3 / 11
再婚?
しおりを挟む
「お嬢様、起きて下さいませ」
メアリーに起こされた。今日は王太子妃教育がお休みなのでゆっくりしている。
用意をして、朝食を摂るためにダイニングに行った。
「ユーファミア様、おはようございます」
すでにダイニングにいたライラ様が私に挨拶をした。
「……お義母様、おはようございます」
王太子妃教育で培った感情を出さない顔で、ライラ様に挨拶をした。
ライラ様は驚いたような顔をしている。
「ユーファミア様、公爵様は昨日、あのように申しておりましたが、私共親子を無理に押し付けられただけなのです。決して亡くなった奥様を忘れたわけでも裏切ったわけでもありません」
どういうこと? 押し付けられたとは?
「今お話をさせていただいても大丈夫でしょうか? お時間はございますか?」
ライラ様の言葉に私は頷いた。
「私はカルタン大公閣下の愛妾でした。元は男爵家の娘でカルタン大公家に行儀見習いのつもりで使用人として働いておりました。結婚が決まりもうすぐ辞めるというところで閣下のお手つきとなり結婚は破談になってしまったのです。その後、リネットを孕っていることがわかり、閣下は私を愛妾にし、離宮に閉じ込めました。それからずっと1歩も外に出してもらえませんでした。若い愛妾が来て、私達が邪魔になった閣下は奥様が亡くなられたリプレ公爵閣下に引き取ってくれないかと命令したそうです。リプレ公爵が引き取らなければ、母娘共娼館に売るとおっしゃったそうで、リプレ公爵は命令に逆らえず、私達を引き取って下さいました。もちろん籍は入っておりません。私のことは義母ではなく、使用人と思って下さいませ」
思いもよらないライラ様の話に私は胸が苦しくなった。
「しかし、リネット嬢は大公閣下のお子様ではないのですか? カルタン大公家のご令嬢なのに」
「いえ、リネットは結婚するはずだった婚約者の子供です。大公閣下と婚約者は偶然にも同じ髪色で同じ瞳の色をしていました。なので周りは見た目であの子を閣下の子だと思ったのでしょう」
「大公閣下はそのことはご存知なのですか?」
「さぁ、どうでしょう? あの方は娘に何の興味もなかったです。生まれてから一度も会っておりません。それに娘はカルタン大公家の籍には入っておりません」
ライラ様は淡々と話す。リネットは平民なのか?
「では父とは夫婦としての生活はなさらないおつもりなのですか?」
「はい。妻にはできないし、娘もリペルの養女にする事はできない。私は、ここにいる間は、ユーファミア様の母の代わりとして話し相手になってやってほしいと言われました。私も妻になど、そんな恐れ多いことは望んでおりません」
私はお父様と話をする必要があるようだ。
「ライラ様、お話はよくわかりました。今はあなた様とどう向き合えば良いのか、まだ決めかねております。もう少しお待ちいただけますでしょうか」
「今は置いていただけるだけでありがたく思っております。できるだけ早く出て行こうと思っております」
ライラ様は嘘をついているように見えない。
お父様は大公命令で仕方なく引き取ったのだろうか? なんだかよくわからない。
こんな時お兄様がいてくれたらなぁ。私はどうすればいいのだろう。
「お父様、少しよろしいですか?」
「あぁ、あの、2人のことか?」
「はい、ライラ様から大まかなことは伺いました。母ではなく、母のようなということでよろしいのでしょうか?」
私は王太子妃教育がお休みだったこともあり、お父様の執務室に押しかけた。
いつもならお父様はお忙しいだろうし、お仕事の邪魔をしてはいけないと遠慮していたのだが、この件ははっきりさせておきたい。
「私はどうも言葉が足りないようだな。ステファニーにもいつも言われていた。ライラは母代わり、娘は妹代わりだと思って欲しい。いくら大公命令でも私は再婚などしない。私の妻は亡くなったステファニーだけだ」
「わかりました。ライラ様とリネット嬢の身分をきちんとして下さいませね」
「相分かった。この事は陛下に話している。大公命令など聞く必要はないと仰せだった」
どうやら父の再婚はないようだ。
話し相手が必要だと思うなら知らない他人ではなく、お父様が時間を作ってくれればいい。立ち位置のはっきりしない他人が家にいるのはどうも落ち着かない。
ライラ様は悪い人ではないが、私はできれば速やかに出ていって欲しい。
大公命令に逆らうわけにはいかないのはわかるがうちは何の関係もない。
明日、登城した時に王妃様に相談してみよう。
メアリーに起こされた。今日は王太子妃教育がお休みなのでゆっくりしている。
用意をして、朝食を摂るためにダイニングに行った。
「ユーファミア様、おはようございます」
すでにダイニングにいたライラ様が私に挨拶をした。
「……お義母様、おはようございます」
王太子妃教育で培った感情を出さない顔で、ライラ様に挨拶をした。
ライラ様は驚いたような顔をしている。
「ユーファミア様、公爵様は昨日、あのように申しておりましたが、私共親子を無理に押し付けられただけなのです。決して亡くなった奥様を忘れたわけでも裏切ったわけでもありません」
どういうこと? 押し付けられたとは?
