51 / 71
私がママよ
51 普通とは?2
しおりを挟む
「シュガー!船に乗りますよ!」
「はいー?」
借りていた宿屋の一室の扉がやや乱暴に開き、フェルマーが飛び込んで来た。
「港へ走ります!荷物をまとめて!急いで」
「はいーー??」
「早くっ」
ぴしりっと鞭が鳴ったので、俺は背中がピンと伸びて
「い、イエッサーーー!」
と、敬礼の一つもしそうな勢いで、荷物をまとめあげ、フェルマーの後ろについて走り出した。
「フェルマー、売れたの?」
「完売ですよ!売れすぎて逃げなきゃならなくなった!ほんと、シュガーは困ります!」
「ええーーー」
売れたなら良いじゃないか!1本1万ギルだったから100万ギルか、まあまあだな。
俺たちは全速力で走って就航ギリギリの船に飛び込んだ。甲板に転がり込んだ俺たちの後ろを振り向くと、港に兵士風の男が数人いて、口々に
「居たぞ!」「船だと?!」「旦那様に報告だ」
などの怒声が飛び交っているので、やはり俺たちが追われていたのだと分かった。
「フェルマー、話を聞いても良いよな?」
「その前に部屋に行きましょう……吹っかけられた分、良い部屋だと思いますよ」
とりあえず、フェルマーの後ろについてゆく。聞きたいことは山ほどあるが、それこそ部屋に着いてからだ。
そばにいた船員……にしては身なりのいい船員さんにチケットを見せると、恭しく案内をしてくれる。
「5号室……」
フェルマーと俺は5号室と書かれた扉をくぐり、部屋に入って扉に鍵をかけた。
よし、何があったか聞こうじゃないか?備え付けの高そうな椅子に腰を下ろして、フェルマーの話を聞くことになった。
「私があの美容液を持ち込んだのは、レブラン商会と言いまして、まあこの街で上から3番目くらいの大きさでしょうか?……後ろ暗さでいけば1番なんですけれどもね?」
出所をはっきりさせたくない物を持ち込むには最適な店なのだそうだ。フェルマーは冒険の途中でたまたま知ったので、ちょうど良く買い取って貰おうと思ったようだ。
「よっぽど侯爵夫人が必死だったのか、似ていると言って持ち込んだら、あっという間に半分監禁されまして。離さないと瓶を叩き割ると脅して逃げました。港に寄り、すぐ出航できる船ならなんでも良いと手配したら、まさかの豪華客船でして……」
「豪華客船……お金、払えたの?フェルマー……」
「……ちょうど、美容液の売り上げがありましたので……全額……」
「……なるほど……」
元々、船で移動するための資金だったから想定した通りの使い道なのだが、つまりは100万ギルの船旅か……。
「到着は5日後だそうです。食べ物や、掃除洗濯は全て込みなので……すいません、シュガー。まさかこんな高い船だったとは……」
「しょうがないさ、俺たちを追いかけてきてたやつらも本気っぽかったし。捕まってたら、一生美容液を作らされる気がするよ」
考えただけでもげっそりしてしまう。毒の方なら楽しめるだろうけど、美容液は疲れる。
「5日間ゆっくりして、ついたらバリバリ儲けよう。魔石を買わないといけないだろう?」
「そうですね。いくらあっても足りないはずです。1人だけならまだしも、2人もおいでだ。シュガーに負担をかけない為に魔石は大量に必要です」
うん、俺も頷いた。差別区別しないで育てるんだ。そう決めたんだ。
「頑張ろう、フェルマーも頼むよ。……しかし美容液はダメだったなぁ……もっと良い物にしないと……うーん、精力剤とか、媚薬の類とかどうだろう……ギリギリ合法なやつ」
「シュガー?!そっちの方がまずいのでは?!」
「合法だよ?!違法な効果モリモリの奴じゃないんだよ?!ちっとも効かないんだよ?!」
「シュガー?!?!違法って何?!?!」
俺とフェルマーのどの位なら、売って良いのか?という話し合いはずっと続き、結局結論は出なかった。
「はいー?」
借りていた宿屋の一室の扉がやや乱暴に開き、フェルマーが飛び込んで来た。
「港へ走ります!荷物をまとめて!急いで」
「はいーー??」
「早くっ」
ぴしりっと鞭が鳴ったので、俺は背中がピンと伸びて
「い、イエッサーーー!」
と、敬礼の一つもしそうな勢いで、荷物をまとめあげ、フェルマーの後ろについて走り出した。
「フェルマー、売れたの?」
「完売ですよ!売れすぎて逃げなきゃならなくなった!ほんと、シュガーは困ります!」
「ええーーー」
売れたなら良いじゃないか!1本1万ギルだったから100万ギルか、まあまあだな。
俺たちは全速力で走って就航ギリギリの船に飛び込んだ。甲板に転がり込んだ俺たちの後ろを振り向くと、港に兵士風の男が数人いて、口々に
「居たぞ!」「船だと?!」「旦那様に報告だ」
などの怒声が飛び交っているので、やはり俺たちが追われていたのだと分かった。
「フェルマー、話を聞いても良いよな?」
「その前に部屋に行きましょう……吹っかけられた分、良い部屋だと思いますよ」
とりあえず、フェルマーの後ろについてゆく。聞きたいことは山ほどあるが、それこそ部屋に着いてからだ。
そばにいた船員……にしては身なりのいい船員さんにチケットを見せると、恭しく案内をしてくれる。
「5号室……」
フェルマーと俺は5号室と書かれた扉をくぐり、部屋に入って扉に鍵をかけた。
よし、何があったか聞こうじゃないか?備え付けの高そうな椅子に腰を下ろして、フェルマーの話を聞くことになった。
「私があの美容液を持ち込んだのは、レブラン商会と言いまして、まあこの街で上から3番目くらいの大きさでしょうか?……後ろ暗さでいけば1番なんですけれどもね?」
出所をはっきりさせたくない物を持ち込むには最適な店なのだそうだ。フェルマーは冒険の途中でたまたま知ったので、ちょうど良く買い取って貰おうと思ったようだ。
「よっぽど侯爵夫人が必死だったのか、似ていると言って持ち込んだら、あっという間に半分監禁されまして。離さないと瓶を叩き割ると脅して逃げました。港に寄り、すぐ出航できる船ならなんでも良いと手配したら、まさかの豪華客船でして……」
「豪華客船……お金、払えたの?フェルマー……」
「……ちょうど、美容液の売り上げがありましたので……全額……」
「……なるほど……」
元々、船で移動するための資金だったから想定した通りの使い道なのだが、つまりは100万ギルの船旅か……。
「到着は5日後だそうです。食べ物や、掃除洗濯は全て込みなので……すいません、シュガー。まさかこんな高い船だったとは……」
「しょうがないさ、俺たちを追いかけてきてたやつらも本気っぽかったし。捕まってたら、一生美容液を作らされる気がするよ」
考えただけでもげっそりしてしまう。毒の方なら楽しめるだろうけど、美容液は疲れる。
「5日間ゆっくりして、ついたらバリバリ儲けよう。魔石を買わないといけないだろう?」
「そうですね。いくらあっても足りないはずです。1人だけならまだしも、2人もおいでだ。シュガーに負担をかけない為に魔石は大量に必要です」
うん、俺も頷いた。差別区別しないで育てるんだ。そう決めたんだ。
「頑張ろう、フェルマーも頼むよ。……しかし美容液はダメだったなぁ……もっと良い物にしないと……うーん、精力剤とか、媚薬の類とかどうだろう……ギリギリ合法なやつ」
「シュガー?!そっちの方がまずいのでは?!」
「合法だよ?!違法な効果モリモリの奴じゃないんだよ?!ちっとも効かないんだよ?!」
「シュガー?!?!違法って何?!?!」
俺とフェルマーのどの位なら、売って良いのか?という話し合いはずっと続き、結局結論は出なかった。
3
お気に入りに追加
489
あなたにおすすめの小説
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
嫌がらせされているバスケ部青年がお漏らししちゃう話
こじらせた処女
BL
バスケ部に入部した嶋朝陽は、入部早々嫌がらせを受けていた。無視を決め込むも、どんどんそれは過激なものになり、彼の心は疲弊していった。
ある日、トイレで主犯格と思しき人と鉢合わせてしまう。精神的に参っていた朝陽はやめてくれと言うが、証拠がないのに一方的に犯人扱いされた、とさらに目をつけられてしまい、トイレを済ませることができないまま外周が始まってしまい…?
転生するにしても、これは無いだろ! ~死ぬ間際に読んでいた小説の悪役に転生しましたが、自分を殺すはずの最強主人公が逃がしてくれません~
槿 資紀
BL
駅のホームでネット小説を読んでいたところ、不慮の事故で電車に撥ねられ、死んでしまった平凡な男子高校生。しかし、二度と目覚めるはずのなかった彼は、死ぬ直前まで読んでいた小説に登場する悪役として再び目覚める。このままでは、自分のことを憎む最強主人公に殺されてしまうため、何とか逃げ出そうとするのだが、当の最強主人公の態度は、小説とはどこか違って――――。
最強スパダリ主人公×薄幸悪役転生者
R‐18展開は今のところ予定しておりません。ご了承ください。
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
副会長様は平凡を望む
慎
BL
全ての元凶は毬藻頭の彼の転入でした。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
『生徒会長を以前の姿に更生させてほしい』
…は?
「え、無理です」
丁重にお断りしたところ、理事長に泣きつかれました。
天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します
バナナ男さん
BL
享年59歳、ハッピーエンドで人生の幕を閉じた大樹は、生前の善行から神様の幹部候補に選ばれたがそれを断りあの世に行く事を望んだ。
しかし自分の人生を変えてくれた「アルバード英雄記」がこれから起こる未来を綴った予言書であった事を知り、その本の主人公である呪われた英雄<レオンハルト>を助けたいと望むも、運命を変えることはできないときっぱり告げられてしまう。
しかしそれでも自分なりのハッピーエンドを目指すと誓い転生ーーーしかし平凡の代名詞である大樹が転生したのは平凡な平民ではなく・・?
少年マンガとBLの半々の作品が読みたくてコツコツ書いていたら物凄い量になってしまったため投稿してみることにしました。
(後に)美形の英雄 ✕ (中身おじいちゃん)平凡、攻ヤンデレ注意です。
文章を書くことに関して素人ですので、変な言い回しや文章はソッと目を滑らして頂けると幸いです。
また歴史的な知識や出てくる施設などの設定も作者の無知ゆえの全てファンタジーのものだと思って下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる