて実家に帰されたと聞いている。義両親や夫に酷い目に合わされたようで、母が憤慨していたよ」
「王妃様が?」
「うん。メグ先生の母上と母が友達なんだ。離縁してから、しばらく侯爵家でのんびりしていたけど、自立したいと母に相談に来て、母が医師になることを薦めたんだ」
やっぱり王妃様は頼りになるなぁ。
「メグ先生とメリーアン嬢は従姉妹だし、メリーアン嬢がこちらに戻って来ても安心だな」
「そうですわね」
リカルド様は嬉しそうだ。
「チャーリーとは大丈夫だった? 辛そうじゃなかった?」
メリーアン様の事を心配しているんだな。
「大丈夫みたいでしたよ。チャーリー先生には何もされていないと仰ってました」
「確かに直接は何もしていないが、私もチャーリーもメリーアン嬢をあんな目に合わせた側だからね」
それでリカルド様はメリーアン様に会わないようにしているのか。なんだかんだ理由をつけて顔を合わさないようにしている。
「メリーアン様はもう気にされていないようでしたよ。リカルド様ももういいのではないですか? 機会があれば逃げないでメリーアン様に会ってみては?」
「そうだな。私は逃げてばかりいるな」
もうすっかり、回復したと思っていたが、まだ心の隅っこにあの時のことがこびりついているようだ。きっとメリーアン様もチャーリー様もそうなのだろう。大人だから顔に出さないだけなんだな。
「そういえば、メグ先生の元夫はそのあと再婚したが結局子供に恵まれなくて分家筋から養子をとったよ。原因はメグ先生ではなく、夫の方だったんだな。貴族は男中心だから虐げられている夫人も多い。メグ先生がそんな夫人達を支援しているのは自分と重なっているんだろうな」
メグ先生はそんなことをしているのか?
知らなかった。
「知らなかったですわ。なんで教えてくれなかったのですか?」
私はちょっと怒ったようにリカルド様を睨んだ。
「えっ? 本当に? 知っていると思っていたよ」
「私も応援したいです」
「うん。メグ先生喜ぶと思うよ。フェノバール領に逃げて来ればいい。悪意のある者は入れないからね」
リカルド様、グッドアイデアだ。
「では、早速メグ先生に会いに行って来ます」
私は移動魔法で王都にあるメグ先生の病院に飛ぼうとしたが、リカルド様に腕を掴まれた。
「だめだよ。今日は久しぶりにふたりでゆっくりできるのに。ゆっくりしよう。メグ先生のところには前触れを出して、明日にでも行けばいい」
そう言うと、リカルド様は私を抱き上げた。
「お姫様、今日はふたりでしっぽりしよう」
しっぽりって何?
え? え? え?
37
お気に入りに追加
6,816
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。