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帝国風キノコ

43 やるキノコ

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「龍は子がなし辛い。俺にはルドを入れて8人の妻がいるが、まだ子は1人も居ない」

「毎夜、俺の所に来るのが悪い」

 ゼルには今側妃が8人いて、正妃は居ない。

 千年の礎になる子を産むのはお前だからな?訳の分からない事を笑顔で言う。

「しょうがないだろう?ルドが一番気に入っているんだから」

 深く深い奥をグリグリと探られて、身悶えする。

「あっっ!やめぇ、そんなおく、何もないしっ!あんっ」

「いいや?子供でも出来るフクロがあるかもしれないだろ?」

「ないっ!やんっ」

 奥をえぐるのをやめない男を横に力一杯突き飛ばす。

「ルドっ!」

「かはっ…!」

 血を吐きながら、天井から剣を構えて落下してきた男を受け止め、ゼルが切り伏せる。いてぇ。
 死にはしないが痛みはあるんだよ。

「曲者だ!捉えよ」

「王!王妃!!」

 バタバタと衛兵や護衛騎士が走り込んで来て、瀕死の男を連れてゆく。

「ルド……こんなに傷だらけになって」

「お前、狙われすぎだろ……。少し内政なんとかしろよ」

 この暗殺者から体を張って守ってやるのは慣れた仕事なのだが、ゼルは多すぎる。体がボロボロだよ、文字通り。
 今日もアンアン言ってる最中に天井から光る目と視線があったんだぞ!怖いっつーの!

「続きしようか」

「まじかよ!」




 
 私は護衛騎士の1人だ。最近皇帝が新しい側妃に迎えられた方が物凄くて毎日目を見張っている。
 まず、第8側妃としてほぼ人質同然で迎えられた方は、敵対していた隣国の前王だと言う男性だった。
 男を側妃に?とみな不審がったが、その方こそ、龍巫女が占った結果の人物だと言う事だった。
 婚儀を恙無く終わらせ、すぐにその男性、エドヴァルド様の宮に元正妃様が押しかけると言う事件が起こり……正妃様は廃される事になった。
 そこからだ。エドヴァルド様が皇帝のお隣に立つようになったのは。

 エドヴァルド様は美しい方だ。顔の造形もさることながら、立ち振る舞い、所作が完璧であった。
 前王という立場であったことから、王たるものが何をすべきか全て分かっているのだ。だから先の先を読んで何をするか常に考えている。

 そして何よりも

「ゼル!」

「ルド!」

 隣に立つからこその速さもあるものの…何も躊躇わず、暗殺者と皇帝の間に自らの体を差し入れるのだ。
 今もざっくりと肩から切られうずくまっている。傷は浅かったのか、血は大して出ていないようだ。

「ルド!ルド!!」

 庇われた皇帝の方が青い顔をして、エドヴァルド様を抱え上げた。

「大丈夫……私はなかなか丈夫だからね」

「早く、医者に!」

「違うぞ、ゼル。仕事しろ……終わるまでくるなよ」

 よろりと立ち上がる。

「誰か…ルドを」

「いい。持ち場を離れるな」

 万事がこうなのである。全ては皇帝の為、自らは捨て石のように使う。

「庭の隅から見ている貴族は捕まえておいてくれ、何か知っていそうだ」

 立ち去る前に、警備のものにこっそりそう告げる。一体どこからそんな事を知り得たかも分からないが、警備兵が駆けつけると、たしかに不審な貴族がそこにいて、今回の襲撃に関わっていた事が判明した。

 エドヴァルド様が皇帝の隣に立つようになってから、風通しが少し良くなってきた様に思う。
 そういえばゼードラウンを立て直したのはエドヴァルド様であったはず。王宮の淀みも取り払ってくださるかも知れないと、期待をしてしまう。

 あの方がこれ以上キズを負わないように、我々ももっと気を引きしめていかねばならない。

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