上 下
12 / 58

12 水色のリボン

しおりを挟む
 2年生の特待生のアンナが学園に来なくなっても、あまり騒ぎにはならなかった。そしてマークス第一王子とムジール公爵令息、ジェルウッド侯爵令息の婚約者達は戻ってきて平謝りする彼らを許して一時の平穏を得た。


「学園って一体……」

 2年生の事件は良く伝わってこなかったが、ジュリエッタは兄リカルドの姿を見て驚いた。なんです?あれ?と。今度はリカルドに水色のリボンが巻き付いていたのだ。

「水色……でもリボンだわ。少し可愛い。でもこれも魅了の類にみえるわ……」

 そして気が付いたのだ。同じクラスの男子からそのリボンが伸びていることに……。

「そーい!!」

 慌て気味にそのリボンを引きちぎる。お、お兄様にはしっかり家を継いでもらわねばならないので、BLはちょっと困るのである。それにしてもここ数日、マリーンさんからの攻撃が激しい。

「リカルドさまぁ~!」

「すまん!フローラ!一緒に逃げてくれ!」

「え、あ、はい!」

 休み時間や放課後になるとマリーンさんは1年生なのに、2年のお兄様達に突撃してくる。

「もぉ!リカルド様ったら私のことがぁ、好きなのに!」

 お兄様はそんな態度を一欠片も取っていないし、マリーンさんのタコ足も私が華麗にブロックしたり切ったりしているから、届いてはいないのだけれども。

「うざいでございますっ!!」

「ジュリエッタ、いつも通りお口が悪いわね」

 と、リースに言われながら苛立ちが溜まっていたのよね。それもあって同じクラスの平民の特待生ショーンからリボンが伸びていたのを見つけてしまい。私は盛大にキレた訳です。

「ごめんね、ショーンさん。少しだけお時間をくださる?」

「ジュリエッタさん……あ!リカルド様の妹の!」

 ショーンさんは何かを勘違いしたのか、私の後にホイホイついてきたわ。そのまま人気のない空き教室に入ってお話をさせて貰う。
 学園とは言え、男性と二人っきりは外聞が良くないので手早く終わらせる事にした。

「ショーンさん。私の兄に魅了かけるのやめてくれる?ここはBLゲームの世界じゃないのよ!私達は生きてるの!お兄様にはしっかり子供を持ってもらって家を継いで貰わないといけないし、可愛いフローラ様という婚約者がいてラブラブなの!」

 ショーンさんは心底驚いた顔をした。うっ!この子可愛いわ!流石主人公ってくらいな可愛い顔よ!

「えっ!ここは「虹星!明日へのパラダイム」略して「虹のアスパラ」じゃないの?!」

「違うわよ……何よ、アスパラって……」

 そこにつっこんた私を許して欲しい。

「ちょっと名前が違うなって思ってけど……違うんだ、アスパラじゃないんだ……」

 ショーンさんはがっくりと肩を落とした。ちょっと可哀想ね。

「でもゲームとは違うと思うけど、あなた魅了が使えるみたいね。恋愛、有利に出来るんじゃない?人の迷惑にならなきゃ自己責任で楽しんだら良いじゃない?」

「ジュリエッタさん、良いのかな?僕、男の人と恋愛しても」

「良いんじゃない?応援するわ」

 好きになるのは自由だからね
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴
恋愛
 私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。  もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。  ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。 番外編 謎の少女強襲編  彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。  私が成した事への清算に行きましょう。 炎国への旅路編  望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。  え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー! *本編は完結済みです。 *誤字脱字は程々にあります。 *なろう様にも投稿させていただいております。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

処理中です...