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10 分かれた袂
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「げっ!」
「やあ……夕陽、久しぶりだね」
朝陽と久しぶりに顔を合わせた夕陽は、思わず変な声が漏れた。
「あ、兄貴だよな?な、何があったの??何もしてねーよな!俺と違って!!」
「……」
朝陽は目を伏せる。その朝陽は真っ青な顔をしていて、目は落ち窪み死人に近い。同じ歳なのに、夕陽よりグッと老け込み、30も半ばのようになっている。
自力で歩くことも出来ないのか、レイアの兄だという騎士に抱き抱えられていた。
「マジでどうなってんだよ!本当に兄貴かあ?なんかやばい事に手ェ出したの??俺、勇者何だけど??勇者の兄がやばいとかマジ勘弁してよー!!」
「っ!貴様ぁ!」
「アストル、やめて」
夕陽に掴みかかろうとする第二王子のアストルを弱々しく止めて緩く微笑んだ。
「魔王、倒してくれてありがとう、夕陽。帰ろうか……」
「……帰るけど、そんな格好で帰るの?母さんになんて言うの?!何もしないで遊んで、勝手に体壊したんでしょ?!ったく兄貴のくせに何やってんだよ!」
「夕陽っ!!朝陽様に……贄の勇者様になんて事を言うんだ!!」
「レイア??なんで朝陽に様なんてつけんのさ、朝陽は何にもしてなかったんだよ??」
更に口を開こうとしたレイアを朝陽は手を上げて制する。
「夕陽、帰るんだ、ろ?」
「あ、ああ!こんな世界もうやだし。兄貴も帰るんだろ?でもそんな格好で帰れんの??」
「……帰る、つもり」
まあ、良いや!夕陽はそう言い、
「さあ!もう良いでしょ!元の世界に返してよ!」
命を捧げる魔導士が10人、自らの命を使って、元の世界へ繋がる魔法陣を作り出す。
「夕陽。いつもお前はそうだった」
「朝陽?どうしたの?」
静かに口を開く、朝陽を振り返る。
「俺がどうやって何をしているかなんて、どうでも良いんだろう?弟の特権かな?たった何分かこの世に出るのが遅かっただけで」
「朝陽、どうしたのさ」
「もう、良いよな?お前に全て吸い取られる人生、もうやめても良いよな?」
「あ、朝陽?」
「ナイアス。俺はこの世界に残る。夕陽だけ帰してくれ」
「分かった」
良いのか、そう聞かなかった。ある程度予想していたのか、魔導士達が魔法陣を書き換える速度はとてつもなく早かった。
「両親の期待とか、将来とか、全部お前に託すよ。これからは全部一人でやってくれ。俺の上前なんかはねずにさ。俺はこの世界で俺みたいな贄が選ばれないように見守って行く」
「な、な、な、何?!どう言う事?!」
夕陽は帰り、朝陽は残る。この決断を決めた時、夕陽に吸い取られていた朝陽の力が全て朝陽に戻ってくる。
「え?え??」
「ああ、これが力、なんだ」
それ以上に夕陽の力も朝陽に上積みされる。
「え?何?!俺の力が、あ、朝陽に?!」
「今まで、俺の力を吸い取ってたのは夕陽だろ?どうだった?何もしなくてもレベルは上がったろ?魔法は覚えたろ?全部俺が学んで努力して得た力だよ」
朝陽の顔色が良くなって行く。年老いたように見えた顔も少し若さを取り戻している。
「お前が受けた傷も一瞬で無くなったよな?俺に来てたんだよ。お前はたくさん魔法も使えたよな?全部俺から吸い取って使ってたんだ……でも、それは仕方がない。そう言うシステムだったんだもんな」
ジェラールから、地上へ立たせて貰った朝陽の顔はスッキリしていた。
「バイバイ、夕陽。お前と言う枷が無くなって俺は自由だ。お前も俺が居なくて自由だろ?これでよかったんだよ」
「あ、朝陽?!あさひぃ!あにきーー!」
