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新しい土地
22 あらあらあらあら?
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「ママママママ、ママ!マリーッ!」
「あら?旦那様。どうなさったのです?こんな朝早くに寝室に飛び込んでくるなんて」
今日の朝早く、メイドが起こしに来る前に旦那様が飛び込んでいらしたので驚きました。
「ふにゃ……?」
わたくしと一緒に寝ているヨシュアが、旦那様の慌てふためいた声で目を覚まします。
わたくしの体が心配と、離れず寝ているのですが、ヨシュアもそろそろ8歳です。わたくしも人並みほどは体力がついたと自負しておりますので、1人で眠るようにしても良い頃なのかもしれません。
「とーちゃん、うるせぇっスよ」
「旦那様よ、落ち着きたまえ」
黒猫のレンは不機嫌そうに。小鳥のアリィは歌うように。やはり突然大声で起こされるのはあまり気持ちの良いものではありませんものね。
「す、すすすすまん!だか、すぐに聞いて欲しい事があって!」
旦那様は大慌てです。騒ぎを聞きつけてメイドたちが現れました。予想外の旦那様の登場にみな驚いています。
「お父様……どうなさったのですか?」
ヨシュアが心配そうに尋ねます。見ればヨシュアはポロポロと光の玉をこぼしているではありませんか。
いつもはわたくしに吸い込まれる玉は、旦那様の方に行っています。そうですね、わたくしったら最近、具合が悪くなる事がないのですもの。
アリィがくれたキラキラした尾羽を枕の下においているのも、良いらしいですわ。
よく見ると、わたくしの愛する旦那様のお顔には真っ黒なクマが出来ていて、昨日までは大丈夫でしたのに、頬がこけていらっしゃいます。
確かにこれはヨシュアの癒しの力が必要でしょう。しかし、旦那様はわたくしに話があると申されておりました。
ヨシュアには聞かせたくない話、という事なのでしょう。
急いでやってきたメイドにヨシュアを家族で朝食をいただく部屋に連れて行くようお願いします。
「そして、わたくしと旦那様の朝食をここに持ってきてもらえるかしら?」
「かしこまりました、奥様」
旦那様は子供の前であるのに重いため息を1つつかれます。よっぽどの事があったのでしょう。
心配そうに見つめるヨシュアと目が合います。お母様にお任せですよ!ぽん、と胸を叩くとヨシュアはにっこり笑いました。
どうです?お母様も頼りになるでしょう?ふふふっ!
「どうなさったのです?旦那様」
朝食を取り終わり、アンナがお茶を入れてくれます。旦那様が先に仰られないので、わたくしから聞く事にします。
旦那様はまた大きくため息をついてから重そうな口を開きました。
「マリー、ジュリアス様のことだが……」
「ジュリアス様ですか?エブルイースの皇帝様でいらっしゃるらしいですわね?」
「それを!?どこで?!」
あら?旦那様はお知りになられなかった?
「レギル様が毎日いってらっしゃいますよ?」
思い出すだけでもレギル様のお話は楽しいのです。
「あの馬鹿皇帝は、どうしてもヨシュア様に会いたくて会いたくて、日が明ける前から執務を終わらせるんですよ?その早い事早い事。こんなに早く出来るなら最初からやれ!って毎日思いますよ!しかも本気でセーブル卿に勝つつもりで、剣の稽古も始めたんですよ!もう!絵に描いたような完璧な皇帝ぶりです!腹が立つほどに!」
レギル様はいつもジュリアス様に振り回されているご様子でした。
「しかも、城からマクドル様のお屋敷まで「転移門」を作らせたんです!知ってますか?!無茶苦茶高いんですよ!「転移門」!そしてその転移門の魔力注入係に私を連れて来るんです!私だってたくさん案件を抱えてるのにーー!」
「あらあら……それは大変!少しでもお休みになられなくては。部屋を用意させますね?」
レギル様は笑って、大丈夫ですと答えられました。
「……実は私も夜明け前から仕事をしていまして……実の所、もう難しい案件は終わらせてあるのです」
「まあまあ!ではやはり部屋を用意させますわ。睡眠が足りないと病気になってしまいます!」
「ありがとうございます、マリー様。そこは…ほらコレで」
2人ともすごいすごいとはしゃいでいるヨシュアから転がり落ちた光の玉を摘んで、ぽいっと口の中に放り込んだ。
「以前よりもの凄く調子が良いのですよねぇ……胃の痛みもすっかり良くなって、お肉がとても美味しいんです!ああ、ヨシュア様……本当に癒されます……あの馬鹿には勿体ない!」
あらあらあらあら?
