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ランチ会はじまる。

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 お昼休みになり、シグマート卿が迎えにきた。

「リスミー嬢、お迎えにあがりました。ディアナも」

「なによ。私は付け足しなの?」

「付け足しだろうが」

 軽口を叩き合うふたりは本当に仲が良いようだ。

 そう言えば前世でもラーレには仲のいい騎士がいたな。確かテオだったかな。
 案外シグマート卿はテオの生まれ変わりなのかもしれない。

 最近誰を見ても生まれ変わりのように思えてしまうので困ったものだ。

「それでペルマックス嬢は来るの?」

 本当にペルマックス嬢も誘ったのかしら?

「来ないよ。誘ってない。みんなに拒否された。僕も嫌だしね」

 みんな? 殿下の他にも誰かいるのかしら?


 初めて入る王家専用サロンは思ったよりシンプルだった。

「よく来てくれたね」

 殿下はにこやかに出迎えてくれた。

「王国の若き太陽、王太子殿下にご挨拶申し上げます。本日はお招きいただきましてありがとうございます。リスミー侯爵家長女ミオリアにございます」

 身に染み付いたカーテシーをバッチリ決めた。

「リスミー嬢、ここは学園だ。そんなに畏まらなくてもいい。今日はゆっくりしてくれ。そうだ、私のことはラートガーと呼んでもらえると嬉しいな」

 へ? いやいや、それはちょっと。私の平和と安全のためにも殿下と呼ばせていただきたい。

「それなら私はリーと呼んでもらおうか。リスミー嬢、愛称で呼んでもいいかな?」

 どこからともなくモーバー卿が現れた。相変わらず圧が凄い。

 “はい“以外の返事はできないようだ。

「リーンハルト、私が話をしているのだ。横入りしないでくれるか」

 殿下はご立腹のようだ。

「そうでしたか、気がつきませんでした」

 いや、普通気がつくだろう。明らかに嘘だな。このふたりいったい?

「もうふたりともオトナゲナイですわ。ミオリアを取り合いしたい気持ちはわかるけど、ラートガー様は婚約者がいるからだめです。リーンハルト様は圧が凄くて怖いからだめです」

 ディアナが私の前に出た。

「ミオリアに良い返事を貰いたいならまず私に気に入られなくちゃね。私はミオリアの護衛騎士ですから」

「ディアナ、いつから騎士になったのさ」

 ディアナの言葉にシグマート卿が突っ込む。

「護衛騎士? まさかラーレか?」

 モーバー卿が聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いたのを耳がいい私には聞こえてしまった。

 モーバー卿はラーレを知っているの?

 ちゅーか、モーバー卿は誰の生まれ変わりなの?

 う~ん。ラーレが護衛騎士と知っている人……結構いっぱいいるわね。


「と、とにかく食べましょう。ね。早く食べ始めないと昼休み終わっちゃいますよ」

 シグマート卿がそう言い、メイド達に合図をした。

「君はここだ」

「は、はい」

 リーンハルト様の有無を言わせない態度に促され席に向かうとリーンハルト様自ら椅子を引いてくれた。

「あ、ありがとうございます」

「ああ」

 リーンハルト様は隣に座った。

「どうしてリーンハルトが勝手に隣に座るのかな?」

 殿下……怖い。

「殿下は向かいに座ってください」

「そ、そうですね。向かいの方が話しやすいですよね」

 シグマート卿がふたりの仲を取り持っているようだ。

 ディアナはそれを見てくすくす笑っている。

「コンラート、あんたそこね。私はミオリアの隣にするわ。ほら、椅子引いてよ」

 シグマート卿に命令している。

「あぁ、こいつはシグマート卿なんて仰々しく呼ばなくていいからね。コンラートでも、コンでも、なんでもいいわ」

 確かに親分だ。

「では、コンラート様で。私の事はミオリアとお呼びくださいね」

「「なんでコンラートだけ」」

 部屋が一瞬寒くなったような……。

「ミオリア嬢、怖いので、おふたりにもそう言って下さい」

 コンラート様に懇願された。

「はい。ラートガー様も、リー様も私の事はミオリアとお呼びくださいませ」

 あぁ、このランチ会どうなるんだろう?

 冷や汗が出てきたわ。


*この辺りから呼び方が変わってきます。

リスミー嬢→ミオリア嬢
殿下→ラートガー様
モーバー卿→リーンハルト様
シグマート卿→コンラート様

よって表記も微妙に変わります。
ややこしくてすみません。

のちのち、独自のニックネームになったりもします。
よろしくお願いします。
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