15 / 71
人族の街
15 チョロい俺
しおりを挟む
「シュガーはもうちょい体力つけた方が良いぜぇ?あれくらいでへばってちゃ楽しめないだろぉ?」
「勘弁してよ…トビー…俺は頑張った方だろ?お前なんていっぱつヤったら相手は死ぬんだから、何回もヤる必要ないだろ」
トビーはへへっと笑いながら釘とハンマーを持つ。
「シュガーと楽しみたいんだよ」
「だから勘弁してって……」
トントンと扉をトビーは直して行く。壊れたままじゃ怖くて眠れない。
「良いじゃん、俺らみたいのとヤれんのお前くらいなんだから」
「……毒を調合した負い目はあるけどさー」
そう、2年前俺たちが捕まった人攫いの一味は今や小さいながらも暗殺ギルドになっているのだ。
方法は毒。多い手口が、トビーと同じ体に毒を仕込む奴ら。ちょっとづつ毒を飲み続け、自らを毒人間にしていく。
その毒を調合管理しているのが俺だ。
決して人体実験ではない。繰り返す、決して人体実験ではない!
やらなければ、生き残れなかったんだ。あの時はそう思っていた。最近は……あ、うん。際どいラインを攻めすぎて怒られてる。
「よっし、出来たーっと。俺はオヤジに移動場所教えてそのまんま仕事いくからな」
「分かったーあ、オヤジにあんま変な奴に店のこと伝えんなって言っといてよ」
りょーかい!トビーは俺の頬にぶちゅーっと強烈なキスをしてから扉を開け、街へ出て行った。動けないからってやりたい放題だ。俺は始終ベッドの中から答えている。足腰が痛くて立てない!
どちらにしても彼等は常に薄い氷の上を渡っているようなものだ。自分自身を侵す毒。暗殺の失敗、仲間からの処分。
トビーも仕事だと出て行った。2度と帰って来ない可能性がある。なら、気晴らしの1発や2発……何回やったか覚えてないけれど、待ち人が帰って来ないのは辛い事だ。
ため息をついて、そのまま眠りについた。
「起きろ、シュガー!引越しだ」
「えー。またぁ?」
「あの頭の悪い貴族が、衛兵引っ張ってお前を探してる」
「なにそれ、最悪」
俺たちは荷物を詰め直し、また「店」を後にした。俺たちが引き払った後にあの男が扉を壊して入ってきたと、情報屋が教えてくれた。作法がなってない所の話しじゃないぞ!
「オヤジっ!あの馬鹿に情報流したの誰だっ!責任取れよ!」
ギルドの隠れ家に飛び込んで、俺は怒鳴った。
2年前はただの山賊の人攫いが、今は一丁前に高そうな机に座って、賢そうな顔をしかめている。学なんて無いくせに!文字も俺とトビーが教えたのに!
「ダンだ」
「あのクソ脳筋かよーーーっ!」
「教えた執事とやらが中途半端に漏らしたらしくてな。あちこちから切られてる。あの家は終わりだ。お嬢さんが死んだら処分する。違約金はたっぷり踏んだくるからしばらく逃げ続けてくれ」
「……りょーかい」
ぶすっとむくれる俺に済まなそうにダンは声をかけてくる。俺たちより10は上をなんだが、ホント頭が悪い。
「わりぃなシュガー。後片付けはしとっから……あと、これな。迷惑料の手付けな」
厳重に封印された小箱を渡される。
「お、もしかして!」
俺はワクワクしながら、蓋を開けない。やばいやつだろ!この封印!
「お前の大好きな大毒竜ディアノスの牙だ」
「ヒュウ!許す許すー!」
「ホンット、毒の事になるとシュガーはチョロいな」
トビーが呆れた顔で言うが良いじゃないか、ディの欠片を探すのは俺の生き甲斐だ。
俺からずっと離れていたディの欠片達はみな不機嫌で、強い呪毒を放って誰彼構わず殺しまくる可愛い事をしてるんだ。
そんな可愛い子ちゃんを集めないでどうするよ!箱の中に封印された1本は手の中でカタカタと不気味に揺れて喜んでいる。素直な可愛い奴め!
「そして情報なんだが、カタギのギルドに凄い盾が持ち込まれたらしいぞ」
アホなダンでもヤバいものだと分かったのか声を潜めた。
「毒竜ディアノスの逆鱗で作られた盾だって話」
は?!何それ凄い!
「勘弁してよ…トビー…俺は頑張った方だろ?お前なんていっぱつヤったら相手は死ぬんだから、何回もヤる必要ないだろ」
トビーはへへっと笑いながら釘とハンマーを持つ。
「シュガーと楽しみたいんだよ」
「だから勘弁してって……」
トントンと扉をトビーは直して行く。壊れたままじゃ怖くて眠れない。
「良いじゃん、俺らみたいのとヤれんのお前くらいなんだから」
「……毒を調合した負い目はあるけどさー」
そう、2年前俺たちが捕まった人攫いの一味は今や小さいながらも暗殺ギルドになっているのだ。
方法は毒。多い手口が、トビーと同じ体に毒を仕込む奴ら。ちょっとづつ毒を飲み続け、自らを毒人間にしていく。
その毒を調合管理しているのが俺だ。
決して人体実験ではない。繰り返す、決して人体実験ではない!
やらなければ、生き残れなかったんだ。あの時はそう思っていた。最近は……あ、うん。際どいラインを攻めすぎて怒られてる。
「よっし、出来たーっと。俺はオヤジに移動場所教えてそのまんま仕事いくからな」
「分かったーあ、オヤジにあんま変な奴に店のこと伝えんなって言っといてよ」
りょーかい!トビーは俺の頬にぶちゅーっと強烈なキスをしてから扉を開け、街へ出て行った。動けないからってやりたい放題だ。俺は始終ベッドの中から答えている。足腰が痛くて立てない!
どちらにしても彼等は常に薄い氷の上を渡っているようなものだ。自分自身を侵す毒。暗殺の失敗、仲間からの処分。
トビーも仕事だと出て行った。2度と帰って来ない可能性がある。なら、気晴らしの1発や2発……何回やったか覚えてないけれど、待ち人が帰って来ないのは辛い事だ。
ため息をついて、そのまま眠りについた。
「起きろ、シュガー!引越しだ」
「えー。またぁ?」
「あの頭の悪い貴族が、衛兵引っ張ってお前を探してる」
「なにそれ、最悪」
俺たちは荷物を詰め直し、また「店」を後にした。俺たちが引き払った後にあの男が扉を壊して入ってきたと、情報屋が教えてくれた。作法がなってない所の話しじゃないぞ!
「オヤジっ!あの馬鹿に情報流したの誰だっ!責任取れよ!」
ギルドの隠れ家に飛び込んで、俺は怒鳴った。
2年前はただの山賊の人攫いが、今は一丁前に高そうな机に座って、賢そうな顔をしかめている。学なんて無いくせに!文字も俺とトビーが教えたのに!
「ダンだ」
「あのクソ脳筋かよーーーっ!」
「教えた執事とやらが中途半端に漏らしたらしくてな。あちこちから切られてる。あの家は終わりだ。お嬢さんが死んだら処分する。違約金はたっぷり踏んだくるからしばらく逃げ続けてくれ」
「……りょーかい」
ぶすっとむくれる俺に済まなそうにダンは声をかけてくる。俺たちより10は上をなんだが、ホント頭が悪い。
「わりぃなシュガー。後片付けはしとっから……あと、これな。迷惑料の手付けな」
厳重に封印された小箱を渡される。
「お、もしかして!」
俺はワクワクしながら、蓋を開けない。やばいやつだろ!この封印!
「お前の大好きな大毒竜ディアノスの牙だ」
「ヒュウ!許す許すー!」
「ホンット、毒の事になるとシュガーはチョロいな」
トビーが呆れた顔で言うが良いじゃないか、ディの欠片を探すのは俺の生き甲斐だ。
俺からずっと離れていたディの欠片達はみな不機嫌で、強い呪毒を放って誰彼構わず殺しまくる可愛い事をしてるんだ。
そんな可愛い子ちゃんを集めないでどうするよ!箱の中に封印された1本は手の中でカタカタと不気味に揺れて喜んでいる。素直な可愛い奴め!
