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10周目 「何も持たない」魔王
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「アルトゥス様、長生きして下さいね」
口癖のようにメグちゃんが言う。
「あー……そうだな。俺はなるべくグラニより後に死ぬよ」
笑いながらそう言った事がある。グラニェールは強い。魔王と言う名に相応しいくらい強いのは俺も知っている。
それが俺にベタ惚れだ。俺の為なら何だってやるし、何にもしない。
「アル……アルトゥス……んんっ!」
「だからって寝てる時に突っ込む事ないだろ……あんっ」
しかも一回じゃないな?どろどろのぐちゃぐちゃだ。
「でもちゃんと気持ち良かったでしょう?ナカ、ちゃんと気持ちイイって言ってる」
「いや、まあ……そうだけど」
愛してると、抱きついてくるグラニェール。俺が居なくなったらまた黒い化け物になってしまいそうだもんな。
「なあ、グラニェール。俺が死んだらお前どうする?」
「俺も死ぬ!」
まあそれが一番良いのかもな。
俺は順調に歳を取る。グラニェールは元々は人間だから、俺に子供を産ませる事は出来なかった。
「なんか俺を改造して子供を産めるようにでもしてみる?」
「嫌だ!アルトゥスはアルトゥスのままが良い!子供なんかいらない!」
何度か提案してみた事があったが、要らないの一点張りだ。俺が死んだ後も子供でも居れば少し大人しく生きてくれるかと思ったけど、そうもいかないようだ。
俺としては俺が死んだ後もこの見た目だけでも平和な日々が続いて欲しいところなんだけどなあ……。
養子もたくさん取ったがどうもグラニェールを抑えられそうな子はいない。どの子もそこそこに切れ者だし、宰相さんの仕事も手伝ったりしてるしで良い子達なんだけどなぁ……。
「ごめんね、俺が「奪う者」だから、アルトゥスが「与える者」だってわかってても、どうしても負担をかけてしまう」
「ん?何それ。グラニ」
俺はだいぶおじさんになった。それでも毎日グラニとイチャイチャしているし、仕事もそれなりにしている。足腰が立たなくて一日中寝ている事も多いが。
「俺は相手を殺して奪う「奪う者」だ。アルトゥスは「与える者」。誰にでも何でも分けてくれる……自分の命さえも」
そうかなー?そんな事ないと思うぞ。俺だって自分の命は大事だから、人にはやらないぞ!
「はは!そんな事ないぞ、グラニは奪うだけじゃない。ちゃんと誰かに与える事もできるし、俺だって与えるだけじゃないぞ」
人間のはずなんだけど、初めて会った頃からあまり変わらないグラニェールの頭を抱き寄せる。
「そんな事ない。現にアルトゥスは……」
実際の歳より老け込んでる?まあ、俺は生まれた時から成長速度がバラバラだから、なんかそろせいだろ?きっと。
「なあ、グラニェール。お前は俺のもんだろう?お前の全ては俺のもん、俺はお前から全てを奪ったんだぞ?ふふ、どうだ?違うか?」
「そう……かな?俺はそれ以上の全てをアルトゥスから与えられたと思う」
あー、やっぱりグラニは頭が悪いなぁ!
