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再婚?

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「お嬢様、起きて下さいませ」

 メアリーに起こされた。今日は王太子妃教育がお休みなのでゆっくりしている。

 用意をして、朝食を摂るためにダイニングに行った。

「ユーファミア様、おはようございます」

 すでにダイニングにいたライラ様が私に挨拶をした。

「……お義母様、おはようございます」

 王太子妃教育で培った感情を出さない顔で、ライラ様に挨拶をした。

 ライラ様は驚いたような顔をしている。

「ユーファミア様、公爵様は昨日、あのように申しておりましたが、私共親子を無理に押し付けられただけなのです。決して亡くなった奥様を忘れたわけでも裏切ったわけでもありません」

 どういうこと? 押し付けられたとは?

「今お話をさせていただいても大丈夫でしょうか? お時間はございますか?」

 ライラ様の言葉に私は頷いた。

「私はカルタン大公閣下の愛妾でした。元は男爵家の娘でカルタン大公家に行儀見習いのつもりで使用人として働いておりました。結婚が決まりもうすぐ辞めるというところで閣下のお手つきとなり結婚は破談になってしまったのです。その後、リネットを孕っていることがわかり、閣下は私を愛妾にし、離宮に閉じ込めました。それからずっと1歩も外に出してもらえませんでした。若い愛妾が来て、私達が邪魔になった閣下は奥様が亡くなられたリプレ公爵閣下に引き取ってくれないかと命令したそうです。リプレ公爵が引き取らなければ、母娘共娼館に売るとおっしゃったそうで、リプレ公爵は命令に逆らえず、私達を引き取って下さいました。もちろん籍は入っておりません。私のことは義母ではなく、使用人と思って下さいませ」

思いもよらないライラ様の話に私は胸が苦しくなった。

「しかし、リネット嬢は大公閣下のお子様ではないのですか? カルタン大公家のご令嬢なのに」

「いえ、リネットは結婚するはずだった婚約者の子供です。大公閣下と婚約者は偶然にも同じ髪色で同じ瞳の色をしていました。なので周りは見た目であの子を閣下の子だと思ったのでしょう」

「大公閣下はそのことはご存知なのですか?」

「さぁ、どうでしょう? あの方は娘に何の興味もなかったです。生まれてから一度も会っておりません。それに娘はカルタン大公家の籍には入っておりません」

 ライラ様は淡々と話す。リネットは平民なのか?

「では父とは夫婦としての生活はなさらないおつもりなのですか?」

「はい。妻にはできないし、娘もリペルの養女にする事はできない。私は、ここにいる間は、ユーファミア様の母の代わりとして話し相手になってやってほしいと言われました。私も妻になど、そんな恐れ多いことは望んでおりません」

 私はお父様と話をする必要があるようだ。

「ライラ様、お話はよくわかりました。今はあなた様とどう向き合えば良いのか、まだ決めかねております。もう少しお待ちいただけますでしょうか」

「今は置いていただけるだけでありがたく思っております。できるだけ早く出て行こうと思っております」

 ライラ様は嘘をついているように見えない。

 お父様は大公命令で仕方なく引き取ったのだろうか? なんだかよくわからない。
 こんな時お兄様がいてくれたらなぁ。私はどうすればいいのだろう。

「お父様、少しよろしいですか?」

「あぁ、あの、2人のことか?」

「はい、ライラ様から大まかなことは伺いました。母ではなく、母のようなということでよろしいのでしょうか?」

 私は王太子妃教育がお休みだったこともあり、お父様の執務室に押しかけた。
 いつもならお父様はお忙しいだろうし、お仕事の邪魔をしてはいけないと遠慮していたのだが、この件ははっきりさせておきたい。

「私はどうも言葉が足りないようだな。ステファニーにもいつも言われていた。ライラは母代わり、娘は妹代わりだと思って欲しい。いくら大公命令でも私は再婚などしない。私の妻は亡くなったステファニーだけだ」

「わかりました。ライラ様とリネット嬢の身分をきちんとして下さいませね」

「相分かった。この事は陛下に話している。大公命令など聞く必要はないと仰せだった」

 どうやら父の再婚はないようだ。

 話し相手が必要だと思うなら知らない他人ではなく、お父様が時間を作ってくれればいい。立ち位置のはっきりしない他人が家にいるのはどうも落ち着かない。

 ライラ様は悪い人ではないが、私はできれば速やかに出ていって欲しい。

 大公命令に逆らうわけにはいかないのはわかるがうちは何の関係もない。

 明日、登城した時に王妃様に相談してみよう。
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