「そして情報なんだが、カタギのギルドに凄い盾が持ち込まれたらしいぞ」
アホなダンでもヤバいものだと分かったのか声を潜めた。
「毒竜ディアノスの逆鱗で作られた盾だって話」
は?!何それ凄い!
9
お気に入りに追加
485
あなたにおすすめの小説
趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです
紫南
ファンタジー
魔法が衰退し、魔導具の補助なしに扱うことが出来なくなった世界。
公爵家の第二子として生まれたフィルズは、幼い頃から断片的に前世の記憶を夢で見ていた。
そのため、精神的にも早熟で、正妻とフィルズの母である第二夫人との折り合いの悪さに辟易する毎日。
ストレス解消のため、趣味だったパズル、プラモなどなど、細かい工作がしたいと、密かな不満が募っていく。
そこで、変身セットで身分を隠して活動開始。
自立心が高く、早々に冒険者の身分を手に入れ、コソコソと独自の魔導具を開発して、日々の暮らしに便利さを追加していく。
そんな中、この世界の神々から使命を与えられてーーー?
口は悪いが、見た目は母親似の美少女!?
ハイスペックな少年が世界を変えていく!
異世界改革ファンタジー!
息抜きに始めた作品です。
みなさんも息抜きにどうぞ◎
肩肘張らずに気楽に楽しんでほしい作品です!
私が悪役令嬢? 喜んで!!
星野日菜
恋愛
つり目縦ロールのお嬢様、伊集院彩香に転生させられた私。
神様曰く、『悪女を高校三年間続ければ『私』が死んだことを無かったことにできる』らしい。
だったら悪女を演じてやろうではありませんか!
世界一の悪女はこの私よ! ……私ですわ!
【1章完結】経験値貸与はじめました!〜但し利息はトイチです。追放された元PTメンバーにも貸しており取り立てはもちろん容赦しません〜
コレゼン
ファンタジー
冒険者のレオンはダンジョンで突然、所属パーティーからの追放を宣告される。
レオンは経験値貸与というユニークスキルを保持しており、パーティーのメンバーたちにレオンはそれぞれ1000万もの経験値を貸与している。
そういった状況での突然の踏み倒し追放宣言だった。
それにレオンはパーティーメンバーに経験値を多く貸与している為、自身は20レベルしかない。
適正レベル60台のダンジョンで追放されては生きては帰れないという状況だ。
パーティーメンバーたち全員がそれを承知の追放であった。
追放後にパーティーメンバーたちが去った後――
「…………まさか、ここまでクズだとはな」
レオンは保留して溜めておいた経験値500万を自分に割り当てると、一気に71までレベルが上がる。
この経験値貸与というスキルを使えば、利息で経験値を自動で得られる。
それにこの経験値、貸与だけでなく譲渡することも可能だった。
利息で稼いだ経験値を譲渡することによって金銭を得ることも可能だろう。
また経験値を譲渡することによってゆくゆくは自分だけの選抜した最強の冒険者パーティーを結成することも可能だ。
そしてこの経験値貸与というスキル。
貸したものは経験値や利息も含めて、強制執行というサブスキルで強制的に返済させられる。
これは経験値貸与というスキルを授かった男が、借りた経験値やお金を踏み倒そうとするものたちに強制執行ざまぁをし、冒険者メンバーを選抜して育成しながら最強最富へと成り上がっていく英雄冒険譚。
※こちら小説家になろうとカクヨムにも投稿しております
冷徹上司の、甘い秘密。
青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。
「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」
「別に誰も気にしませんよ?」
「いや俺が気にする」
ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。
※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。
ネコ科に愛される加護を貰って侯爵令嬢に転生しましたが、獣人も魔物も聖獣もまとめてネコ科らしいです。
ゴルゴンゾーラ三国
ファンタジー
猫アレルギーながらも猫が大好きだった主人公は、猫を助けたことにより命を落とし、異世界の侯爵令嬢・ルティシャとして生まれ変わる。しかし、生まれ変わった国では猫は忌み嫌われる存在で、ルティシャは実家を追い出されてしまう。
しぶしぶ隣国で暮らすことになったルティシャは、自分にネコ科の生物に愛される加護があることを知る。
その加護を使って、ルティシャは愛する猫に囲まれ、もふもふ異世界生活を堪能する!
