68 / 71
とある令嬢物語
3
しおりを挟む
「んもう!アナベル様ったら!あそこは私を庇って、あの令嬢を断罪するところでしょ!!」
怒りも露わに、リアンは地団駄を踏んだ。
「私の可愛いリアン!どうしたんだ?!身分が低いと虐められたんだろう!大丈夫、私がついているからね?」
声真似をしながら、くるりと回る。
「これよ!これ!それなのにー!もうっ!腹が立つわーーー!」
般若の形相で歩くリアンを生徒達は遠巻きにして、見て見ぬ振りをした。
「交流会ダンスパーティー?」
「そうよ。リアン知らなかったの?」
寮の相部屋のセルフィがドレスの手入れをしていたので、不思議に思い聞いてみると、そんな答えが返ってきた。
「入学した時から楽しみにしてたのよねー。一部マナーやダンスのレッスンなんだけど、パーティーできちんと振る舞えないと、淑女とは言えないしね」
セルフィはお気に入りの若草色のドレスを体に当てて、くるりと回った。
「まあ……うちもお金がないから新調は出来ないんだけど、アレンジして着るのよ」
セルフィも同じ貧乏男爵令嬢である。それでもお気に入りというドレスは、セルフィに似合っていてとても可愛らしかった。
「どうしよう……私、ドレスなんかない……。」
一応1着だけ持たせて貰ったものはある。しかし、正妻が着古した自分には似合わない真っ赤なドレスだ。
ピンクの髪のリアンに赤いドレスは合わない。しかしレトレイ家の正妻はそれをわかっていても、この型遅れで古臭いドレスを寄越したのだ。
「なければ制服で良いそうよ。男子は制服が多いんですって」
そう、女子はほぼドレスという事だ。
「あなたのご自慢の彼氏にお願いしたら?婚約者がいる方は、新しいドレスを送っていただく方も多いらしいわよ?」
セルフィもリアンの事は好きではない。聞いてもいないのに、「今日のアナベルさまはぁ~とぉーってもお優しかったのぉ~!」なんて毎日聞かせられたら、誰でも嫌になる事だろう。
「えっ!ほんと?!お願いしてみる!」
ウキウキと明日アナベルが
「良いですよ、どんな最新のドレスにしましょうか?お飾りも一緒に見繕いましょう、リアン!」
と、言ってくれるのを楽しみに眠りについた。
「え?交流会パーティーですか?」
「ええ!そうなんですよ!」
アナベルは渋い顔をした。
「そう言えば忘れていたなぁ……。パーティーは苦手なんですよね……しまった」
ぶつぶつと歯切れ悪く呟くアナベルの顔を覗き込んで、リアンは自分で思っている一番可愛い笑顔を繰り出す。
「それでですねぇ…そのパーティーに着ていくドレスがぁなくてぇ」
「パーティーならエスコートする方をお願いしませんと……」
「それなら、私が!それでですね?ドレスが」
「ふむ。大丈夫、リアンなら上手くやれますよ」
アナベルはそう言い残し、笑顔で去って行った。
「あれ?あれれ……?」
くすくす……美しい細波のような笑い声が聞こえる。耳障りだったが、リアンは無視した。まだパーティーまでは日にちがある。なんとかアナベルにドレスを買って貰わないと!!
