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54 心は連れて行って

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とうとうR18回
苦手な方は回避をお願いします。
鬱レベル★★★★☆


ーーーーーーーーーーーーーーーー




「ジュリアスさん」

 返事はない。

「ねえ、ジュリアスさん」

 体はまだ暖かい。でも、鼓動は止まっている。全ての血管は引きちぎられて、体と繋がっていない。

「あなたはヨシュアの事が好きだと言った」

 目は閉じられている。快活そうに笑う人だった。

「まだ、好きですか?」

「子供ですよ?」

「男の子なんですよ?」

「俺は冗談だと思ってましたが、本気だと聞いて気持ち悪いと思いましたよ」

返事はない。聞いている人も俺しかいない。

「気持ち悪いけど……まあ、嫌いではなかったです……俺を褒めてくれたし」

「……ほんとはちょっとくらいは好きかもしれません」

「ちょっとですよ!」

俺が喋らなくなると、途端に静かになる。

「……すいません……流石の俺も、ちょっと緊張というか、覚悟というか……時間がないのは分かってるんですけどね」

「……本当に考えた人、趣味悪いよね」 




「ふっ……っ」

俺は脂汗をかいている。痛い!痛い!物凄く痛い!

 人は死ぬ寸前、種を残そうと……勃つんだそうだ。その通りで良かった。

「ううっ……さ、裂けるうう…っこれで効かなかったら、マジで怒るからなっ!」

ふ、ふっ…あーもー俺何してんの……もう、もうーー!ナニしてんのだが!

 俺はジュリアスさんの体の上に跨って……そう、騎乗位でヤろうとしている。

「お、男同士でっなんでっ!なんでぇ……あああーーーっもうーーーっ!」

 ヤケになって全体重をかける、痛い!いたあああい!!

「は、入った……全部ぅ……」

 ギッチギチだが、全部飲み込んだ。

「これで、これで……」



ーー処女捧げよ

 それが条件だった。



「良いんだろ!!ちゃんと初めてだったぞ!!」

起きて!ジュリアスさん!!





「レン」

 猫を呼んだ。

「ヨシュア……」

 猫は答える。
どことからもなく、するりと潜り込んだんだろう。俺の足元に黒い体をすり寄せて来た。

「レンは……俺のこと、少し分かるよね」

「ヨシュアは……何か違う所がある」

「そう、俺はヨシュアだけど、ヨシュアになる前の記憶がある。だから8歳だけど、8歳じゃない」

「そうなのか……」

「うん……8歳のヨシュアじゃ耐えきれないから、ヨシュアの心はここに置いていくよ。お前が家族の所に連れて行って」

 俺は立ち上がる。痛ぇ歩くと痛ぇ。

「お前はどうすんだ」

 笑うしかない。支払いがあるから。

「ジュリアスさんを頼むよ」

「ジュリアス……分かったよ、ちゃんと埋めて…うおおお?!生き返った?!」 

 寝息がすぅすぅと聞こえるんだ。穴は塞がったし、心臓は何事もなく動いてる。頑張ったかいがありました、痛ぇ。

 俺はそっと扉から出る。みんな、扉の外に居た。

「ヨシュア……」

 俺は自分の名前を呼ぶ優しい声に答えられない。

「サーたん」

「ヨッちゃん、神聖結界の中はサーたんでも辛いわ、すぐ行くわよ」

 隣に現れたサーたんはすぐに俺を抱きかかえ飛んだ。

 後ろで声がする。振り返りたい、でも振り返れない。


 サーたんは魔王様の前に降りた。

「ヨシュア」

 うつむく俺に魔王様の声が上からかかる。

 パンっ!頬を叩かれた。俺の軽い体はそれだけなのに宙に浮き、ゴロゴロと転がった。

「処女をくれてやっても良いとは言わなかった」
 
 よろよろと俺は立ち上がる。俺は生きていなければならない。俺が生きていれば、魔王様は俺をおもちゃにしてしばらくは遊んでいてくれるらしい、そういう事だろう?
 怪我はしなかった。手加減してくれたんだろう。本気で叩かれたら、俺なんかひき肉だもんな。
 それでも魔王様の側に行き、来た時と同じ馬車に乗り込んだ。

