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龍
60 普通の子供
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「フェルマー?シュガー、お客さんですか?」
「れれれれれれれれい!おはようございます!ごめんなさい、煩くて!」
一気に挙動不審になるフェルマーに、ラジーはキョトンと目を丸くした。小さな子供に必死で謝っているのだ。知らない奴から見れば驚くことだろう。
「しゅがー」
ん!と両手を開いて抱っこしろのポーズをする6歳子供姿のディをひょいっと膝の上に乗せる。重さは軽いんだよなぁ。
「だれとおはなししてたのっ!うわきなの?」
「そんな訳ないだろう?フェルマーの元パーティーメンバーだってよ」
「そうかーしゅがーがうわきするわけないもんねー」
「あ、当たり前だろ!」
良かったディの機嫌は悪くな
「おれからはなれちゃだめってゆった」
「うっ」
「やくそくやぶるこは、どーなるのしゅがー?」
「う、うう……お、お仕置きですか」
「ふふ、たのしみねー」
助けて!フェルマー!フェルマーは絶望的な顔のまま、首を横に振った。あーーーー!
「フェルマー?元パーティーメンバーなんですか?紹介してくれますか?」
にっこり、6歳子供レイは笑った。可哀想なフェルマー。レイのあの笑顔、あの普通の子供に擬態した喋り方、1週間監禁コースだわ。
「ひぃ!レイ!ももももう昔の仲間です!い、今はレイがいますので!レイが1番ですっ!!!」
「フェルマー」
「ひぃー!あそこにいるのが、S級パーティー「ドラゴンバスター」のリーダー、ラジーです!」
そこで、一旦フェルマーは言葉を切った。そして
「こ、こちらが…あの……その…」
フェルマーは真っ赤になってモゴモゴと口籠った。あ、レイ性格わりぃ!
つまりレイは、フェルマーが昔の知り合いに見た目子供の自分を「夫である」と言わせたいのだ。
はっきり言っておっさんの域に足を突っ込みまくっている37歳の男に、同性のしかもこんなに小さい子供が旦那様だと言わせたいのだ!
それは人間の感覚に照らし合わせれば、考えられない事だろう、「おかしい」と言われる事だろう。それを旧知の前で公表して見せろと言っているのだ。
フェルマー!がんばれ!
「あの……その…あ、あ、」
フェルマーの顔は赤くなったり青くなったりでもはや紫色かも知れない。死にたく無ければ人間の常識を打ち破るしかない!
「こ、この、この子が、」
「フェルマー?」
にっこり、悪魔の微笑みは非常に天使だ。
「なんだっつーんだ!そのガキはお前の隠し子かよ」
「違うっ!この子は……この人は!わ、私の……私の!私の大事な旦那様ですからっ!」
ばふん!フェルマーから湯気が上がった気がした。……あんまり嫌がっているように見えない。フェルマーは意外とレイの事を好いているようだ、良かったな、レイ。
俺とフェルマーにしか見えない角度でそれはそれは満足そうにレイはにやぁ…っと笑った。
「合格じゃ、フェルマーよ」
フェルマーに抱っこを求める様子は穢れを知らぬ小さな天使だが、嫁を試す言葉は腹黒ジジィだ。
「は?は!ははは!!フェルマー!旦那様?旦那様っつったか?!そのガキを!マジか!お前いくつだよ!おっさんだろ、おっさん!おっさんがガキの嫁かよ!逆じゃねーのか?!ええ?」
ラジーは腹を抱えて笑い出した。後ろのメンバーもきょとんと驚いていたが……ラジーほど笑いはしなかった。
「不快じゃな」
フェルマーに抱き上げられたまま、レイは笑顔を崩さず、小さな声で言った。
「あがっ?!」
ぐしゃり、ラジーが潰れた。まだ人の形は保っている。しかし、上から何か重い物を乗せられたように床にべったりと張り付いている。
「あがっ……が……」
ミシミシと音が聞こえるほどだ。人の骨がかけてはいけない方向に力を加えられて、限界に打ち震える音。
死ぬ あれは死ぬ。何か見えない何かによって、潰されて死んでしまう。
この場にいた全ての人間に恐怖が駆け巡る。
「れい、めーよ。ゆかがこわれちゃうー」
のんきな子供の声がして、恐怖と力がふっと消えた。
「消さずとも。大丈夫じゃ、床は壊れぬよ」
「でも、めーなのよ。にんげんはなかみがでるとくさいのよー」
「臭いか、それも不快じゃの。しかしもう臭うではないか」
うえーっ!ディは鼻をつまんだ。
「しゅがーここやだーくさいよーおへやでクンクンしようよ」
「クンクン?!新しいプレイかぁ?!」
何を…何をされるんだ!俺は!
