魅了が解けた元王太子と結婚させられてしまいました。 なんで私なの!? 勘弁してほしいわ！

連載

命名からのジィジ帰還

　赤ちゃんはリュカと命名された。

　リュカとは光をもたらす人と言う意味だそうだ。確かにリュカは光とともにこの世界に出てきた。

　リカルド様はリュカ以外には考えられなくて「リュカでいい？」と聞いたら「いいよ～」とリュカが答えたと言う。

　ほんまかいな？　普通の可愛い赤ちゃんなんだけどな。

「リュカ、私にも何か話してよ」

「あ～、あ～」

　私には普通の赤ちゃんなのよね。

　まぁ、可愛さは全然普通じゃなくて神レベルだと思うけど。

　リュカはよく寝てよく飲んでよく動く良い子。乳母のメアリーも「賢いし手がかからない」と言っている。

　リュカが生まれてからは、あれほどくっついていたリカルド様が時々領地に戻るようになった。
　領地に出かける前はいつもリュカに「リュカ、私が戻るまでママを頼むよ」と言う。

　リュカが私を守ってくれるのだろうか？

「リュカが私を守ってくれるの？」

「あ～あ～う～う～」

　リュカは手足を動かしながら何か喋っている。

「ママがリュカを守るからね」

　私はそう言ってリュカのほっぺにチュッとキスをした。

　そう言えば明日はお父様が戻ってくる日だ。

　フェノバール領でゴードンさんにお世話になっているみたいだけど、何してるのかな？

　リカルド様は「蚕さんのご飯の世話をしてるみたいだよ」と言っていたけど、お父様は虫が怖いのに大丈夫かな？　幼虫なんて見て震えてるんじゃないかしら？

　国王陛下は西の辺境の地にいるんでしょう？　
　何してるんだろ？　

　砦作ったり？　

　ないない。ないわ～。

　国王陛下もお父様も基本は良い人なんだけど、何かわかってないとこあるのよね。

　それが王妃様やお母様の逆鱗に触れて雷を落とされちゃうのよ。

　リカルド様はあのふたりとは全く違うタイプだけど、クリストファー殿下はあのタイプだから、王配に入った先で女王様に雷落とされてるのかもね。

「きゃっきゃ」

　あら、リュカも笑ってるわ。クリストファー殿下とは会ったことないけど何となくわかるのかな？


　次の日、父がリカルド様と一緒にフェノバール領から戻ってきた。

　リュカに自分が世話をした蚕さんから採った糸で織った布地で作ったおくるみをくれた。端の始末は職人さんに頼んだそうだ。職人さん、仕事の邪魔をしてすみません。

　リュカを見るなり、抱きついて泣いてました。

「よく産まれてきてくれた～。弱いジジイを許しておくれ、これからは心を入れ替えて強いジジイになるからな」
　
　いや、お父様、そこはせめてジィジにしてよ。リュカがほんとにジジイと呼んだらどうするの。

　お母様はそんなお父様を見て苦笑している。

　その晩、リュカを膝の上に乗せ、上機嫌のジジイじゃないジィジは蚕さんは素晴らしい。綿や麻も桑の葉もゴードンさんも職人さんも素晴らしいという話を延々としていた。

　お父様に与えられた罰は楽しかったみたいだな。
　虫が怖いのも克服できたのかな？

　そう言えば国王陛下もそろそろ戻ってきているのかな？

　あちらはお父様のように楽しい罰ではなかったと思う。西の辺境の地は大変みたいだもの。

　元気で戻ってきたかな？　ちょっとお腹へっこんだかな？

　お腹の事は私も言えないな。

　私は元のお腹に戻すために日々の鍛錬頑張ろうと誓った。