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婚約破棄
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あれは、いまからちょうどひと月前、私のアカデミーの卒業パーティーでの出来事だった。
「ロゼッタ・ブロムヘキシン! お前との婚約は破棄する!」
私は婚約者に、大勢の目の前で婚約破棄を告げられた。
婚約者の腕にはピンクの髪色をした令嬢がへばりついている。
子供の頃からの婚約者だが、ここ10年位まともに話したこともない。
もちろんエスコートしてもらったことも、プレゼントをもらったこともない。
爵位は同じ公爵家の令息だが、内情はかなり苦しいらしく、うちと縁続になって助けて欲しかったようだ。
しかし、婚約がなくなれば援助もなくなるのに、こいつわかっているのか?
「婚約破棄は別にかまいませんが、理由をお聞かせ下さいませ」
「真実の愛を見つけたのだ!」
真実の愛?
馬鹿かこいつ?
恋愛小説の読みすぎだな。
「左様ですか」
「それに、お前がこのミアに嫌がらせをした事は明白だ! 」
「お言葉ですが、何のことだか分かりかねますわ。ミア嬢とは今初めてお会いしました」
本当に私は何のことだかさっぱりわからない。
「ロゼッタ様ぁ~。罪を認めて謝罪してください~。そうすれば私は許しますぅ。ロゼッタ様を許してくれるようにお願いしますぅ」
何の罪を認めろと?
語尾を伸ばすな! 気持ち悪い!
私はブチ切れた。
「どのような罪を認めろと仰るのですか? 証拠はありますか? まさかミア嬢の証言だけで私が嫌がらせをしたと仰っているのではないでしょうね? 私が嫌がらせをした現場を見た目撃者はいるのですか? いるなら、この場に連れてきてくださいませ!」
「見ました! 私は見ました」
ナリス伯爵家の次男か。
「それはいつですか?」
「何度も見たので日にちまでは覚えてない!」
「私も見た! ミアを噴水に突き落としていた」
サン侯爵家の三男か。
「私がですか? 見間違いではなく?」
「あぁ、お前だ! 見間違うはずもない!」
こいつら馬鹿か?
私はこの1年、隣国に留学していたので、今日の卒業式とパーティーにしか顔を出していない。
「私はこの1年間隣国に留学しておりました。留学前に卒業試験は受けていて卒業資格はいただいておりますので、1日もアカデミーには登校しておりませんわ。入国記録でもなんでもお調べになるとよろしいかと」
「隣国から命令して手の者にやらせたのではないか」
「先程、見間違うはずもない、私だとおっしゃったではありませんか」
「……」
「校長、今のやりとりご覧になられておりましたわね。証人になって下さいませ」
「承知した。ブロムヘキシン公爵令嬢がこの1年間登校していないことは私が知っている。なので嫌がらせなどできるわけがない」
校長ナイス!
「校長、ありがとうございます」
私は校長に頭を下げてから、馬鹿者たちに向かいあった。
「私はスマット公爵令息と婚約破棄いたしますわ。もちろん不貞を働いたスマット公爵令息の有償でです。慰謝料を請求いたします。真実の愛であったにしても婚約解消をしてからお付き合いするべきではありませんか? それなのにありもしない罪をでっち上げ、陥れようとなさるなど言語道断ですわ」
スマット公爵令息は青い顔をしている。
「そして私の名誉を毀損したナリス伯爵令息とサン侯爵令息、ルリット男爵令嬢にも慰謝料を請求いたします」
「そう言うことだ。スマット公爵令息、並びにナリス伯爵令息、サン侯爵令息、ルリット男爵令嬢は追って沙汰を待つように。さぁ。邪魔が入ったがみんなは卒業パーティーを楽しんでくれ」
アカデミーの校長をしている王弟殿下が話をしめてくれた。
スマット公爵はお父様に頭を下げているなぁ。
馬鹿息子がやらかすとは思ってなかったのだろう。
「ロゼッタ様、素敵でしたわ。みんなあの女には手を焼いておりましたの」
「スッキリしましたわ。さすがロゼッタ様」
友人たちは口々に言う。
そんなひどい女だったのか?