「1番の難題が残っていますがね……どうやってセーブル卿に結婚の許しを貰うのか……出来ればセーブル卿をウチの侯爵家辺りにでも入れてしまいたいのですが……」
あらあらあらあらら….。そこはわたくしは聞こえないフリを致します。わたくしは旦那様に従うつもりでございますが……生まれ育った祖国とは言え、マロード国の次期王がアヴリー殿下で、ザグリア公爵夫人もいる王宮、社交界に嫌気がするのは仕方がないことですわよね?
それよりも
「つえぇっ!クソっ」
「甘いっ!」
多少、お口が悪くとも清々しくヨシュアに好意を寄せてくださるジュリアス様の方が……と、思ってしまうのであります。
わたくしはあまり自分の意見をいれないよう、旦那様にお伝えしますと、旦那様は椅子から落ちてしまいました。
バランスがもの凄く良い旦那様のあるまじき姿に、心配より「可愛らしい」と、思って胸がきゅんとなったわたくしを許してくださいませね?
「そ、そうで……そうであったか」
旦那様が倒した椅子を戻しながら、メイドのアンナは小声で言う。
「お顔を拝見したらすぐ分かりますよ。一時期出回った肖像画にそっくりな美形じゃないですか」
旦那様はもう一度、椅子から落ちた。
それにしても心配ですね。
「旦那様?今日もジュリアス様は来られるのでしょう?見た所、旦那様は寝不足で調子が悪そうでございます。……ジュリアス様との決闘はどうなされますか」
旦那様はさあっと青い顔をなさったのです。あらあらあらあらら?
「あら?旦那様。どうなさったのです?こんな朝早くに寝室に飛び込んでくるなんて」
今日の朝早く、メイドが起こしに来る前に旦那様が飛び込んでいらしたので驚きました。
「ふにゃ……?」
わたくしと一緒に寝ているヨシュアが、旦那様の慌てふためいた声で目を覚まします。
わたくしの体が心配と、離れず寝ているのですが、ヨシュアもそろそろ8歳です。わたくしも人並みほどは体力がついたと自負しておりますので、1人で眠るようにしても良い頃なのかもしれません。
「とーちゃん、うるせぇっスよ」
「旦那様よ、落ち着きたまえ」
黒猫のレンは不機嫌そうに。小鳥のアリィは歌うように。やはり突然大声で起こされるのはあまり気持ちの良いものではありませんものね。
「す、すすすすまん!だか、すぐに聞いて欲しい事があって!」
旦那様は大慌てです。騒ぎを聞きつけてメイドたちが現れました。予想外の旦那様の登場にみな驚いています。
「お父様……どうなさったのですか?」
ヨシュアが心配そうに尋ねます。見ればヨシュアはポロポロと光の玉をこぼしているではありませんか。
いつもはわたくしに吸い込まれる玉は、旦那様の方に行っています。そうですね、わたくしったら最近、具合が悪くなる事がないのですもの。
アリィがくれたキラキラした尾羽を枕の下においているのも、良いらしいですわ。
よく見ると、わたくしの愛する旦那様のお顔には真っ黒なクマが出来ていて、昨日までは大丈夫でしたのに、頬がこけていらっしゃいます。
確かにこれはヨシュアの癒しの力が必要でしょう。しかし、旦那様はわたくしに話があると申されておりました。
ヨシュアには聞かせたくない話、という事なのでしょう。
急いでやってきたメイドにヨシュアを家族で朝食をいただく部屋に連れて行くようお願いします。
「そして、わたくしと旦那様の朝食をここに持ってきてもらえるかしら?」
「かしこまりました、奥様」
旦那様は子供の前であるのに重いため息を1つつかれます。よっぽどの事があったのでしょう。
心配そうに見つめるヨシュアと目が合います。お母様にお任せですよ!ぽん、と胸を叩くとヨシュアはにっこり笑いました。
どうです?お母様も頼りになるでしょう?ふふふっ!
