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51 襲撃ですわ!

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 さてさて、私は約束通り庭にたくさんの鶏小屋を作って貰い、軍鶏を飼っている。金にモノを言わせて中々強い奴らを手に入れて来たので、我が鶏軍団は中々の猛者揃いなのよ!

「いけええええそこだあああああ!」

「うおおおおまけたあああああ!」

 研究者たちもお昼休みに盛り上がったりしているわ。まあ私は闘鶏自体に興味はなくて、どのオス鶏が勝つかだけなんだけどね!勝ったオス鶏と男前な性格のメス鶏をこの魅了の糸で結んで……フフフ卵を温めて貰って、強くて美味い鶏を!

「今は硬いだけだわ……」

 失敗してるんだけどね。やっぱり素人の庭先じゃだめね。こちらの国の農家を紹介してもらわないといけないわ。私がキングジュリエッタ2世を撫でていると、研究院が騒がしくなってきた。招かれざる客かしら?

「こんな研究院燃やしてしまえ!」

「どうせ危険な研究ばかりしてるんだろう!迷惑だ!」

「ここにあの出来損ない王子が隠れてるんだろ!出せ!責任を取らせろ!」

「コケーーーー!」

 あらやだ、キングジュリエッタ2世が無礼な客の声に威嚇し始めたわ。流石キングジュリエッタ2世頼もしいわ!ラグルさんより素敵な騎士っぷりね!

「ジュリエッタ様!ジュリエッタ様!」

 マーサさんが息を切らせて走ってくる。無礼な客のせいね。年上の女性は大切にしましょう?

「どうしました?マーサさん」

「あの、あの、突然数人の兵士を連れて、宰相様の……ご息女が、ジュリエッタ様を捕らえよと!」

「意味が分からないわね。ラグルさんは?」

「にらみ合っておいでです!」

 少し心配ですね、助けに行かなければならないのですよね?やだわー私、か弱いのに。

「王宮の方には誰か助けを求めてありますか?」

「え、ええ。それは騎士のリンツ様が馬を飛ばしておいでです」

 それなら時間稼ぎをすればなんとかなりそうね。

「でも私が顔を出したら何をするか分からないわね……隠れて様子を見れる場所ってあるかしら?」

「こちらです!」

 私はマーサさんに案内されて研究院の中に戻って行った。キングジュリエッタ2世までついて来たわ、私を守ってくれるのかしら?素敵ね。



「イルセリーア・デンヌ!何しに来た!ここはお前みたいな粗暴な人間の来るところではない!さっさと帰れ!」

「うるさいわね!ラウの癖に!私はジュリエッタとかいう泥棒猫を退治しに来たのよ!さっさと出しなさいよ!」

 マーサさんに案内されて正面玄関付近でやりあっている二人を建物の2階の窓からそっと見る。

「あの茶色の髪がグルグルしてる女性がイルセリーア・デンヌ嬢?」

「ええ、そうでございます。お年はラウ坊ちゃまと同じでございますのに、婚約者を決めずにおられる変わった方でして、あの……行き遅れ気味で、宰相様の頭痛の種の一つであらせられるとか」

「あらまあ……」

 イルセリーア嬢はまあ整った顔をしていると思う。茶色の髪をグルグル巻きの縦ロールにして、高く結い上げている。何かを威嚇してるのかしら?頭を盛るのってマウントを取りたいって転生前の雑誌で昔読んだ気がするわ。そして化粧が濃い。目がきつくてかなり意地悪顔なのに、それが更に濃い化粧で強調されている。唇なんか真っ赤だわ。凄い、血でもすすったのかしら??
 ……私が化粧をしなさすぎ?いえいえ、最近マーサさんの教育の賜物でまじめにやってます!私自身はヘタクソなんですけど、メイドさんたちが凄いんで。

「やけにラグルさんと親し気だけど、仲がいいの?ラウって呼んでる」

「まさか!とんでもございません!ラウ坊ちゃまはイルセリーア様の事を心底嫌っておりますから。婚約解消の際に投げつけられた言葉がショックで暫く寝込み、このマーサにまで泣きながら「マーサは僕の事嫌いにならないで!わざとじゃないの」と訴えたり、夜に何度も飛び起きたり……マーサはそのたびになんであのような方に坊ちゃまを合わせてしまったのかと、後悔して後悔して……」

「あああ……ごめんなさい、悲しい事を思い出させてしまったわね」

 ヨヨヨ、と泣き崩れるマーサさんの背中をポンポンしてあげる。本気で嫌われてるわね、イルセリーア様。可哀想だけど自業自得だわ。



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