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24話 いったい誰が?
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皆さん、いいねありがとうございます。励みになります。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
ルドルフとゲオルグがバウムガルテン王国から戻ってきた。
ふたりの話ではラートガーとリュディガーは別々の場所で発見されたらしい。
ラートガーは北側にある辺境の地の森の中で、リュディガーは南の保養地の海辺で。ふたりとも急に目の前が暗くなり、気がつくとその場にいたそうだ。特に危害は加えられていない。
ルドルフは難しい顔をしている。
「王家は殿下達には護衛騎士を1人しかつけていなかったらしい。しかも専任ではなく、普通の騎士をシフトでつけていたらしい。狙われていたのはエデル様だけだから、エデル様がいなくなったので大丈夫だろうと、陛下が警護を緩めたそうだ。妃殿下も父も知らなかったそうで、ふたりで陛下を責めていた」
全く。アーベルの奴、何をやっているんだ。
「でも、誰が何のためにそんなことをしたのかしら?」
ゲオルグは腕組みをしている。
「そんなことができるのは魔導士でしょうね」
「犯人は見つからないの?」
私の言葉にルドルフはため息をついた。
「ええ。捜査はしていますが、陛下としては、特に何も被害はなかったのだがら良かったと。とりあえず2人の護衛を増やすということで落ち着いたみたいです。最近陛下は先王に似てきましたね。あれでは妃殿下や宰相は大変だ」
「そうですね。父も困っていました。自分がいくら進言しても陛下は事を荒立てず丸くおさめようとなさると。今回の殿下達のことも、これで終わりと思われているようですが、父や妃殿下はこれはきっと何かのメッセージではないかと考えているようです」
ゲオルグもため息をつく。
ラインハルトが私の顔を見た。
「アーベルがダメなら我が国の属国にすればいい。その方がエデルも安心じゃないか?」
えっ? 属国? それはつまりバウムガルテンを乗っ取るということ?
「国を潰すの?」
「いや、そうじゃないよ。属国とはバウムガルテンはそのままだけど、クラッセンと同じように我が国の配下になるということなんだ。我が国から誰かが入るだけだよ」
いやいや、ラインハルトは簡単そうに言うが属国ってそんな簡単なものじゃないだろう。
私の言葉を気にしたのか、ラインハルトは眉根を寄せた。
「今すぐにという訳ではないし、エデルが嫌なら無理にとは言わない。ただこのままではまたバウムガルテンは他国から狙われるかもしれない。私はエデルの事が心配なんだ」
う~ん。これをライムントが言っていたのならありがとうで終わるのだが、ラインハルトはライムントより力がある。彼が望めばバウムガルテンを属国にすることもあるかもしれない。
それがいいことか、そうでないのかは今の私には判断できない。
ゲオルグがこほんと咳払いをした。
「まぁ、今は様子を見ましょう。陛下には妃殿下や王太后様もついておられます。これからは陛下単独の命令ができないようにするとおっしゃっていたので、バウムガルテンも変わると思います」
結局はローザに負担をかけてしまうのね。
「とにかく、今回の件はうちも協力して犯人をさがす。エデル、私を信じてほしい。私は決してエデルが嫌がることはしないから」
真摯な態度なんだけど、やっぱりラインハルトはライムントとは違う。
途中から記憶が戻った人はもうすでにある今の人格と前世の人格が混ざるのよね。ライムントは魔法馬鹿で魔法以外のことはポンコツだったけど、ラインハルトは魔法もできて、魔法以外のことも優秀なのよ。
ライムントの部分で私を好きだと言っているだけで、ラインハルトとしては私じゃなくてもいいのではないのかしらと思ってしまう。
まだ、ラインハルトがよくわからないわ。
いっそ、前世の記憶なんてなければ良かったのに。そうしたら、普通の何も知らない王女だったのに。
なんで生まれ変わっちゃったのかな?
やっぱり時戻しが良かったわ~。
ラインハルトにアルカイックスマイルで対応した。要するに笑って誤魔化した。
◇◇◇
「エデル様、大変です。今度は妃殿下が行方不明になりました」
はぁ? ローザリアが?