「お前が俺にくれたんだ。全部俺に与えたんじゃないのか?ん?なんか俺に寄越してないものがあるのかぁ?んん?」
少し機嫌が悪い演技じみた台詞を吐くと、グラニは顔色を変えながらブンブンと首を振る。
「ない!全部、全部アルトゥスにあげた!」
「なら、俺はお前から与えられ、俺はお前から奪った。だろ?」
それでもう良いじゃないか。
「ついでにお前の命まで奪おうって言うんだ。びっくりしちゃうよな……」
「俺の命もアルトゥスに上げたから、当たり前だ!アルトゥスが死んだら俺も死ぬのが当たり前だから!」
お前の当たり前、怖いなー。
「俺としては、お前がいるから出来たこの見た目だけ平和でも続けて欲しかったんだけどな。無理か?」
「無理だ!」
「そか」
無理だよなー、分かる。仮初の平和が壊れるより、狂った魔王様が大暴れする世界の方がやばいもんな。
「まー宰相さんが何とかしてくれるかな?」
「あいつ腹黒いからなんとかするよ、あいつの息子も腹黒いし。なんでメグに似なかったんだ?」
「そうだなー、何でだろうなー」
あの爺ちゃん宰相さんは、いつの間にかメグちゃんと夫婦になってた。
「アルトゥス様のお側にいる為です」
ってメグちゃんは言うし
「お二人からの信頼が厚い者を妻にすれば私の信頼も上がりますので」
なんて、愛はない!みたいな態度だったけど、子供が10人以上いるんだよね。ラブラブなんだ。
「手駒は多いに越したことは……」
「あーはいはい」
冷静にそんな事を言ってるし、俺の前では絶対に表情を崩す事は無いけれど
「どうなの?」
と、メグちゃんに聞くと
「かなりの野心家ですが、悪く無いですよ。アルトゥス様とグラニェール様の死後に魔王になりたいようです。死後で良いんだそうです」
と、はっきりメグちゃんに言っているらしいから、それなりに信頼とかもあるんだろうな。
ま、グラニェールより弱いけど、地道に地盤作りとかしているようだから、まあまあな魔王になれるんじゃないかな?
「んじゃ、良いかー」
「ああ、良いとも」
「じゃあ、グラニェール。死んでくれ」
「ああ、アルトゥス。お前の望み通り」
魔王も殺す神秘の毒を乾杯で飲み干し、抱き合って眠りについた。俺達は俺達としてもう目覚める事は無かった。
すぅっと魂が抜け出る。ああ、妹の元に帰るんだ。黒い塊か犬のようにまとわりついてしっかり背中に張り付いた。
グラニめ、自力で登れないからって俺にくっ付いたな?
役目とはいえ殺しすぎた重たいグラニを背負ってうんしょうんしょと登って行く。
はー、今回も頑張りました!っと。
口癖のようにメグちゃんが言う。
「あー……そうだな。俺はなるべくグラニより後に死ぬよ」
笑いながらそう言った事がある。グラニェールは強い。魔王と言う名に相応しいくらい強いのは俺も知っている。
それが俺にベタ惚れだ。俺の為なら何だってやるし、何にもしない。
「アル……アルトゥス……んんっ!」
「だからって寝てる時に突っ込む事ないだろ……あんっ」
しかも一回じゃないな?どろどろのぐちゃぐちゃだ。
「でもちゃんと気持ち良かったでしょう?ナカ、ちゃんと気持ちイイって言ってる」
「いや、まあ……そうだけど」
愛してると、抱きついてくるグラニェール。俺が居なくなったらまた黒い化け物になってしまいそうだもんな。
「なあ、グラニェール。俺が死んだらお前どうする?」
「俺も死ぬ!」
まあそれが一番良いのかもな。
俺は順調に歳を取る。グラニェールは元々は人間だから、俺に子供を産ませる事は出来なかった。
「なんか俺を改造して子供を産めるようにでもしてみる?」
「嫌だ!アルトゥスはアルトゥスのままが良い!子供なんかいらない!」
何度か提案してみた事があったが、要らないの一点張りだ。俺が死んだ後も子供でも居れば少し大人しく生きてくれるかと思ったけど、そうもいかないようだ。
俺としては俺が死んだ後もこの見た目だけでも平和な日々が続いて欲しいところなんだけどなあ……。
養子もたくさん取ったがどうもグラニェールを抑えられそうな子はいない。どの子もそこそこに切れ者だし、宰相さんの仕事も手伝ったりしてるしで良い子達なんだけどなぁ……。
「ごめんね、俺が「奪う者」だから、アルトゥスが「与える者」だってわかってても、どうしても負担をかけてしまう」
「ん?何それ。グラニ」
俺はだいぶおじさんになった。それでも毎日グラニとイチャイチャしているし、仕事もそれなりにしている。足腰が立たなくて一日中寝ている事も多いが。
「俺は相手を殺して奪う「奪う者」だ。アルトゥスは「与える者」。誰にでも何でも分けてくれる……自分の命さえも」
そうかなー?そんな事ないと思うぞ。俺だって自分の命は大事だから、人にはやらないぞ!
