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ミディア目覚める
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私が事の顛末を聞いたのは全てが終わったあとだった。
私が記憶しているのは旅の人? に地図を見せられて道を聞かれたこと。その時なんだか背中に熱い痛みを感じたけど目が覚めたら寝台で寝ていた。
リカルド様は寝台の横に置いた椅子に座り私の手を握っている。
「目が覚めた。辛いところはないか?」
「はい、全く。私はどうしてここに?」
リカルド様が話してくれた事は衝撃だった。
私が寝てる間にリュカとメアリーが誘拐されていて、そしてもう助け出されたなんて。
しかもその時に私は背中を刺された?
そうだ赤ちゃんは?
「リカルド様、お腹の赤ちゃんは?」
「元気だよ」
良かった。リュカもメアリーも無事だったし、誰も何もなくて本当によかった。
しかし、誰が私を殺そうとし、リュカを誘拐したのだろう?
やらかしは多々あるがそこまで恨まれていたなんてなんだかショックだった。
「犯人は誰なんですか?」
「メンドン家の元令嬢だ」
「メンドン家?」
「以前は公爵家だったが、今は領地なしの男爵だ。メンドン家は不正や犯罪が表に出て当時の当主は罰せられ。今は息子が跡を継いでいる」
そうだったのか。全く知らなかった。
確かデビュタントの時に私があの令嬢に文句を言ったのは覚えてる。
その後はクリストファー殿下に文句を言っていたからあの令嬢のことなんかすっかり忘れていた。
「あの時は令嬢は罰を受けたのですか?」
私の問いにリカルド様はちょっと呆れた顔をした。
「知らないの?」
「はい。興味がないので」
ため息をつかれた。
「全くミディアはもう。まぁ、そんなとこも好きだけど」
リカルド様はそう言いながら私の頬に手をやる。
「あの女は廃籍されて平民になって修道院に入れられた」
あいつは修道女なんて無理だ。あの傲慢なやつが神に仕え質素な暮らしなんてするわけがない。
「そこから逃げたのですか?」
「うん、逃げた。逆恨みだ」
「私のせいでリュカに怖い思いをさせてしまいました。リュカは大丈夫ですか。このことがトラウマにならなければいいけど」
私の言葉にリカルド様は苦笑している。
リュカは本当に大丈夫なのかな? 夜泣きが酷くなったりしないかな。
まだ赤ちゃんだから覚えてないといいな。でも怖い思いもしたと思う。リュカごめんね。ママが恨まれたばっかりに。
「心配しなくていい。リュカは大丈夫だ」
リカルド様が言い切る。
「リュカに会いたいです」
「わかった。リュカの部屋に行こう」
私はリカルド様の手を借りて起き上がった。寝台から降りようとしたら、抱き上げられた。
「歩けます」
「だめ。回復魔法で治ってるとはいえ、あれ程の怪我だったんだ。無理はしないでくれ」
いえいえ、全く無理なんてしてないんですけど。
私はリカルド様に抱っこされた状態でリュカの部屋に行った。
部屋にはメアリーもいた。
「ミディア様~、申し訳ございません。私がついていながら……」
メアリーは号泣している。
「大丈夫よ。メアリーも怖い思いをしたでしょう。ごめんなさいね」
「いえいえ、私は後ろから薬物を嗅がされ、気がついたらリュカ様とこの屋敷に戻っていました。薬が強かったのか全く記憶が無いのです。ミディア様が倒れて、リュカ様が大きなくお声で泣かれているのは覚えているのですが」
「薬物の副作用があるかもしれないからチャーリー先生にちゃんと診てもらわないとダメよ」
私はそう言いながら、メアリーの肩に手を乗せた。
そして、リュカのベビーベッドに目をやる。
リュカはすやすや眠っているようだ。
「先程まで起きていらしたのですが、今はよく眠っていらっしゃいます」
メアリーが言う。
リュカの寝顔を見ていると、こんな可愛い、か弱い赤ちゃんを誘拐するなんてなんで奴らだ。しかも私を殺そうとするなんて! 腹が立ってきた。
「犯人はどうなったのですか? また修道院ですか?」
修道院なんてダメだ。もっと厳しい刑を与えなきゃ。
「労働刑になるだろう。多分北の辺境の地での労働になる」
北の辺境の地か。まぁ、私の大事な可愛いリュカを誘拐して怖い思いをさせたんだ。北の辺境の地でしっかり働いてもらおう。寒さが厳し過ぎて、しかも空気が薄いので、刑を終えて戻る人はほぼほぼいないと聞く。