「まだ、生きておるぞ?」
レイは子供らしい笑顔を残ったドラゴンバスターのメンバーに向けた。
恐怖と圧から解放されて腰を抜かしていたが、慌ててラジーに駆け寄る。耳や目から血が吹き出し、あちこち骨は折れているが、命はまだあるようだ。
「きれいにしておけよ?いくぞ、フェルマー」
子供らしからぬ口調で告げるレイにフェルマーは従う。
「はい、旦那様。あ、あと店の扉に閉店のプレートをお願いしますね」
呆気にとられるドラゴンバスターのメンバーにフェルマーは言う。
「この世には逆らえる者と逆らえない者の他に、逆らっても良い者と逆らってはいけない者がいますが」
1度言葉を切って
「逆らう意味さえないものや、そもそも逆らうという事象が用意されていない者もいるんですよ」
どんな深淵を覗いたと言うのだろうか。フェルマーの目は凪いでいるようで、沈んでいるようで、それでいて昏く……喜色も浮かんでいる複雑怪奇だった。
ただドラゴンバスターのメンバーが分かったことは、掃除をして、ドアの外側には閉店のプレートをかけて、二度と訪れてはいけないということだった。
「れれれれれれれれい!おはようございます!ごめんなさい、煩くて!」
一気に挙動不審になるフェルマーに、ラジーはキョトンと目を丸くした。小さな子供に必死で謝っているのだ。知らない奴から見れば驚くことだろう。
「しゅがー」
ん!と両手を開いて抱っこしろのポーズをする6歳子供姿のディをひょいっと膝の上に乗せる。重さは軽いんだよなぁ。
「だれとおはなししてたのっ!うわきなの?」
「そんな訳ないだろう?フェルマーの元パーティーメンバーだってよ」
「そうかーしゅがーがうわきするわけないもんねー」
「あ、当たり前だろ!」
良かったディの機嫌は悪くな
「おれからはなれちゃだめってゆった」
「うっ」
「やくそくやぶるこは、どーなるのしゅがー?」
「う、うう……お、お仕置きですか」
「ふふ、たのしみねー」
助けて!フェルマー!フェルマーは絶望的な顔のまま、首を横に振った。あーーーー!
「フェルマー?元パーティーメンバーなんですか?紹介してくれますか?」
にっこり、6歳子供レイは笑った。可哀想なフェルマー。レイのあの笑顔、あの普通の子供に擬態した喋り方、1週間監禁コースだわ。
「ひぃ!レイ!ももももう昔の仲間です!い、今はレイがいますので!レイが1番ですっ!!!」
「フェルマー」
「ひぃー!あそこにいるのが、S級パーティー「ドラゴンバスター」のリーダー、ラジーです!」
そこで、一旦フェルマーは言葉を切った。そして
「こ、こちらが…あの……その…」
フェルマーは真っ赤になってモゴモゴと口籠った。あ、レイ性格わりぃ!
つまりレイは、フェルマーが昔の知り合いに見た目子供の自分を「夫である」と言わせたいのだ。
はっきり言っておっさんの域に足を突っ込みまくっている37歳の男に、同性のしかもこんなに小さい子供が旦那様だと言わせたいのだ!