転生幼女。神獣と王子と、最強のおじさん傭兵団の中で生きる。
餡子・ロ・モティ
ファンタジー
ご連絡!
4巻発売にともない、7/27~28に177話までがレンタル版に切り替え予定です。
無料のWEB版はそれまでにお読みいただければと思います。
日程に余裕なく申し訳ありませんm(__)m
※おかげさまで小説版4巻もまもなく発売(7月末ごろ)! ありがとうございますm(__)m
※コミカライズも絶賛連載中! よろしくどうぞ<(_ _)>
~~~ ~~ ~~~
織宮優乃は、目が覚めると異世界にいた。
なぜか身体は幼女になっているけれど、何気なく出会った神獣には溺愛され、保護してくれた筋肉紳士なおじさん達も親切で気の良い人々だった。
優乃は流れでおじさんたちの部隊で生活することになる。
しかしそのおじさん達、実は複数の国家から騎士爵を賜るような凄腕で。
それどころか、表向きはただの傭兵団の一部隊のはずなのに、実は裏で各国の王室とも直接繋がっているような最強の特殊傭兵部隊だった。
彼らの隊には大国の一級王子たちまでもが御忍びで参加している始末。
おじさん、王子、神獣たち、周囲の人々に溺愛されながらも、波乱万丈な冒険とちょっとおかしな日常を平常心で生きぬいてゆく女性の物語。
運命の出会いは牢屋から〜搾って逃げて捕まって〜
南野うり
恋愛
病気の母親の元へ向かう途中、何かの犯人に間違われて牢屋に入れられてしまった薬師のヒロイン。なんとか脱走を試みるが……
全4話完結。
軽い気持ちでお読みください。
Rシーンは予告なく入ります。
スペシャルサンクス☆ポルン様!洋菓子様!タイトルを考えていただきました!
異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!
東導 号
ファンタジー
雑魚モブキャラだって負けない! 俺は絶対!前世より1億倍!幸せになる!
俺、ケン・アキヤマ25歳は、某・ダークサイド企業に勤める貧乏リーマン。
絶対的支配者のようにふるまう超ワンマン社長、コバンザメのような超ごますり部長に、
あごでこきつかわれながら、いつか幸せになりたいと夢見ていた。
社長と部長は、100倍くらい盛りに盛った昔の自分自慢語りをさく裂させ、
1日働きづめで疲れ切った俺に対して、意味のない精神論に終始していた。
そして、ふたり揃って、具体的な施策も提示せず、最後には
「全社員、足で稼げ! 知恵を絞り、営業数字を上げろ!」
と言うばかり。
社員達の先頭を切って戦いへ挑む、重い責任を背負う役職者のはずなのに、
完全に口先だけ、自分の部屋へ閉じこもり『外部の評論家』と化していた。
そんな状況で、社長、部長とも「業務成績、V字回復だ!」
「営業売上の前年比プラス150%目標だ!」とか抜かすから、
何をか言わんや……
そんな過酷な状況に生きる俺は、転職活動をしながら、
超シビアでリアルな地獄の現実から逃避しようと、
ヴァーチャル世界へ癒しを求めていた。
中でも最近は、世界で最高峰とうたわれる恋愛ファンタジーアクションRPG、
『ステディ・リインカネーション』に、はまっていた。
日々の激務の疲れから、ある日、俺は寝落ちし、
……『寝落ち』から目が覚め、気が付いたら、何と何と!!
16歳の、ど平民少年ロイク・アルシェとなり、
中世西洋風の異世界へ転生していた……
その異世界こそが、熱中していたアクションRPG、
『ステディ・リインカネーション』の世界だった。
もう元の世界には戻れそうもない。
覚悟を決めた俺は、数多のラノベ、アニメ、ゲームで積み重ねたおたく知識。
そして『ステディ・リインカネーション』をやり込んだプレイ経験、攻略知識を使って、
絶対! 前世より1億倍! 幸せになる!
と固く決意。
素晴らしきゲーム世界で、新生活を始めたのである。
カクヨム様でも連載中です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる