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23話 社会見学

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 留学して半年が過ぎた。

 私は何度か誘拐されそうになったり、毒を盛られたが、周りの警護の人達のおかげでピンピンしている。

 捕らえられた者達にはキツい自白剤を飲まして自白させているが、皆頼まれただけで頼んだ相手のことは本当に知らないようでまだ捕まえられずにいる。


 今日は魔法省に研修にきている。魔法学校の1年生の社会見学だ。卒業後、魔法省で働きたい人も多いのでみんな興味津々だ。

 私の周りにはトーマス、ジェフリー、エルネスティーネ、そして魔法科じゃないのに何故かくっついてきたハウル、そしてこれまた1年生じゃないのになぜかいるラインハルト。しかも引率はゲオルグ。

 私の周りには見えない結界も張られている。影もきっとたくさんいるのだろう。魔法省って安全じゃないのかしら?

 魔法省の職員の仕事は多岐にわたり、職員の数も多い。

 宮廷魔導士団は魔法省所属ではなく、王宮の所属になるらしい。魔法省は主に文官や研究者がいるそうだ。

 私達に魔法省の仕事について説明をしてくれたのは、レナータさん、ザーラさん。ふたりとも広報課に所属している。

 レナータさんはすでに結婚していて、子供もいるが、クラウベルク王国には働いている間、子供を預ける施設があるので、朝から夕方まで働いているという。我が国では、女性が子供を預けて働きに出るなどあり得ない。

 まだまだ女性が生きやすい国ではない。

 ラインハルトが私の耳元で囁いた。

「私の傍を離れてはダメだ。花を摘みに行くときは必ずティーネと一緒に行くように」

 少しピリピリしている感じがする。自国の魔法省の見学でこんなにピリピリしているなんて。ここに犯人がいるのかしら?

 エルネスティーネも怖い顔をしている。トーマスとジェフリーはいつもと同じでほっとする。

 背の高いトーマスが私を抱き上げた。

「エデル様、ちょっと失礼致します」

「どうしたの?」

「いや、なんか抱っこしたくなったもんで。ラインハルト殿下、よろしいですか?」

 なんでラインハルトに聞くんだ?

 ラインハルトは無言で頷く。

 ゲオルグとエルネスティーネが同時に指を鳴らすと、私の周りの結界が厚くなったような気がした。

「では、そろそろ学校に戻るとしよう。レナータさん、ザーラさん、案内ありがとうございました」

 ザーラさんは驚いたような顔をしている。

「もう、戻られるのですか? まだご案内したいところもあるし、食事もご用意していますのよ」

「そうですわ。まだいいじゃありませんか?」

 レナータさんも引き止める。

「いや、もうこのあたりで失礼します」

「でも、しかし……」

 ザーラさんがゲオルグの腕を掴もうとした。

「これで終わりだ。ザーラさん、レナータさん、ありがとう」

 ラインハルトがザーラさんの腕を遮った。

 凄い威圧感だ。

 引き止めるのは許さないという感じ。私はトーマスに抱っこされたまま高みの見物だが、何があったのだろう。予定ではまだ、見学が残っている。

 魔法だろうか? ザーラさんとレナータさんの足が地面にくっついて動けなくなっているようだ。

「では、失礼する」

 ラインハルトがゲオルグの顔を見た。その途端、視界が歪んだ。


 あれ? ここは?

 私達は魔法学校に戻っていた。

 移動魔法で帰ってきたのか? そんなに早く戻らなきゃならなかったの?

「何ごともなくてよかった」

「本当に。まさか魔法省にあんな悪意の気が漂っていたとは」

 ゲオルグとラインハルトの言葉に息を呑んだ。

「俺にもわかった。特に地面が酷かった」

 トーマスも眉根を寄せる。それで私を抱き上げたのか。

「とにかく早く王宮に戻ろう」

 終礼をおえ、教室から出ると、入口の前でラインハルトが待っていた。

「行くよ」

 私の手を握ると私達はまた移動した。

◇◇◇

 王宮に戻るとメアリーが慌てた様子で待っていた。

「エデル様、バウムガルテンから、ラートガー殿下とリュディガー殿下が行方不明だと連絡があり、ルドルフは一旦バウムガルテンに戻りました」

 行方不明? どうして?

「詳しいことはまだわかりません」

 メアリーは首を振る。

 ゲオルグも驚いた表情をしている。

「父に連絡してみる。とにかくエデル様はここにいて下さい。ラインハルト殿下、トム、ジェリー、エデル様を頼む」

 ゲオルグも移動魔法でバウムガルテンに飛んだのか姿が消えた。

 一体何があったのか?

 私はふたりの無事を祈るしかなかった。
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