「どうなさったのです?旦那様」
朝食を取り終わり、アンナがお茶を入れてくれます。旦那様が先に仰られないので、わたくしから聞く事にします。
旦那様はまた大きくため息をついてから重そうな口を開きました。
「マリー、ジュリアス様のことだが……」
「ジュリアス様ですか?エブルイースの皇帝様でいらっしゃるらしいですわね?」
「それを!?どこで?!」
あら?旦那様はお知りになられなかった?
「レギル様が毎日いってらっしゃいますよ?」
思い出すだけでもレギル様のお話は楽しいのです。
「あの馬鹿皇帝は、どうしてもヨシュア様に会いたくて会いたくて、日が明ける前から執務を終わらせるんですよ?その早い事早い事。こんなに早く出来るなら最初からやれ!って毎日思いますよ!しかも本気でセーブル卿に勝つつもりで、剣の稽古も始めたんですよ!もう!絵に描いたような完璧な皇帝ぶりです!腹が立つほどに!」
レギル様はいつもジュリアス様に振り回されているご様子でした。
「しかも、城からマクドル様のお屋敷まで「転移門」を作らせたんです!知ってますか?!無茶苦茶高いんですよ!「転移門」!そしてその転移門の魔力注入係に私を連れて来るんです!私だってたくさん案件を抱えてるのにーー!」
「あらあら……それは大変!少しでもお休みになられなくては。部屋を用意させますね?」
レギル様は笑って、大丈夫ですと答えられました。
「……実は私も夜明け前から仕事をしていまして……実の所、もう難しい案件は終わらせてあるのです」
「まあまあ!ではやはり部屋を用意させますわ。睡眠が足りないと病気になってしまいます!」
「ありがとうございます、マリー様。そこは…ほらコレで」
2人ともすごいすごいとはしゃいでいるヨシュアから転がり落ちた光の玉を摘んで、ぽいっと口の中に放り込んだ。
「以前よりもの凄く調子が良いのですよねぇ……胃の痛みもすっかり良くなって、お肉がとても美味しいんです!ああ、ヨシュア様……本当に癒されます……あの馬鹿には勿体ない!」
あらあらあらあら?
「1番の難題が残っていますがね……どうやってセーブル卿に結婚の許しを貰うのか……出来ればセーブル卿をウチの侯爵家辺りにでも入れてしまいたいのですが……」
あらあらあらあらら….。そこはわたくしは聞こえないフリを致します。わたくしは旦那様に従うつもりでございますが……生まれ育った祖国とは言え、マロード国の次期王がアヴリー殿下で、ザグリア公爵夫人もいる王宮、社交界に嫌気がするのは仕方がないことですわよね?
それよりも
「つえぇっ!クソっ」
「甘いっ!」
多少、お口が悪くとも清々しくヨシュアに好意を寄せてくださるジュリアス様の方が……と、思ってしまうのであります。
わたくしはあまり自分の意見をいれないよう、旦那様にお伝えしますと、旦那様は椅子から落ちてしまいました。
バランスがもの凄く良い旦那様のあるまじき姿に、心配より「可愛らしい」と、思って胸がきゅんとなったわたくしを許してくださいませね?
「そ、そうで……そうであったか」
旦那様が倒した椅子を戻しながら、メイドのアンナは小声で言う。
「お顔を拝見したらすぐ分かりますよ。一時期出回った肖像画にそっくりな美形じゃないですか」
旦那様はもう一度、椅子から落ちた。
それにしても心配ですね。
「旦那様?今日もジュリアス様は来られるのでしょう?見た所、旦那様は寝不足で調子が悪そうでございます。……ジュリアス様との決闘はどうなされますか」
旦那様はさあっと青い顔をなさったのです。あらあらあらあらら?
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