「今お話をさせていただいても大丈夫でしょうか? お時間はございますか?」
ライラ様の言葉に私は頷いた。
「私はカルタン大公閣下の愛妾でした。元は男爵家の娘でカルタン大公家に行儀見習いのつもりで使用人として働いておりました。結婚が決まりもうすぐ辞めるというところで閣下のお手つきとなり結婚は破談になってしまったのです。その後、リネットを孕っていることがわかり、閣下は私を愛妾にし、離宮に閉じ込めました。それからずっと1歩も外に出してもらえませんでした。若い愛妾が来て、私達が邪魔になった閣下は奥様が亡くなられたリプレ公爵閣下に引き取ってくれないかと命令したそうです。リプレ公爵が引き取らなければ、母娘共娼館に売るとおっしゃったそうで、リプレ公爵は命令に逆らえず、私達を引き取って下さいました。もちろん籍は入っておりません。私のことは義母ではなく、使用人と思って下さいませ」
思いもよらないライラ様の話に私は胸が苦しくなった。
「しかし、リネット嬢は大公閣下のお子様ではないのですか? カルタン大公家のご令嬢なのに」
「いえ、リネットは結婚するはずだった婚約者の子供です。大公閣下と婚約者は偶然にも同じ髪色で同じ瞳の色をしていました。なので周りは見た目であの子を閣下の子だと思ったのでしょう」
「大公閣下はそのことはご存知なのですか?」
「さぁ、どうでしょう? あの方は娘に何の興味もなかったです。生まれてから一度も会っておりません。それに娘はカルタン大公家の籍には入っておりません」
ライラ様は淡々と話す。リネットは平民なのか?
「では父とは夫婦としての生活はなさらないおつもりなのですか?」
「はい。妻にはできないし、娘もリペルの養女にする事はできない。私は、ここにいる間は、ユーファミア様の母の代わりとして話し相手になってやってほしいと言われました。私も妻になど、そんな恐れ多いことは望んでおりません」
私はお父様と話をする必要があるようだ。
「ライラ様、お話はよくわかりました。今はあなた様とどう向き合えば良いのか、まだ決めかねております。もう少しお待ちいただけますでしょうか」
「今は置いていただけるだけでありがたく思っております。できるだけ早く出て行こうと思っております」
ライラ様は嘘をついているように見えない。
お父様は大公命令で仕方なく引き取ったのだろうか? なんだかよくわからない。
こんな時お兄様がいてくれたらなぁ。私はどうすればいいのだろう。
「お父様、少しよろしいですか?」
「あぁ、あの、2人のことか?」
「はい、ライラ様から大まかなことは伺いました。母ではなく、母のようなということでよろしいのでしょうか?」
私は王太子妃教育がお休みだったこともあり、お父様の執務室に押しかけた。
いつもならお父様はお忙しいだろうし、お仕事の邪魔をしてはいけないと遠慮していたのだが、この件ははっきりさせておきたい。
「私はどうも言葉が足りないようだな。ステファニーにもいつも言われていた。ライラは母代わり、娘は妹代わりだと思って欲しい。いくら大公命令でも私は再婚などしない。私の妻は亡くなったステファニーだけだ」
「わかりました。ライラ様とリネット嬢の身分をきちんとして下さいませね」
「相分かった。この事は陛下に話している。大公命令など聞く必要はないと仰せだった」
どうやら父の再婚はないようだ。
話し相手が必要だと思うなら知らない他人ではなく、お父様が時間を作ってくれればいい。立ち位置のはっきりしない他人が家にいるのはどうも落ち着かない。
ライラ様は悪い人ではないが、私はできれば速やかに出ていって欲しい。
大公命令に逆らうわけにはいかないのはわかるがうちは何の関係もない。
明日、登城した時に王妃様に相談してみよう。
29
お気に入りに追加
406
あなたにおすすめの小説
お母様と婚姻したければどうぞご自由に!
haru.
恋愛
私の婚約者は何かある度に、君のお母様だったら...という。
「君のお母様だったらもっと優雅にカーテシーをきめられる。」
「君のお母様だったらもっと私を立てて会話をする事が出来る。」
「君のお母様だったらそんな引きつった笑顔はしない。...見苦しい。」
会う度に何度も何度も繰り返し言われる言葉。
それも家族や友人の前でさえも...
家族からは申し訳なさそうに憐れまれ、友人からは自分の婚約者の方がマシだと同情された。
「何故私の婚約者は君なのだろう。君のお母様だったらどれ程良かっただろうか!」
吐き捨てるように言われた言葉。
そして平気な振りをして我慢していた私の心が崩壊した。
そこまで言うのなら婚約止めてあげるわよ。
そんなにお母様が良かったらお母様を口説いて婚姻でもなんでも好きにしたら!
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
王城の廊下で浮気を発見した結果、侍女の私に溺愛が待ってました
メカ喜楽直人
恋愛
上級侍女のシンシア・ハート伯爵令嬢は、婿入り予定の婚約者が就職浪人を続けている為に婚姻を先延ばしにしていた。
「彼にもプライドというものがあるから」物わかりのいい顔をして三年。すっかり職場では次代のお局様扱いを受けるようになってしまった。
この春、ついに婚約者が王城内で仕事を得ることができたので、これで結婚が本格的に進むと思ったが、本人が話し合いの席に来ない。
仕方がなしに婚約者のいる区画へと足を運んだシンシアは、途中の廊下の隅で婚約者が愛らしい令嬢とくちづけを交わしている所に出くわしてしまったのだった。
そんな窮地から救ってくれたのは、王弟で王国最強と謳われる白竜騎士団の騎士団長だった。
「私の名を、貴女への求婚者名簿の一番上へ記す栄誉を与えて欲しい」
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる