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アイリーンの父母に会う

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 私はヴェルミーナの屋敷でアイリーンの父母とあの国の先先代国王、先先代王妃様、先代王妃のヴェルミーナのお姉様と会った。

「お父様、お母様、姿形は違いますがアイリーンでございます。あの時ちゃんとお別れをできなかった事が心残りでございました。アイリーンはおふたりの子供に産まれて幸せでございました。先に旅立ってしまい申し訳ございませんでした」

 私の言葉に父母は私に抱きつき涙している。

「アイリーン、申し訳ない。私があんな愚息をアイリーンに押し付けたばかりにあんな目に合わせてしまった。あれが出来が悪かったので、アイリーンに全てを押し付けてしまい、最後にはあんな事になってしまい本当にすまなかった」

「陛下、もう過ぎた事ですわ。お気になさらないでくださいませ。アイリーンは全てを許しています」

 だってもう56年も前の事でしょう? 私は元々執念深い生活じゃないし、詳しくは覚えていないもの。

 みんな私がアイリーンの生まれ変わりだということに違和感がないらしい。この世界の人は西洋人風の顔なので私の日本的な容姿とはかなり違うのだけれど、エネルギーでわかるらしい。やっぱり異世界は不思議な世界だ。


「アイリーン、あれはエアハルトか?」

「あら、お父様、わかります? ただ本人はエアハルトの頃の記憶はないらしいのです。そう言えばエアハルトはもう亡くなっているのですか?」

 私は何を言っているのだ。亡くなっていなければ生まれ変わらない。

 父は真顔になった。

「あぁ、お前が亡くなったあと、磔になったあの2人に火のついた矢を放ち、すぐにお前の墓の前で自死していた。あれはお前が産まれた時からずっとお前の側にいたから『アイリーン様をひとりにはできません』と書いた遺書があったよ。墓はお前の墓の隣にした」

 エアハルトがそんなことをしていたなんて。馬鹿ね。私になんかそんな忠誠を尽くさなくてもよかったのに。

それにしても墓って? 罪人なのにお墓があるの?

「私は処刑されたのにお墓があるのですか?」

 私は父に訪ねた。

「ある。立派な墓だ」

 先先代の国王が話し出した。

「アイリーンを罪人なんて思っている者はあの国にはひとりもいない。愚息と馬鹿女に陥れられた悲劇の聖女アイリーンの墓には今でも花が絶えない。エアハルトは忠臣としていまだに語られているよ」

 そうなのか。なんだかくすぐったいな。

 父母達のたっての希望で、あの国にも回復魔法の行脚に行く事になった。もちろんジークヴァルトも一緒だ。

 あの国で自分のお墓に行った。本当に立派なお墓でびっくりした。お墓は花だらけだ。
 それに、私の話がかなり盛られて本にもなっていてそれにも驚いた。

 いや、私、あの頃は普通の令嬢だったはず。

 とにかく変な感じだ。

 誰も何も言っていないのに、アイリーンの生まれ変わりがグロースクロイツ王国が召喚した聖女としてまた戻ってきてくれたとてんやわんやの大騒ぎとなった。

 みんな60歳を過ぎてはいるが当時の関係者がまだ生きているので、入れ替わり立ち替わり訪れては謝罪を受けた。

 正直に言うと疲れた。

 それから私達は呼ばれた国に行き、鑑定魔法と回復魔法で貧民層の人達の病気を発見し、治した。

 時々私を誘拐して一儲けしようと企むやからに遭遇することもあったが、ジークヴァルトが片付けくれた。

 そんなこんなでまた1年が過ぎた頃、ゲオルグから伝書バードが届いた。

「お待たせしました。日本に帰る魔法が見つかり準備が整いました」
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