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スキルの不思議

15 ウマ田さんイヌ森さん

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 駄目だ!駄目だぜ!お父様!中央から離れることは、手柄を立てられなくなるんだ!アナベルお兄様やルルカお姉様、カレルお兄様の将来はどうなるんだ!
 貴族としてだいぶマイナスなんだぜ!

「いけません、お父様「お父様、流石です!」」

 ルルカねーーーちゃーーん!俺の発言に発言をのせて封じないでくれ。

「お姉様、それは「私も賛成です!お父様」」

カレルにーーーちゃーーん!

「カレルお兄様まで!王宮でアナベルお兄様も「もう王宮に行かなくて良いと思うと清々します。ありがとうございます。お父様」」

アナベルにーちゃんまで!何言ってるの?!

「ふ、決まりだな。流石私の自慢の家族だ!使用人たちには迷惑をかけるが、許して貰いたい」

「あ、あの!旦那様。私はついて行きたいです!」

 遠慮がちにアンナが言う。

「私もです!お願いします!旦那様」

 リルまで手を上げた。

「もちろんだ。一緒に行きたい者は皆連れて行こう。残りたいものには相応の支度金を支払うし、まだ懇意にしている貴族もおる。そちらに雇ってもらえるように手配もしよう」

 お父様の顔は晴れやかだ。

「マリーに言われるまで、皆で領地に帰ることなど思いつかなかったぞ。確かにあんな王宮、もう真っ平だ。ありがとうマリー、君は優しくて美しい….最高の妻だよ」

「嫌ですわ……旦那様。私はただヨシュアを守りたくて、わがままを言っただけです」

「お父様!お母様!見つめ合っている場合ではありませんよ!中央から遠ざかるなど、貴族としての地位がー」

 俺のニートライフが!

「家族を悲しませて、何が貴族か!何が地位か!……いや、私は私の為にここに住みたくないのだ。分かってくれ、ヨシュア」

ニーートライフうううう!?

「大丈夫だよ、ヨシュア。どこにいてもお父様の実力なら暮らして行ける」

 そんなに顔に出ていたのだろうか!?俺は少し恥ずかしくなった。すまん、お父様を疑った訳じゃないんだけど、今の生活が安定しすぎててな!手放すのかと思うと、少し惜しくなったんだ。

「はい!アナベルお兄様!」

 俺の家族は最高過ぎるから、どこで暮らしても、どんな暮らしでも最高にハッピーだったんだ。

 そんな俺達の前にぴょんとレンが飛び出してきた。

「とーちゃん!大にーちゃん!話してるとこすまねぇけど、お願いがあるっす!」

 空気読めよなぁ!

「大至急カッコいい名前を考えてほしいっす!頼むッス!もうみんなケンカしちまって酷いンスよ!頼むッス!」

「レン?そ、そうだな……かっこいい名前…?シュレイなんてどうだ?」

「私はそうですね、フィオなんてどうでしょうか、少しかっこよくないですかね?」

 レンは助かった!とぴょんと跳ねた。

「ウマ田さんにイヌ森さんが生き残ったンス。ウマ田さんはとーちゃんでイヌ森さんは大にーちゃんで頼むッス!はい!これで終了ッス!!もう適格者は居ないっす!!!終わりッスーーー!」

 レンはやっと解放されたと俺のもとに来て膝の上で丸くなった。おい、何があったか説明しろよ?

「レン、何がどうしたの?みんなに……ペット……?なの?」

 なんかみんな、喋るしおかしいよな?

「ペットっすよ!言葉は通じた方が良ッスからね!ちょこっと悪意から守ってくれるだけッス!俺が1番弱いのはヨシュアには申し訳ねぇッス!」

「でもケンカしたとか……」

「昼間もちょっと言ったッスけど、俺達の仲間はちょっと別の場所にいるンス。そこは気持ち良くてふわふわした場所なんすけど、退屈なんス」

 レンはふわぁ~っと欠伸をする。

「俺達の仲間はこの地上に遊びに来るのが好きなんすけど、ここ最近だーれも呼んでくれなかったらしいンスよ。で、みんな退屈で退屈でしょうがなかったンス。で、たまたま俺が仲間入りして助けを呼んだもんで、地上に遊びに行きたい奴らが俺も俺もって押しかけたンスよー」

「へ、へぇ…そうなんだ」 

「昼間の契約は良かったンスけど、あと2人分残ってるって聞いて……ウマ田さんとイヌ森さんが力でねじ込んで来たンスよぉ。まぁあのお二人も強いんでとーちゃんと大にーちゃんの力になってくれるッス」

 ぶわっ!と力が溢れかえって契約が済んだ事が分かる。もう何度も体験しているので、慣れたものだ。

「はー疲れたッス。5柱も召喚すると、流石に俺もぐったりッス。ヨシュア、玉くださいッス」

 レンに玉を押し込んでやると、普通の猫のようににゃーんと鳴いた。レンさん、柱って言ったね?柱って神様を数える時に使う言葉だよね?俺、知ってる。
 うとうとと船を漕いでいるレンにこっそり質問してみる。

「レン、ウマ田さんってもしかして……」

「むにゃ……そりゃ強い馬って言ったらスレイプニル先輩っすよぉ…」

 背中を撫でてやるともうレンは夢見心地だ。

「イヌ森さんは?」

「フェンリル先輩っすぅ…フェニックス先輩がいるから色々安心ッスし…エルダードラゴン先輩も頼りになるッス…むにゃ…あー、そこッス、そこ最高ッスーーもっと撫でてほしいっすぅーすゃぁ」

「ルルカお姉様のアロイスはグリフォンって流石に分かったよ」

「そぉっすよねぇ…契約するまで真名を伏せるのがマナーッスからねぇ。俺は普通の猫からの成り上がりッスけど、頑張るッスよー。ヨシュア、大好きッスよぉ」

 言い終わるとレンは本格的に寝てしまった。

「レンは寝おったか?」

 小さな真っ黒な馬と小さな灰色の犬が俺の足元にいた。

「えーと、シュレイとフィオで良いんですよね?」

「そうだ!よろしく頼むぞ、ヨシュア!あー早く草原を力一杯駆け回りたいぜぇー!」

「レンのやつ、無理しおって。よっぽどマリーを守れなかった事を後悔しておったんだな」

 ふう、と多分フェンリルのフィオはため息をつき、膝の上で丸くなっているレンを優しい目で見ている。

「今後は我らが力を貸してやる。大船に乗ったつもりでいて良いからな」

 真っ黒な手乗りサイズの馬は、蹄をカッと鳴らす。なんて頼りがいのある馬だ!
 手乗りサイズだけれども。


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