 もう良い。最後に皆の顔が見れたもんな。

「ヨシュア、俺は気に食わん事は嫌いだ。分かるな?」

「はい」

「さあ、どうしようか?」




「あっあっあっーー!」

「ほら、見ろサリシュエル。啼けば玉が出るようになったぞ?」

 前髪をぐいっと掴み上げられ、前を向かされる。ポロポロと目からこぼれ落ちたのは涙でなく、玉だった。
 なんの感情もない顔でサーたんはこちらをみていた。

「良かったなぁ?ヨシュア?訓練の成果が出たじゃないか?」

「あ…あ……」

「聞こえてないな。ふふ、可愛いじゃないか。俺好みになって来たなぁ」

 魔王は笑う。

「処女じゃないと玉が出ないんじゃないかと思っていじれなかったが、まあそんな事もなかったんだな」

「あ…んっ」

「あれか、男だから良かったのか?尻の穴は使用済みだが、童貞だから?ありえる事かもしれんなぁ」

「あっあっあっ!いっ、いいっいくぅっ」

 激しく腰を打ち付けられて、本当にそうなのか、教え込まれた言葉を繰り返しているのか。誰にも分からない。

「それよりもヨシュア。俺の精を食らっても死なないのは素晴らしいな?」




「あ……」

 ベッドの上で目が覚めた。まだ生きている。体はいつも通り自由に動かなかったし、服もワンピースみたいなのを1枚着ているだけだ。
 ベタつきもないので、誰かが風呂に入れてくれたのだろう。もう意識のない間にきれいに洗われているのも慣れた。

 あれから毎日魔王様は俺で遊んでいる。良く飽きないなあ。

「ヨシュア!」

「まおう、さま」

 声が掠れて、上手に喋れなかった。

「ん」

 唇を突き出された。俺の方からキスしてこいという事らしい。自由に動かない体をなんとか動かして、唇にちゅっと触れた。

「ヤらせろ」

「……はい……」

 素直に足を開く。拒否する事は許されてはいない。望まれればどんな場所でも受け入れる。

「あっ…っ!」

 性急に突っ込まれたが、痛みもなくするりと入った。入ったには入ったが、圧迫感とか、奥まで届き過ぎてキツい感じとか。

「ヨシュア」

「は、はひ……」

 内臓が押されて、口から出そうな感じとか。ガンガン突かれてる時は、これ以上奥に突っ込まれているのかと思うとクラクラする。

「お前は何故壊れない?俺と繋がっているのに、呪われもしないし死にもしない」

「俺が、死んだ方が……っんっ、いいですか?」

 魔王様は笑った。

「いや?生きてきた方が良いな?これから啼かされるのに、生意気な口をきいてくる方が面白い」

「ひんっ!」

 何をされるか分かっている。解放されるのはいつか考えない方がいい。短い時はほぼ無く、2.3日突っ込まれ続けた事もある。
 サーたんに描かれたサキュバスの紋章のせいで食べなくてもなんとかなる。この辺はサーたんを恨んだ。



 魔王様は俺をどこにでも連れて行った。だから俺の扱いは魔王様の妃だ。大丈夫、分かってる。おもちゃで生贄だって事くらいは。

 サーたん達侯爵は全員無理矢理連れて来られているのだ。魔王様に関わらないでいたいはず。
 俺で遊んでいるうちはあまり呼ばれないようだし、何より

「ヨシュア、何処かに出かけようか?」

「すいません……痛いんで……」

「自分を癒せないのは不幸だな!」

 俺が出歩きたく無いと言えば、意外と城の中に居てくれる。
 だから人間界は魔王様に攻め滅ぼされていない。

「ヨッちゃんで遊んでるうちは……この辺りも……ヨッちゃんの家族も無事かもしれないわね」

 サーたんがこっそり俺にだけ呟いた言葉が俺の生きる糧だ。だから俺は生きていなくちゃ。


 でももうそろそろダメかも、サーたん。俺、もう頑張れないよ……。


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