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53 強くなったよな、俺
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「セリカ様!マーク!ライラ!」
「ジュード!神官達が浄化の魔法を屋敷全体にかけるそうです!マークとライラはどうなりますか!」
セリカ様の部屋に飛び込むと、青い顔でセリカ様は尋ねる。俺はこくりと頷き、マークとライラを見る。
なあ、二人はどうしたい?
ジュード、強くなった!僕、嬉しい!
ふん、なかなか頑張ったみたいね。仲間の痛々しい声が一つも聞こえなくなったわ。
うん、俺やり切った。俺、頑張れるよ、きっとこれからも……一人でも、頑張れる。セリカ様の事も守ってあげられる。なんせ、人間も助けたしね。
すごい!すごい!
凄いわ、ジュード!
「だから、安心して良いよ」
白くて丸い小さな光だった。それが二つだけ、ふわりと浮き上がる。
「マークとライラね。長い間、私を守ってくれてありがとう」
くるりとセリカ様の周りを一回だけ回る。時間がないからね。そして俺の真上まで来て
「さようなら、また会う日まで」
ひゅん!と凄い勢いで真っ直ぐ上へ飛んで行った。
マークとライラが飛び去った瞬間、長い長い詠唱の後完成した巨大な浄化魔法が発動する。
それはこの屋敷に何十年も巣食っていた、悪意のある人間達の魂を白く焼き尽くして行った。
「マーク!ライラー!!うわああああん!」
「良いのよ、泣いても。大切な友達だったんですもの」
行っても良いよとは言ったけど、二人は俺の大事な友達だったんだ。セリカ様に縋り付いて泣いてしまったけれど、俺の声は浄化魔法の音で掻き消されて、セリカ様以外には聞こえなかった。
また、マークとライラに会いたい。今度はずっと友達でいられるように。誰かにその命を奪われないように。
「セリカ様、セリカお母様。俺、もっと強くなります」
「ええ、そうね。私ももっと強くなるわ」
アデレードの思い通りに進んでたまるか。
「では、何も知らされていないジュードは物音に驚いて私の部屋に駆け込んできた」
「はい。セリカお母様に神官が来た事を聞き、これから挨拶に行きます。ついでにお母様の足が良くならないか聞く事にしましょう」
「そうね。この国にいる理由は、やはりアデレードの横暴ね」
うーん、と考えて俺はセリカ様に
「どうも、私の出自が怪しく、アデレードは私を学校にも社交界にも出さない。それを不憫に思ったお母様は、親類を頼りにあの寄宿舎つきの学園に入れてくれた、こんな感じでしょうか」
「そうね、齟齬はないわ。私が独断で行った理由としても問題ないわね。アデレードの考えと違っても、対外的に認めざるを得ない話だわ。違うと否定すれば不利になるのはあの人の方。
……それにしてもあのジュード・スタイラント元公爵に懸想していたなんて。政略結婚ながら、なんて物を夫にしたのかしら?頭が痛いわ」
「あは、あはは……」
へえ、前世の俺ってば普通の令嬢だったセリカ様にもあのをつけられて呼ばれるほどだったのか……。今更ながら裏でどんな風に呼ばれていたか気になってしまうな。
「ジュード!神官達が浄化の魔法を屋敷全体にかけるそうです!マークとライラはどうなりますか!」
セリカ様の部屋に飛び込むと、青い顔でセリカ様は尋ねる。俺はこくりと頷き、マークとライラを見る。
なあ、二人はどうしたい?
ジュード、強くなった!僕、嬉しい!
ふん、なかなか頑張ったみたいね。仲間の痛々しい声が一つも聞こえなくなったわ。
うん、俺やり切った。俺、頑張れるよ、きっとこれからも……一人でも、頑張れる。セリカ様の事も守ってあげられる。なんせ、人間も助けたしね。
すごい!すごい!
凄いわ、ジュード!
「だから、安心して良いよ」
白くて丸い小さな光だった。それが二つだけ、ふわりと浮き上がる。
「マークとライラね。長い間、私を守ってくれてありがとう」
くるりとセリカ様の周りを一回だけ回る。時間がないからね。そして俺の真上まで来て
「さようなら、また会う日まで」
ひゅん!と凄い勢いで真っ直ぐ上へ飛んで行った。
マークとライラが飛び去った瞬間、長い長い詠唱の後完成した巨大な浄化魔法が発動する。
それはこの屋敷に何十年も巣食っていた、悪意のある人間達の魂を白く焼き尽くして行った。
「マーク!ライラー!!うわああああん!」
「良いのよ、泣いても。大切な友達だったんですもの」
行っても良いよとは言ったけど、二人は俺の大事な友達だったんだ。セリカ様に縋り付いて泣いてしまったけれど、俺の声は浄化魔法の音で掻き消されて、セリカ様以外には聞こえなかった。
また、マークとライラに会いたい。今度はずっと友達でいられるように。誰かにその命を奪われないように。
「セリカ様、セリカお母様。俺、もっと強くなります」
「ええ、そうね。私ももっと強くなるわ」
アデレードの思い通りに進んでたまるか。
「では、何も知らされていないジュードは物音に驚いて私の部屋に駆け込んできた」
「はい。セリカお母様に神官が来た事を聞き、これから挨拶に行きます。ついでにお母様の足が良くならないか聞く事にしましょう」
「そうね。この国にいる理由は、やはりアデレードの横暴ね」
うーん、と考えて俺はセリカ様に
「どうも、私の出自が怪しく、アデレードは私を学校にも社交界にも出さない。それを不憫に思ったお母様は、親類を頼りにあの寄宿舎つきの学園に入れてくれた、こんな感じでしょうか」
「そうね、齟齬はないわ。私が独断で行った理由としても問題ないわね。アデレードの考えと違っても、対外的に認めざるを得ない話だわ。違うと否定すれば不利になるのはあの人の方。
……それにしてもあのジュード・スタイラント元公爵に懸想していたなんて。政略結婚ながら、なんて物を夫にしたのかしら?頭が痛いわ」
「あは、あはは……」
へえ、前世の俺ってば普通の令嬢だったセリカ様にもあのをつけられて呼ばれるほどだったのか……。今更ながら裏でどんな風に呼ばれていたか気になってしまうな。
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