「私も婚約破棄いたしますわ。あんな男と結婚したくありませんもの」
「私もですわ」
ナリス伯爵令息の婚約者とサン侯爵令息の婚約者か。
「それがよろしいわ。1度不貞をなさる方は何度でもなされますものね」
私は扇子で口元を隠しふふふと笑った。
「ロゼッタ・ブロムヘキシン! お前との婚約は破棄する!」
私は婚約者に、大勢の目の前で婚約破棄を告げられた。
婚約者の腕にはピンクの髪色をした令嬢がへばりついている。
子供の頃からの婚約者だが、ここ10年位まともに話したこともない。
もちろんエスコートしてもらったことも、プレゼントをもらったこともない。
爵位は同じ公爵家の令息だが、内情はかなり苦しいらしく、うちと縁続になって助けて欲しかったようだ。
しかし、婚約がなくなれば援助もなくなるのに、こいつわかっているのか?
「婚約破棄は別にかまいませんが、理由をお聞かせ下さいませ」
「真実の愛を見つけたのだ!」
真実の愛?
馬鹿かこいつ?
恋愛小説の読みすぎだな。
「左様ですか」
「それに、お前がこのミアに嫌がらせをした事は明白だ! 」
「お言葉ですが、何のことだか分かりかねますわ。ミア嬢とは今初めてお会いしました」
本当に私は何のことだかさっぱりわからない。
「ロゼッタ様ぁ~。罪を認めて謝罪してください~。そうすれば私は許しますぅ。ロゼッタ様を許してくれるようにお願いしますぅ」
何の罪を認めろと?
語尾を伸ばすな! 気持ち悪い!
私はブチ切れた。
「どのような罪を認めろと仰るのですか? 証拠はありますか? まさかミア嬢の証言だけで私が嫌がらせをしたと仰っているのではないでしょうね? 私が嫌がらせをした現場を見た目撃者はいるのですか? いるなら、この場に連れてきてくださいませ!」
「見ました! 私は見ました」
ナリス伯爵家の次男か。
「それはいつですか?」
「何度も見たので日にちまでは覚えてない!」
「私も見た! ミアを噴水に突き落としていた」
サン侯爵家の三男か。
「私がですか? 見間違いではなく?」
「あぁ、お前だ! 見間違うはずもない!」
こいつら馬鹿か?
私はこの1年、隣国に留学していたので、今日の卒業式とパーティーにしか顔を出していない。
「私はこの1年間隣国に留学しておりました。留学前に卒業試験は受けていて卒業資格はいただいておりますので、1日もアカデミーには登校しておりませんわ。入国記録でもなんでもお調べになるとよろしいかと」
「隣国から命令して手の者にやらせたのではないか」
「先程、見間違うはずもない、私だとおっしゃったではありませんか」
「……」
「校長、今のやりとりご覧になられておりましたわね。証人になって下さいませ」
「承知した。ブロムヘキシン公爵令嬢がこの1年間登校していないことは私が知っている。なので嫌がらせなどできるわけがない」
校長ナイス!
「校長、ありがとうございます」
私は校長に頭を下げてから、馬鹿者たちに向かいあった。
「私はスマット公爵令息と婚約破棄いたしますわ。もちろん不貞を働いたスマット公爵令息の有償でです。慰謝料を請求いたします。真実の愛であったにしても婚約解消をしてからお付き合いするべきではありませんか? それなのにありもしない罪をでっち上げ、陥れようとなさるなど言語道断ですわ」
スマット公爵令息は青い顔をしている。
「そして私の名誉を毀損したナリス伯爵令息とサン侯爵令息、ルリット男爵令嬢にも慰謝料を請求いたします」
「そう言うことだ。スマット公爵令息、並びにナリス伯爵令息、サン侯爵令息、ルリット男爵令嬢は追って沙汰を待つように。さぁ。邪魔が入ったがみんなは卒業パーティーを楽しんでくれ」
アカデミーの校長をしている王弟殿下が話をしめてくれた。
スマット公爵はお父様に頭を下げているなぁ。
馬鹿息子がやらかすとは思ってなかったのだろう。
「ロゼッタ様、素敵でしたわ。みんなあの女には手を焼いておりましたの」
「スッキリしましたわ。さすがロゼッタ様」
友人たちは口々に言う。
そんなひどい女だったのか?
「私も婚約破棄いたしますわ。あんな男と結婚したくありませんもの」
「私もですわ」
ナリス伯爵令息の婚約者とサン侯爵令息の婚約者か。
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