魔法陣は発動し、夕陽は元の世界に戻り、朝陽はこの世界に残った。
「やあ……夕陽、久しぶりだね」
朝陽と久しぶりに顔を合わせた夕陽は、思わず変な声が漏れた。
「あ、兄貴だよな?な、何があったの??何もしてねーよな!俺と違って!!」
「……」
朝陽は目を伏せる。その朝陽は真っ青な顔をしていて、目は落ち窪み死人に近い。同じ歳なのに、夕陽よりグッと老け込み、30も半ばのようになっている。
自力で歩くことも出来ないのか、レイアの兄だという騎士に抱き抱えられていた。
「マジでどうなってんだよ!本当に兄貴かあ?なんかやばい事に手ェ出したの??俺、勇者何だけど??勇者の兄がやばいとかマジ勘弁してよー!!」
「っ!貴様ぁ!」
「アストル、やめて」
夕陽に掴みかかろうとする第二王子のアストルを弱々しく止めて緩く微笑んだ。
「魔王、倒してくれてありがとう、夕陽。帰ろうか……」
「……帰るけど、そんな格好で帰るの?母さんになんて言うの?!何もしないで遊んで、勝手に体壊したんでしょ?!ったく兄貴のくせに何やってんだよ!」
「夕陽っ!!朝陽様に……贄の勇者様になんて事を言うんだ!!」
「レイア??なんで朝陽に様なんてつけんのさ、朝陽は何にもしてなかったんだよ??」
更に口を開こうとしたレイアを朝陽は手を上げて制する。
「夕陽、帰るんだ、ろ?」
「あ、ああ!こんな世界もうやだし。兄貴も帰るんだろ?でもそんな格好で帰れんの??」
「……帰る、つもり」
まあ、良いや!夕陽はそう言い、
「さあ!もう良いでしょ!元の世界に返してよ!」
命を捧げる魔導士が10人、自らの命を使って、元の世界へ繋がる魔法陣を作り出す。
「夕陽。いつもお前はそうだった」
「朝陽?どうしたの?」
静かに口を開く、朝陽を振り返る。
「俺がどうやって何をしているかなんて、どうでも良いんだろう?弟の特権かな?たった何分かこの世に出るのが遅かっただけで」
「朝陽、どうしたのさ」
「もう、良いよな?お前に全て吸い取られる人生、もうやめても良いよな?」
「あ、朝陽?」
「ナイアス。俺はこの世界に残る。夕陽だけ帰してくれ」
「分かった」
良いのか、そう聞かなかった。ある程度予想していたのか、魔導士達が魔法陣を書き換える速度はとてつもなく早かった。
「両親の期待とか、将来とか、全部お前に託すよ。これからは全部一人でやってくれ。俺の上前なんかはねずにさ。俺はこの世界で俺みたいな贄が選ばれないように見守って行く」
「な、な、な、何?!どう言う事?!」
夕陽は帰り、朝陽は残る。この決断を決めた時、夕陽に吸い取られていた朝陽の力が全て朝陽に戻ってくる。
「え?え??」
「ああ、これが力、なんだ」
それ以上に夕陽の力も朝陽に上積みされる。
「え?何?!俺の力が、あ、朝陽に?!」
「今まで、俺の力を吸い取ってたのは夕陽だろ?どうだった?何もしなくてもレベルは上がったろ?魔法は覚えたろ?全部俺が学んで努力して得た力だよ」
朝陽の顔色が良くなって行く。年老いたように見えた顔も少し若さを取り戻している。
「お前が受けた傷も一瞬で無くなったよな?俺に来てたんだよ。お前はたくさん魔法も使えたよな?全部俺から吸い取って使ってたんだ……でも、それは仕方がない。そう言うシステムだったんだもんな」
ジェラールから、地上へ立たせて貰った朝陽の顔はスッキリしていた。
「バイバイ、夕陽。お前と言う枷が無くなって俺は自由だ。お前も俺が居なくて自由だろ?これでよかったんだよ」
「あ、朝陽?!あさひぃ!あにきーー!」
魔法陣は発動し、夕陽は元の世界に戻り、朝陽はこの世界に残った。
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