警備を厳重にしたのではなかったの? まったくもう信じられないわ。
「メアリー、一度バウムガルテンに戻るわ。ルドルフを呼んで」
メアリーはすぐにルドルフを呼んできてくれた。
「どうなっているの?」
ルドルフは困った顔をしている。
「それが、今帰ったゲオルグの報告では、妃殿下は王宮で皆が見ている前で突然消えたそうです。なので騎士達もどうすることもできなかったと」
「戻るわ」
「ダメです。ここは陛下に任せましょう。エデル様、また女王になりたいのですか? 今戻ったら陛下はエデル様を頼ります。まだ陛下はエデル様が転生していることは知りませんが、それでもエデル様の優秀さには一目置いています。妃殿下は必ず見つけます。今、ラインハルト殿下がバウムガルテンの王宮に結界を張るように魔導士を手配してくれています。それに妃殿下を捜索するための魔導士もゲオルグと一緒に移動魔法でバウムガルテンに到着しています。今はとにかく静観しましょう」
ラインハルトは色々やってくれているんだな。確かにルドルフの言う通りだ。今戻ったらアーベルに頼りにされるに決まっている。ましてや私が転生していて、前の記憶があると分かったら……。
とにかく今はここから見ているしかないようだ。
皆さん、いいねありがとうございます。励みになります。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
ルドルフとゲオルグがバウムガルテン王国から戻ってきた。
ふたりの話ではラートガーとリュディガーは別々の場所で発見されたらしい。
ラートガーは北側にある辺境の地の森の中で、リュディガーは南の保養地の海辺で。ふたりとも急に目の前が暗くなり、気がつくとその場にいたそうだ。特に危害は加えられていない。
ルドルフは難しい顔をしている。
「王家は殿下達には護衛騎士を1人しかつけていなかったらしい。しかも専任ではなく、普通の騎士をシフトでつけていたらしい。狙われていたのはエデル様だけだから、エデル様がいなくなったので大丈夫だろうと、陛下が警護を緩めたそうだ。妃殿下も父も知らなかったそうで、ふたりで陛下を責めていた」
全く。アーベルの奴、何をやっているんだ。
「でも、誰が何のためにそんなことをしたのかしら?」
ゲオルグは腕組みをしている。
「そんなことができるのは魔導士でしょうね」
「犯人は見つからないの?」
私の言葉にルドルフはため息をついた。
「ええ。捜査はしていますが、陛下としては、特に何も被害はなかったのだがら良かったと。とりあえず2人の護衛を増やすということで落ち着いたみたいです。最近陛下は先王に似てきましたね。あれでは妃殿下や宰相は大変だ」
「そうですね。父も困っていました。自分がいくら進言しても陛下は事を荒立てず丸くおさめようとなさると。今回の殿下達のことも、これで終わりと思われているようですが、父や妃殿下はこれはきっと何かのメッセージではないかと考えているようです」
ゲオルグもため息をつく。
ラインハルトが私の顔を見た。
「アーベルがダメなら我が国の属国にすればいい。その方がエデルも安心じゃないか?」
えっ? 属国? それはつまりバウムガルテンを乗っ取るということ?
「国を潰すの?」
「いや、そうじゃないよ。属国とはバウムガルテンはそのままだけど、クラッセンと同じように我が国の配下になるということなんだ。我が国から誰かが入るだけだよ」
いやいや、ラインハルトは簡単そうに言うが属国ってそんな簡単なものじゃないだろう。
私の言葉を気にしたのか、ラインハルトは眉根を寄せた。
「今すぐにという訳ではないし、エデルが嫌なら無理にとは言わない。ただこのままではまたバウムガルテンは他国から狙われるかもしれない。私はエデルの事が心配なんだ」
う~ん。これをライムントが言っていたのならありがとうで終わるのだが、ラインハルトはライムントより力がある。彼が望めばバウムガルテンを属国にすることもあるかもしれない。
それがいいことか、そうでないのかは今の私には判断できない。
ゲオルグがこほんと咳払いをした。
「まぁ、今は様子を見ましょう。陛下には妃殿下や王太后様もついておられます。これからは陛下単独の命令ができないようにするとおっしゃっていたので、バウムガルテンも変わると思います」
結局はローザに負担をかけてしまうのね。
「とにかく、今回の件はうちも協力して犯人をさがす。エデル、私を信じてほしい。私は決してエデルが嫌がることはしないから」
真摯な態度なんだけど、やっぱりラインハルトはライムントとは違う。
途中から記憶が戻った人はもうすでにある今の人格と前世の人格が混ざるのよね。ライムントは魔法馬鹿で魔法以外のことはポンコツだったけど、ラインハルトは魔法もできて、魔法以外のことも優秀なのよ。
ライムントの部分で私を好きだと言っているだけで、ラインハルトとしては私じゃなくてもいいのではないのかしらと思ってしまう。
まだ、ラインハルトがよくわからないわ。
いっそ、前世の記憶なんてなければ良かったのに。そうしたら、普通の何も知らない王女だったのに。
なんで生まれ変わっちゃったのかな?
やっぱり時戻しが良かったわ~。
ラインハルトにアルカイックスマイルで対応した。要するに笑って誤魔化した。
◇◇◇
「エデル様、大変です。今度は妃殿下が行方不明になりました」
はぁ? ローザリアが?
警備を厳重にしたのではなかったの? まったくもう信じられないわ。
「メアリー、一度バウムガルテンに戻るわ。ルドルフを呼んで」
メアリーはすぐにルドルフを呼んできてくれた。
「どうなっているの?」
ルドルフは困った顔をしている。
「それが、今帰ったゲオルグの報告では、妃殿下は王宮で皆が見ている前で突然消えたそうです。なので騎士達もどうすることもできなかったと」
「戻るわ」
「ダメです。ここは陛下に任せましょう。エデル様、また女王になりたいのですか? 今戻ったら陛下はエデル様を頼ります。まだ陛下はエデル様が転生していることは知りませんが、それでもエデル様の優秀さには一目置いています。妃殿下は必ず見つけます。今、ラインハルト殿下がバウムガルテンの王宮に結界を張るように魔導士を手配してくれています。それに妃殿下を捜索するための魔導士もゲオルグと一緒に移動魔法でバウムガルテンに到着しています。今はとにかく静観しましょう」
ラインハルトは色々やってくれているんだな。確かにルドルフの言う通りだ。今戻ったらアーベルに頼りにされるに決まっている。ましてや私が転生していて、前の記憶があると分かったら……。
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