どすどすと廊下を歩くリアンの後ろ姿をアルナも見ていた。
「まぁあれが令嬢かしら?」
「あらあら、皆様。そんなことを言ってはいけませんわ。彼女も学んでいる途中なのですよ。ここは学び舎なのですから」
「そうですわね、ほほほ」
「ふふふ!」
どす黒い足の引っ張り合いは減ったと思う。そしてアルナも前よりリアン男爵令嬢をみてもモヤモヤしなくなった。
「あの噂は本当なのかしら?」
「噂のみを信じるのは危険な事と言いますが、アナベル様のご様子をみると、ねえ?」
うん、アルナも頷く。そう言われると、そうとしか見えない。
「ですわよね」
今まで、リアンの事が憎らしかったが、今は落ち着いた気持ちで見る事ができる。そしてやはり
「アナベルさまは素敵ね」
ほう、とため息をついた。
怒りも露わに、リアンは地団駄を踏んだ。
「私の可愛いリアン!どうしたんだ?!身分が低いと虐められたんだろう!大丈夫、私がついているからね?」
声真似をしながら、くるりと回る。
「これよ!これ!それなのにー!もうっ!腹が立つわーーー!」
般若の形相で歩くリアンを生徒達は遠巻きにして、見て見ぬ振りをした。
「交流会ダンスパーティー?」
「そうよ。リアン知らなかったの?」
寮の相部屋のセルフィがドレスの手入れをしていたので、不思議に思い聞いてみると、そんな答えが返ってきた。
「入学した時から楽しみにしてたのよねー。一部マナーやダンスのレッスンなんだけど、パーティーできちんと振る舞えないと、淑女とは言えないしね」
セルフィはお気に入りの若草色のドレスを体に当てて、くるりと回った。
「まあ……うちもお金がないから新調は出来ないんだけど、アレンジして着るのよ」
セルフィも同じ貧乏男爵令嬢である。それでもお気に入りというドレスは、セルフィに似合っていてとても可愛らしかった。
「どうしよう……私、ドレスなんかない……。」
一応1着だけ持たせて貰ったものはある。しかし、正妻が着古した自分には似合わない真っ赤なドレスだ。
ピンクの髪のリアンに赤いドレスは合わない。しかしレトレイ家の正妻はそれをわかっていても、この型遅れで古臭いドレスを寄越したのだ。
「なければ制服で良いそうよ。男子は制服が多いんですって」
そう、女子はほぼドレスという事だ。
「あなたのご自慢の彼氏にお願いしたら?婚約者がいる方は、新しいドレスを送っていただく方も多いらしいわよ?」
セルフィもリアンの事は好きではない。聞いてもいないのに、「今日のアナベルさまはぁ~とぉーってもお優しかったのぉ~!」なんて毎日聞かせられたら、誰でも嫌になる事だろう。
「えっ!ほんと?!お願いしてみる!」
ウキウキと明日アナベルが
「良いですよ、どんな最新のドレスにしましょうか?お飾りも一緒に見繕いましょう、リアン!」
と、言ってくれるのを楽しみに眠りについた。
「え?交流会パーティーですか?」
「ええ!そうなんですよ!」
アナベルは渋い顔をした。
「そう言えば忘れていたなぁ……。パーティーは苦手なんですよね……しまった」
ぶつぶつと歯切れ悪く呟くアナベルの顔を覗き込んで、リアンは自分で思っている一番可愛い笑顔を繰り出す。
「それでですねぇ…そのパーティーに着ていくドレスがぁなくてぇ」
「パーティーならエスコートする方をお願いしませんと……」
「それなら、私が!それでですね?ドレスが」
「ふむ。大丈夫、リアンなら上手くやれますよ」
アナベルはそう言い残し、笑顔で去って行った。
「あれ?あれれ……?」
くすくす……美しい細波のような笑い声が聞こえる。耳障りだったが、リアンは無視した。まだパーティーまでは日にちがある。なんとかアナベルにドレスを買って貰わないと!!
どすどすと廊下を歩くリアンの後ろ姿をアルナも見ていた。
「まぁあれが令嬢かしら?」
「あらあら、皆様。そんなことを言ってはいけませんわ。彼女も学んでいる途中なのですよ。ここは学び舎なのですから」
「そうですわね、ほほほ」
「ふふふ!」
どす黒い足の引っ張り合いは減ったと思う。そしてアルナも前よりリアン男爵令嬢をみてもモヤモヤしなくなった。
「あの噂は本当なのかしら?」
「噂のみを信じるのは危険な事と言いますが、アナベル様のご様子をみると、ねえ?」
うん、アルナも頷く。そう言われると、そうとしか見えない。
「ですわよね」
今まで、リアンの事が憎らしかったが、今は落ち着いた気持ちで見る事ができる。そしてやはり
「アナベルさまは素敵ね」
ほう、とため息をついた。
14
お気に入りに追加
2,821
あなたにおすすめの小説
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
婚約破棄は計画的にご利用ください
Cleyera
BL
王太子の発表がされる夜会で、俺は立太子される第二王子殿下に、妹が婚約破棄を告げられる現場を見てしまった
第二王子殿下の婚約者は妹じゃないのを、殿下は知らないらしい
……どうしよう
:注意:
素人です
人外、獣人です、耳と尻尾のみ
エロ本番はないですが、匂わせる描写はあります
勢いで書いたので、ツッコミはご容赦ください
ざまぁできませんでした(´Д` ;)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる