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人族の街

15 チョロい俺

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「シュガーはもうちょい体力つけた方が良いぜぇ?あれくらいでへばってちゃ楽しめないだろぉ?」

「勘弁してよ…トビー…俺は頑張った方だろ?お前なんていっぱつヤったら相手は死ぬんだから、何回もヤる必要ないだろ」

 トビーはへへっと笑いながら釘とハンマーを持つ。

「シュガーと楽しみたいんだよ」

「だから勘弁してって……」

 トントンと扉をトビーは直して行く。壊れたままじゃ怖くて眠れない。

「良いじゃん、俺らみたいのとヤれんのお前くらいなんだから」

「……毒を調合した負い目はあるけどさー」

 そう、2年前俺たちが捕まった人攫いの一味は今や小さいながらも暗殺ギルドになっているのだ。
 方法は毒。多い手口が、トビーと同じ体に毒を仕込む奴ら。ちょっとづつ毒を飲み続け、自らを毒人間にしていく。
 その毒を調合管理しているのが俺だ。

決して人体実験ではない。繰り返す、決して人体実験ではない!

 やらなければ、生き残れなかったんだ。あの時はそう思っていた。最近は……あ、うん。際どいラインを攻めすぎて怒られてる。

「よっし、出来たーっと。俺はオヤジに移動場所教えてそのまんま仕事いくからな」

「分かったーあ、オヤジにあんま変な奴に店のこと伝えんなって言っといてよ」

 りょーかい!トビーは俺の頬にぶちゅーっと強烈なキスをしてから扉を開け、街へ出て行った。動けないからってやりたい放題だ。俺は始終ベッドの中から答えている。足腰が痛くて立てない!

 どちらにしても彼等は常に薄い氷の上を渡っているようなものだ。自分自身を侵す毒。暗殺の失敗、仲間からの処分。
 トビーも仕事だと出て行った。2度と帰って来ない可能性がある。なら、気晴らしの1発や2発……何回やったか覚えてないけれど、待ち人が帰って来ないのは辛い事だ。
 
ため息をついて、そのまま眠りについた。




「起きろ、シュガー!引越しだ」

「えー。またぁ?」

「あの頭の悪い貴族が、衛兵引っ張ってお前を探してる」

「なにそれ、最悪」

 俺たちは荷物を詰め直し、また「店」を後にした。俺たちが引き払った後にあの男が扉を壊して入ってきたと、情報屋が教えてくれた。作法がなってない所の話しじゃないぞ!

「オヤジっ!あの馬鹿に情報流したの誰だっ!責任取れよ!」

 ギルドの隠れ家に飛び込んで、俺は怒鳴った。
 2年前はただの山賊の人攫いが、今は一丁前に高そうな机に座って、賢そうな顔をしかめている。学なんて無いくせに!文字も俺とトビーが教えたのに!

「ダンだ」

「あのクソ脳筋かよーーーっ!」

「教えた執事とやらが中途半端に漏らしたらしくてな。あちこちから切られてる。あの家は終わりだ。お嬢さんが死んだら処分する。違約金はたっぷり踏んだくるからしばらく逃げ続けてくれ」

「……りょーかい」

 ぶすっとむくれる俺に済まなそうにダンは声をかけてくる。俺たちより10は上をなんだが、ホント頭が悪い。

「わりぃなシュガー。後片付けはしとっから……あと、これな。迷惑料の手付けな」

 厳重に封印された小箱を渡される。

「お、もしかして!」

 俺はワクワクしながら、蓋を開けない。やばいやつだろ!この封印!

「お前の大好きな大毒竜ディアノスの牙だ」

「ヒュウ!許す許すー!」

「ホンット、毒の事になるとシュガーはチョロいな」

 トビーが呆れた顔で言うが良いじゃないか、ディの欠片を探すのは俺の生き甲斐だ。
 俺からずっと離れていたディの欠片達はみな不機嫌で、強い呪毒を放って誰彼構わず殺しまくる可愛い事をしてるんだ。
 そんな可愛い子ちゃんを集めないでどうするよ!箱の中に封印された1本は手の中でカタカタと不気味に揺れて喜んでいる。素直な可愛い奴め!

「そして情報なんだが、カタギのギルドに凄い盾が持ち込まれたらしいぞ」

 アホなダンでもヤバいものだと分かったのか声を潜めた。

「毒竜ディアノスの逆鱗で作られた盾だって話」

 は?!何それ凄い!


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