まぁ、自業自得だわね。あの令嬢を恨んでる人は沢山いる。公爵令嬢だったから申し出る事ができなくて泣き寝入りしていた人も多い。平民になったと知ったらきっと報復もあるだろう。
しかし、なんであんなに選民思想が強くて傲慢だったのだろう? クリストファー殿下の婚約者になるために候補の令嬢たちや家門を陥れたと聞いた。
誰かを貶めて自分の望みを叶えようなんて絶対ダメだ。今までやったことと向き合って改心したらいいけどな。
「改心したらいいけど、改心できない奴もいるからね」
リカルド様がそんなことを言うなんて珍しい。
リカルド様はいつも「人は全て生まれた時は善だ。誠心誠意話せばきっとわかってくれる日が来る。いつからでもやり直せる」と言っていたのに。
確かにあの令嬢は無理だな。北の辺境の地で過酷な労働をしながらまた私を恨むのだろう。
私はリカルド様に降ろしてもらい、ベビーベッドの側に行き、眠っているリュカの頬に手を置いた。
ふくふくした薔薇色の頬。可愛い。リカルド様と同じブロンドの髪を撫でる。
リュカを害する者は許さない。リュカは私が守る。生まれてくる子供も私が守る。もっと強くならないと。
「リュカは強いからミディアが責任を感じなくてもいいんだよ。ミディアは無理をしないでいつも笑っていてくれればいい。ミディアが幸せでいつも笑っていることがリュカと私の願いだよ」
リカルド様はそう言って後ろから私を抱きしめた。
リュカが強い? きっと言葉のあやだろう。
「リカルド様、あの人が北の辺境の地に行く前に会いたいです」
「ダメだよ。あんな女に会わなくていい」
「ふぎゃ~」
リュカが急に目を覚まして泣き出した。
リカルド様はリュカと何か話しているようだ。
「リュカも会わなくていいっていってる」
私はリュカを抱き上げた。
リュカは私の顔を見て笑っている。
「リュカ、ごめんね。ママのせいで。怖かったね」
リュカは首を左右に振る。
「怖くなかったの?」
今度はコクンと頷いた。
「ミディア様、リュカ様は天才ですね。ミディア様の言葉がちゃんとわかるんですね」
メアリーの声がうわずっている。
リュカは健気だわ。本当は怖かったはずなのに。
本当に怖かったのはリュカではなく犯人たちなのにとリカルド様が思っていたことをその時の私は知る由もなかった。
*ミディアはリュカを普通の赤ちゃんだと思っています。か弱い赤ちゃんと聞いてリカルドが笑いそうになったとかならなかったとか……。
私が記憶しているのは旅の人? に地図を見せられて道を聞かれたこと。その時なんだか背中に熱い痛みを感じたけど目が覚めたら寝台で寝ていた。
リカルド様は寝台の横に置いた椅子に座り私の手を握っている。
「目が覚めた。辛いところはないか?」
「はい、全く。私はどうしてここに?」
リカルド様が話してくれた事は衝撃だった。
私が寝てる間にリュカとメアリーが誘拐されていて、そしてもう助け出されたなんて。
しかもその時に私は背中を刺された?
そうだ赤ちゃんは?
「リカルド様、お腹の赤ちゃんは?」
「元気だよ」
良かった。リュカもメアリーも無事だったし、誰も何もなくて本当によかった。
しかし、誰が私を殺そうとし、リュカを誘拐したのだろう?
やらかしは多々あるがそこまで恨まれていたなんてなんだかショックだった。
「犯人は誰なんですか?」
「メンドン家の元令嬢だ」
「メンドン家?」
「以前は公爵家だったが、今は領地なしの男爵だ。メンドン家は不正や犯罪が表に出て当時の当主は罰せられ。今は息子が跡を継いでいる」
そうだったのか。全く知らなかった。
確かデビュタントの時に私があの令嬢に文句を言ったのは覚えてる。
その後はクリストファー殿下に文句を言っていたからあの令嬢のことなんかすっかり忘れていた。
「あの時は令嬢は罰を受けたのですか?」
私の問いにリカルド様はちょっと呆れた顔をした。
「知らないの?」
「はい。興味がないので」
ため息をつかれた。
「全くミディアはもう。まぁ、そんなとこも好きだけど」
リカルド様はそう言いながら私の頬に手をやる。
「あの女は廃籍されて平民になって修道院に入れられた」
あいつは修道女なんて無理だ。あの傲慢なやつが神に仕え質素な暮らしなんてするわけがない。
「そこから逃げたのですか?」
「うん、逃げた。逆恨みだ」
「私のせいでリュカに怖い思いをさせてしまいました。リュカは大丈夫ですか。このことがトラウマにならなければいいけど」
私の言葉にリカルド様は苦笑している。
リュカは本当に大丈夫なのかな? 夜泣きが酷くなったりしないかな。
まだ赤ちゃんだから覚えてないといいな。でも怖い思いもしたと思う。リュカごめんね。ママが恨まれたばっかりに。
「心配しなくていい。リュカは大丈夫だ」
リカルド様が言い切る。
「リュカに会いたいです」
「わかった。リュカの部屋に行こう」
私はリカルド様の手を借りて起き上がった。寝台から降りようとしたら、抱き上げられた。
「歩けます」
「だめ。回復魔法で治ってるとはいえ、あれ程の怪我だったんだ。無理はしないでくれ」
いえいえ、全く無理なんてしてないんですけど。
私はリカルド様に抱っこされた状態でリュカの部屋に行った。
部屋にはメアリーもいた。
「ミディア様~、申し訳ございません。私がついていながら……」
メアリーは号泣している。
「大丈夫よ。メアリーも怖い思いをしたでしょう。ごめんなさいね」
「いえいえ、私は後ろから薬物を嗅がされ、気がついたらリュカ様とこの屋敷に戻っていました。薬が強かったのか全く記憶が無いのです。ミディア様が倒れて、リュカ様が大きなくお声で泣かれているのは覚えているのですが」
「薬物の副作用があるかもしれないからチャーリー先生にちゃんと診てもらわないとダメよ」
私はそう言いながら、メアリーの肩に手を乗せた。
そして、リュカのベビーベッドに目をやる。
リュカはすやすや眠っているようだ。
「先程まで起きていらしたのですが、今はよく眠っていらっしゃいます」
メアリーが言う。
リュカの寝顔を見ていると、こんな可愛い、か弱い赤ちゃんを誘拐するなんてなんで奴らだ。しかも私を殺そうとするなんて! 腹が立ってきた。
「犯人はどうなったのですか? また修道院ですか?」
修道院なんてダメだ。もっと厳しい刑を与えなきゃ。
「労働刑になるだろう。多分北の辺境の地での労働になる」
北の辺境の地か。まぁ、私の大事な可愛いリュカを誘拐して怖い思いをさせたんだ。北の辺境の地でしっかり働いてもらおう。寒さが厳し過ぎて、しかも空気が薄いので、刑を終えて戻る人はほぼほぼいないと聞く。
まぁ、自業自得だわね。あの令嬢を恨んでる人は沢山いる。公爵令嬢だったから申し出る事ができなくて泣き寝入りしていた人も多い。平民になったと知ったらきっと報復もあるだろう。
しかし、なんであんなに選民思想が強くて傲慢だったのだろう? クリストファー殿下の婚約者になるために候補の令嬢たちや家門を陥れたと聞いた。
誰かを貶めて自分の望みを叶えようなんて絶対ダメだ。今までやったことと向き合って改心したらいいけどな。
「改心したらいいけど、改心できない奴もいるからね」
リカルド様がそんなことを言うなんて珍しい。
リカルド様はいつも「人は全て生まれた時は善だ。誠心誠意話せばきっとわかってくれる日が来る。いつからでもやり直せる」と言っていたのに。
確かにあの令嬢は無理だな。北の辺境の地で過酷な労働をしながらまた私を恨むのだろう。
私はリカルド様に降ろしてもらい、ベビーベッドの側に行き、眠っているリュカの頬に手を置いた。
ふくふくした薔薇色の頬。可愛い。リカルド様と同じブロンドの髪を撫でる。
リュカを害する者は許さない。リュカは私が守る。生まれてくる子供も私が守る。もっと強くならないと。
「リュカは強いからミディアが責任を感じなくてもいいんだよ。ミディアは無理をしないでいつも笑っていてくれればいい。ミディアが幸せでいつも笑っていることがリュカと私の願いだよ」
リカルド様はそう言って後ろから私を抱きしめた。
リュカが強い? きっと言葉のあやだろう。
「リカルド様、あの人が北の辺境の地に行く前に会いたいです」
「ダメだよ。あんな女に会わなくていい」
「ふぎゃ~」
リュカが急に目を覚まして泣き出した。
リカルド様はリュカと何か話しているようだ。
「リュカも会わなくていいっていってる」
私はリュカを抱き上げた。
リュカは私の顔を見て笑っている。
「リュカ、ごめんね。ママのせいで。怖かったね」
リュカは首を左右に振る。
「怖くなかったの?」
今度はコクンと頷いた。
「ミディア様、リュカ様は天才ですね。ミディア様の言葉がちゃんとわかるんですね」
メアリーの声がうわずっている。
リュカは健気だわ。本当は怖かったはずなのに。
本当に怖かったのはリュカではなく犯人たちなのにとリカルド様が思っていたことをその時の私は知る由もなかった。
*ミディアはリュカを普通の赤ちゃんだと思っています。か弱い赤ちゃんと聞いてリカルドが笑いそうになったとかならなかったとか……。
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