それは人間の感覚に照らし合わせれば、考えられない事だろう、「おかしい」と言われる事だろう。それを旧知の前で公表して見せろと言っているのだ。
フェルマー!がんばれ!
「あの……その…あ、あ、」
フェルマーの顔は赤くなったり青くなったりでもはや紫色かも知れない。死にたく無ければ人間の常識を打ち破るしかない!
「こ、この、この子が、」
「フェルマー?」
にっこり、悪魔の微笑みは非常に天使だ。
「なんだっつーんだ!そのガキはお前の隠し子かよ」
「違うっ!この子は……この人は!わ、私の……私の!私の大事な旦那様ですからっ!」
ばふん!フェルマーから湯気が上がった気がした。……あんまり嫌がっているように見えない。フェルマーは意外とレイの事を好いているようだ、良かったな、レイ。
俺とフェルマーにしか見えない角度でそれはそれは満足そうにレイはにやぁ…っと笑った。
「合格じゃ、フェルマーよ」
フェルマーに抱っこを求める様子は穢れを知らぬ小さな天使だが、嫁を試す言葉は腹黒ジジィだ。
「は?は!ははは!!フェルマー!旦那様?旦那様っつったか?!そのガキを!マジか!お前いくつだよ!おっさんだろ、おっさん!おっさんがガキの嫁かよ!逆じゃねーのか?!ええ?」
ラジーは腹を抱えて笑い出した。後ろのメンバーもきょとんと驚いていたが……ラジーほど笑いはしなかった。
「不快じゃな」
フェルマーに抱き上げられたまま、レイは笑顔を崩さず、小さな声で言った。
「あがっ?!」
ぐしゃり、ラジーが潰れた。まだ人の形は保っている。しかし、上から何か重い物を乗せられたように床にべったりと張り付いている。
「あがっ……が……」
ミシミシと音が聞こえるほどだ。人の骨がかけてはいけない方向に力を加えられて、限界に打ち震える音。
死ぬ あれは死ぬ。何か見えない何かによって、潰されて死んでしまう。
この場にいた全ての人間に恐怖が駆け巡る。
「れい、めーよ。ゆかがこわれちゃうー」
のんきな子供の声がして、恐怖と力がふっと消えた。
「消さずとも。大丈夫じゃ、床は壊れぬよ」
「でも、めーなのよ。にんげんはなかみがでるとくさいのよー」
「臭いか、それも不快じゃの。しかしもう臭うではないか」
うえーっ!ディは鼻をつまんだ。
「しゅがーここやだーくさいよーおへやでクンクンしようよ」
「クンクン?!新しいプレイかぁ?!」
何を…何をされるんだ!俺は!
「まだ、生きておるぞ?」
レイは子供らしい笑顔を残ったドラゴンバスターのメンバーに向けた。
恐怖と圧から解放されて腰を抜かしていたが、慌ててラジーに駆け寄る。耳や目から血が吹き出し、あちこち骨は折れているが、命はまだあるようだ。
「きれいにしておけよ?いくぞ、フェルマー」
子供らしからぬ口調で告げるレイにフェルマーは従う。
「はい、旦那様。あ、あと店の扉に閉店のプレートをお願いしますね」
呆気にとられるドラゴンバスターのメンバーにフェルマーは言う。
「この世には逆らえる者と逆らえない者の他に、逆らっても良い者と逆らってはいけない者がいますが」
1度言葉を切って
「逆らう意味さえないものや、そもそも逆らうという事象が用意されていない者もいるんですよ」
どんな深淵を覗いたと言うのだろうか。フェルマーの目は凪いでいるようで、沈んでいるようで、それでいて昏く……喜色も浮かんでいる複雑怪奇だった。
ただドラゴンバスターのメンバーが分かったことは、掃除をして、ドアの外側には閉店のプレートをかけて、二度と訪れてはいけないということだった。
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