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30 僕達は上弦で交流を深める

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「うおおおあおーーー!」

「せやぁあああーー!ファイさん!そっちです!」

「任せろ!!とう!」

 ファイさんの剣が鹿の首をスッポーンと飛ばした。

「凄い……うきゃーー!」

「ぎゃーーー?!」

 獲物の血が降り注いで、二人で逃げ回る。臭い!温泉に急いだ。

「ああー駄目じゃよ、ファイちゃんにキースちゃん。捕まえたらすぐ処理せんとなぁ~」

「ファイちゃん……」

 僕もファイさんも良い大人なんだけど、村のじーちゃんやばーちゃんに比べたらまあ、ひよっこの「ちゃん付け」なんだろう。

「ほら、ばーちゃんにかしてごらん、こうして、こう」

 なんか魔法を見ているかの如く、鹿が解体されてゆく。ばーちゃんのテク凄い!

「血抜きもされてるし、すげぇ……!」

「ほっほっほ。この辺りのモンなら誰でも出来るよぉ」

 下弦が終わって、僕とファイさんは食べ物集めに精を出す事になった。何せ村には店がほぼ無い!自給自足なんだ。
 しかも僕たちは下弦にはあまり出歩けない。だから上弦の間に食べ物を用意しておく必要がある。

「酷い目にあったからな……」

「ハイ……まさかアイテムボックスの食料を全部食べ尽くすなんて考えても見ませんでした」

 お腹が空いたら買い物に行けば良いではないのだ!ひもじくてはエッチに励んでも大変なんだ、ヤったけど。
 幸いにもファイさんのアイテムボックスがある。食べ物が傷まないんだから、沢山入れておけば良い。だから僕達は狩人の真似事をしたりを始めたのだった。

「ファイちゃんもキースちゃんも筋は良いぞい。仕掛けを貸してやるから、川に行ってごらん」

「ありがとうございます」

 じーちゃんに説明して貰ったけどいまいち分からず、結局は腰が痛いじーちゃんに実地で教えて貰った。

 代わりにファイ湿布を貼ってやる。

「キース!金槌と釘!」

「ファイちゃん、どうしたんじゃ?」

「うるせぇ!こんな閉まらねぇ扉なんざ俺でも直せるっつーの!」

「ありがとうのう、ファイちゃん」

 なんだかんだで村にも僕たちは馴染んで行った。

「キースちゃん、野菜が取れたよ」

「野菜だーー!山菜しか食べてないから、野菜が懐かしい!」

 山菜も美味しいんだけど、やっぱりちゃんとした野菜の味が恋しくなるんだよねぇ。

「種を少し分けてあげるから、キースちゃんも植えてみたらどうじゃ?」

「!やってみます!」

 僕は農家の真似事も始めてみた。家の裏手に畑を作ってみたんだ。

「うおおおおー!開墾っ!」

「うわぁ……ファイさんって意外とパワフルですよね」

「意外とってなんだ?!」

 鍬を思いっきり振り上げて、畑を耕して行くファイさん。聞けばファイさんが弱い弱いと嘆く錬金術師だけど

「ストレングスはかなり振ってる」

「……」

 僕なんかより何十倍も強かった。比較対象が竜騎士だから、弱いって言ってるだけだったんだよね。
 牛か何かで引かせて、引っこ抜くような切り株を一人で抜いたファイさんを見て、僕はちょっぴり冷や汗をかいた。

「エッチの時に背骨を折られないように、僕も体を鍛えよう」

 って独り言を呟いたら聞かれてて殴られた。痛い!
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