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52 僕は上弦で欲求不満です

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「出て行けーーー!」

「し、失礼しますーー!」

 衛兵の宿舎でゆっくりしていたのに、次の日にはまたあの落ち着かない部屋に連れ戻された。とりあえず落ち着かないので趣味の悪い調度品は撤去させる。

「誰が持ち込んだか知らないけど、成金趣味のギラギラしただけの置物とかいらないから!しかもなにこれ偽物じゃん!キラキラが禿げてなんか見えてる!本当、これ買った人誰?騙されまくってんだけど?!」

 僕につけられている侍従君が小さくなりながら小声で言う。

「あ、あのそちらは宰相閣下がお買い求めで……」

「はあ?!あの人見る目なさ過ぎない?まさかとは思うけど、国家の財産で買ってないよね?この悪趣味な上に偽物のへんな置物を!」

「そ、そのまさかであるかと思います……」

「普通にあり得ないからーーー!」

 僕の叫び声はますます大きくなって、近くにいた宰相は真っ赤になってプルプル震えながら帰って行ったみたいだ。
 金の裸の子供が立ってる金ピカの像なんて誰が部屋に飾りたいもんか!変な形の壺はちょっと触ったら壊れるから、壊れた物を売りつけられたらしいし。本当にいいカモにされてるみたい。

 おかしなものを全部運び出させて、僕はやっと一息ついた。

「はぁ……欲求不満だよぉ……ファイさぁん……」

 ファイさんに会えなくなってから1か月以上立っている。会いたい、すごく会いたい。

「痛い……したい……」

 僕の僕はファイさんの事を考えるだけで爆発寸前だ!ああ!ファイさん!ファイさぁーーーんん!!早く!早く抱かせて!!!

「あの、陛下……?」

「あぁ……」

 廊下からあの激臭娘の声が聞こえた。それだけで僕の僕はぷしゅーと音がするくらいの勢いで萎びて倒れてしまった。
 わかるよ、僕。いくら何でも無理だよね、わかる。

「絶対に扉を開けるな!あと君とは結婚もしなければ婚約もしない!僕には愛する人がいるんだから!」

「そんなわがままを仰らないでください」

「わがままなのはそっちだろう!お前らのわがままを僕に押し付けやがって!僕は国王になんてならない。お前らの奴隷じゃないんだから!」

 欲求不満のイライラで僕はかなり怒りっぽい。我慢も限界だそれなのにこいつらは戴冠式がどうとか婚約がどうとか、自分達の勝手を僕に押し付けて来る

「僕に言う事を聞かせたかったらファイさんを連れてこい!ファイさんの言う事なら何だって聞いてやるっ!」

 ファイさんがやれって言うなら腹踊りだって国王だってなんだってやってやりますよ!その代わり王妃様の椅子にはファイさんに座って貰いますけどね!
 あー嫌そうに豪華な椅子に座るファイさん、想像しただけで可愛いです。くぅ~!

「なるほど、ファイさんですね。分かりましたわ」

 カツンカツン、硬い靴の音が廊下に響きながら遠ざかって行く。え?本当にファイさんを連れて来てくれるの??
 こんな状況ながら、僕はちょっとワクワクしてしまった。

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