「はは!そんな事ないぞ、グラニは奪うだけじゃない。ちゃんと誰かに与える事もできるし、俺だって与えるだけじゃないぞ」
人間のはずなんだけど、初めて会った頃からあまり変わらないグラニェールの頭を抱き寄せる。
「そんな事ない。現にアルトゥスは……」
実際の歳より老け込んでる?まあ、俺は生まれた時から成長速度がバラバラだから、なんかそろせいだろ?きっと。
「なあ、グラニェール。お前は俺のもんだろう?お前の全ては俺のもん、俺はお前から全てを奪ったんだぞ?ふふ、どうだ?違うか?」
「そう……かな?俺はそれ以上の全てをアルトゥスから与えられたと思う」
あー、やっぱりグラニは頭が悪いなぁ!
「お前が俺にくれたんだ。全部俺に与えたんじゃないのか?ん?なんか俺に寄越してないものがあるのかぁ?んん?」
少し機嫌が悪い演技じみた台詞を吐くと、グラニは顔色を変えながらブンブンと首を振る。
「ない!全部、全部アルトゥスにあげた!」
「なら、俺はお前から与えられ、俺はお前から奪った。だろ?」
それでもう良いじゃないか。
「ついでにお前の命まで奪おうって言うんだ。びっくりしちゃうよな……」
「俺の命もアルトゥスに上げたから、当たり前だ!アルトゥスが死んだら俺も死ぬのが当たり前だから!」
お前の当たり前、怖いなー。
「俺としては、お前がいるから出来たこの見た目だけ平和でも続けて欲しかったんだけどな。無理か?」
「無理だ!」
「そか」
無理だよなー、分かる。仮初の平和が壊れるより、狂った魔王様が大暴れする世界の方がやばいもんな。
「まー宰相さんが何とかしてくれるかな?」
「あいつ腹黒いからなんとかするよ、あいつの息子も腹黒いし。なんでメグに似なかったんだ?」
「そうだなー、何でだろうなー」
あの爺ちゃん宰相さんは、いつの間にかメグちゃんと夫婦になってた。
「アルトゥス様のお側にいる為です」
ってメグちゃんは言うし
「お二人からの信頼が厚い者を妻にすれば私の信頼も上がりますので」
なんて、愛はない!みたいな態度だったけど、子供が10人以上いるんだよね。ラブラブなんだ。
「手駒は多いに越したことは……」
「あーはいはい」
冷静にそんな事を言ってるし、俺の前では絶対に表情を崩す事は無いけれど
「どうなの?」
と、メグちゃんに聞くと
「かなりの野心家ですが、悪く無いですよ。アルトゥス様とグラニェール様の死後に魔王になりたいようです。死後で良いんだそうです」
と、はっきりメグちゃんに言っているらしいから、それなりに信頼とかもあるんだろうな。
ま、グラニェールより弱いけど、地道に地盤作りとかしているようだから、まあまあな魔王になれるんじゃないかな?
「んじゃ、良いかー」
「ああ、良いとも」
「じゃあ、グラニェール。死んでくれ」
「ああ、アルトゥス。お前の望み通り」
魔王も殺す神秘の毒を乾杯で飲み干し、抱き合って眠りについた。俺達は俺達としてもう目覚める事は無かった。
すぅっと魂が抜け出る。ああ、妹の元に帰るんだ。黒い塊か犬のようにまとわりついてしっかり背中に張り付いた。
グラニめ、自力で登れないからって俺にくっ付いたな?
役目とはいえ殺しすぎた重たいグラニを背負ってうんしょうんしょと登って行く。
はー、今回も頑張りました!っと。
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