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 恙無く授業を終え、

「ラグルさんって良い人ですね!」

 と、黒い糸を巻かれていないのに、何故かラグルさんの手下みたいになってしまったショーンさんを冷めた目で見送って寮に帰ろうとすると、止まっていた馬車から声をかけられました。

「ジュリエッタ!こちらへ」

「あら?お兄様?」

 うちに馬車なんてないから、貸し馬車だろうけど、何故か青い顔をしてお兄様が手招きしている。何かしら。

「とりあえず、乗って。家に行くぞ」

「どうかしたのですか?」

「ついてから、お父様から聞いてくれ」

「はあ?」

 何かしら?明日も授業があるのに緊急の用事なのね?とにかく、ガタガタと揺れ、お尻が痛い馬車に送ってもらう。
 首都にある小さなうちのタウンハウスでは、一人だけいるメイドのおばあちゃんと、お母様が落ち着きなくうろうろしていた。

「ただいま帰りましたが、どうなさいました?」

「ジュリエッタ!と、とにかくお父様の所へ!」

「はあ?」

 家族全員に背中を押されるようにお父様のお部屋につき、扉をノックした。

「お父様?ジュリエッタですが」

「入れ!早くー」

 なに?何なの??どこか潰れて借金でも増えた?!

「お父様……?」

 入るとお父様も青い顔をしてうろうろしている。

「ジュリエッタ、信じられないがお前に結婚の申し込みが来た」

「あー……はい。とうとうですか、どこの物好きですかね」

 分かってる分かってるわよ、何せ私は下っ端とは言え貴族の娘ですもんね。政略結婚仕方がない。格上から望まれたら断れない。
 きっとお父様のこの青い顔。良くない条件下の格上貴族からのお話なんだ。あーあ、嫌だけと仕方がない。どこかのじーさんの後妻とかかもしれないなー。
 私、あんまり可愛くないしな、選べないよなー。

「それがな……すまない、絶対に断れない相手からだ……」

「はぁ……どこの誰なのですか?そんな物好きな相手は?」

 ごくりと、息を呑んでからお父様は、震える手で高そうな紙の手紙を持ち上げた。

「り、隣国第二王子、ラウガラウ・ツィオン・リデル殿下だ」

「手紙の誤配達では?」

「我が家にお届けくださった使者殿はしっかりリデル国の正装をしておられたが何度も確かめた!何度見てもここにジュリエッタ・アースルとの婚約を望むと書かれておるのだ」

 お父様は高そうな紙に高そうなインクでなんか凄い感じに書いてある手紙をばっ!と目の前に広げた。

「あ、本当だ」

 しかも、お隣の国の正式書類に押す判子まできっちり押してある。

「なんで?」

「こっちが聞きたいわーーー!ジュリエッタ!お前!学園で何かやらかしたのかー?!」

「何もしてませんよ?!」

「じゃあなんでこんな手紙が届くのだ?!」

「しかもドレスと贈り物がたくさん来てますわよ……」

「ジュリエッタ!最近誰か知らない人と会わなかったか?!どこかに出かけたりしていないか?!」

「ど、どこにも行ってません……学園と寮しか」

 ……ラグルさんとお茶を飲みに行ったわね。ラグルさん?

「ラウガラウ……?まさか、ねえ?」

 あらやだわ、何かしらこの寒気は……最近寒気を感じる事が多過ぎよ。風邪かしら?目の前の現実から逃げる方法を探してみたけれど、見つからなかった。
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