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王妃様に呼ばれました

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 部屋に行くと王妃様が待っていた。

「ユーファごめんなさいね」

 王妃様は私を引き寄せ抱きしめてくれた。

「ありがとうございます。大丈夫です。王妃様に信じてもらえて嬉しいです」

 涙が一筋流れた。

「影から報告が来ているわ。フランシスがあんなに、馬鹿だとは今まで気が付かなかった。母親として失格ね」

「王妃様、何があったのですか? 私は王太子妃教育を優先しているので、学園には毎日行けていないのでよくわからないのです。何故フランシス殿下がリネット嬢と懇意になっているのか? 何故私がリネット嬢に意地悪をしたことになっているのか? それよりもいちばん驚いているのは、あの親子がうちにいた時に私が父の再婚を反対してあの親子に嫌がらせをして家から追い出したようなことを言われたのですが、あの時の事はフランシス殿下もご存知のはずなのでは?」


あの時はフランシス殿下もあの場にいて話を聞いていたはずだ。

 それなのになぜそんなことを言ったのか私は訳がわからなかった。

「学園の高位貴族の子供達はみんなユーファが正しいとわかっているわ。ユーファは王太子の婚約者だから影がついていることもみんな口には出さないけど知っているはずよ。男爵令嬢の言葉よりも王家の影の目と耳が正しいのは子供でもわかるわ」

「しかし、兄上はそれすらわからない。なぜそんな女を信じてユーファに酷いことを言うのか? ユーファがそんなことをする人間か長い間一緒にいてわからないのか? 見損ないましたよ」

 王妃様もヒューバート殿下も憤慨している。

「兄上は危機管理能力が緩いところがあるから何かでとりいられたのだろう」

「そうね。今、その令嬢のことを調べさせているの。ユーファはしばらく学園を休んでちょうだい。その間にあの女が流しているユーファの悪い噂は暗部を使って鎮静させるわ」

 リネットは私が陰湿にいじめをし、私の父とリネットの母親の仲を引き裂いた。自分は前大公の娘だが、王家の思惑で庶子にされ、母親は貧乏男爵の後妻にされた。本当なら大公家の令嬢だと言っているらしい。

 王妃様の話ではこれを聞いた元大公は激怒していると言う。

 我がリプレ家はなんの関係もない。父がお人好しだったからつけいられてしまっただけだ。

 まぁ、娘に危害を加えるなんて言われたから仕方なかったのだろうが、貰い事故みたいなものだ。

 とりあえず様子を見ようと言うことになった。

 私はしばらく学園には行かず、王太子妃教育に専念することになった。

「ユーファ、大丈夫だよ。兄上はきっと目が覚める。だから兄上を嫌わないでほしい。目が覚めたら、その時は土下座でもなんでもさせるからね」

 ヒューバート殿下は私を慰めてくれた。

 そうだ。きっとフランシス殿下はわかってくれるはず。今はとにかく待つしかない。私はそう思いながら帰路についた。

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