上 下
41 / 71
帝国風キノコ

41 それは愛の言葉ではない

しおりを挟む
「人として……」

「ホムンクルスだろう?」

「……」

 確かにホムンクルスとして作られた俺はマスターを設定できる。基本は製作者になるが、今回の作り方のせいでマスターが不在のままだったのが災いした。

「ルド」

「うるさい」

「ルドー?」

「うるさい!ルドって呼ぶな!」

「くくっいくら嫌がってもマスターには基本逆らえない。不便だな?ホムンクルスは」

「うるさい!」

「ルド、こっちへ来い」 

「くそっ」 

 行きたくないが、何となく行かなければならない気持ちになって、無視してると、どんどんイライラしてくる。
 これなら先にセアンでもマスターだと決めておけば良かった。

「ルド、服を脱げ」

「くそっ!」

「なるべくいやらしく、誘うように」

「出来るかっ!」

 それでも、アホ皇帝の目の前でするりと服を脱がねばならない。

「上に乗れ」

「死ね!」

 マスター権限の無駄遣いに腹が立つが、逆らえない自分にも腹が立つ。

「本当に便利なものをアルトは残してくれたものだ。なあ?ルド」

「……アルトとお前の関係はなんなんだ…?」

  それにしてもそこが気になる。アルトから聞いたこともなかった。

「従兄弟だ。あれは母の妹の子供だ。戦士としても、魔術師としても出来損ないでな。唯一の得意は錬金術だった……あれのホムンクルス技術は卓越していたが、帝国にいたうちはついぞ完成しなかった」

 アルトは出来損ないだったのか。俺にとってアルトは良いマスターだったのに、そう言われると気分が悪い。

「行方をくらませて、どこぞで死んでいると思って行方を探させていたが、その理論で作られたモノに出会うとはな」

 半分脱げた服から覗いた肌を撫でられる。ゾワゾワと悪寒が走るが、やめる気配はない。

「なぜ、アルトが作ったと、分かった?」

「見た事があるからだ。ホムンクルスを兵士に出来ればと、期待をかけた事もあった、そう言うことだ」

 ごろりとひっくり返され、組み敷かれる。

「足を開け」

「っ!」

「っはは!この完全に言う事を聞かないところが本当に良いな!従順過ぎると飽きるが、嫌がっているのを犯すのが、本当に良い!」

「や、やめ……っ!」

「良い顔だ」

 ぐいっと押しつけられて、目を閉じる。諦めよう、それが良い。嫌がるとこの性悪は喜ぶだけだ。
 とにかく、あの時みた書面の内容がゼードラウンときちんと交わされたか。それを確認するまでの辛抱だ。

 ホムンクルスとマスターの間は信頼関係で成り立っている所が大きい。この皇帝はその辺は知らないようだ。
 いざとなれば、俺はこいつを裏切れる。その時までの辛抱だと、自分に言い聞かせる。

「う……」

 少し前まで弄ばれていた穴は、苦もなく飲み込み内側から押される感覚に言葉が漏れる。

「キノコの癖に良い穴だよ」

「腹でも壊してしまえ」

 いつもの毒づきも、解毒薬の空袋を振られて終了だ。

「良い声で鳴けよ」

「鳴けばいいんだろ!鳴けば」

 くそっこいつ嫌いだ。



「ルド、お前用の側妃の宮を作らせている」

「とりあえず、死ねよ」

「風通しが良くて日当たりの良い、キノコが苦しむような宮にしようと思う」

「そりゃどうも」

「可愛いな、今日も鳴きたいのか?」

「腹でも壊せ」

 


「俺とお前の婚儀の日取りだが」

「同盟が組まれた証明はどうやったら確認できる?」

「信じて貰うよりないな」

「婚儀もないな」




「これで良いだろう?」

「ゼードラウン王家の封蝋?」

 開けられた跡がない手紙を1通受け取った。開けてみると、セアンからの恨み言と愛の言葉で埋め尽くされたラブレターだった。
 最後に同盟と税率のおかげで戦力の強化が出来ると書いてあった。

「明日、婚儀を執り行う」

「そうか」

 逃げるなら今晩しかない。いつも通り下らないやりとりを済ませる。俺の悪態を愛の言葉だとかんちかしてないか?こいつ。

「磨きあげるから、覚悟しておけ」

 は?意味が分からない。あっという間に何人いるか分からない侍女に取り囲まれ、風呂場に連行される。

「ま、待て!俺は男ーー!」

「お前付きの侍女は皆知っている」

「ちょっと!やめろ!駄目だってーー!」 

「久しぶりに本気で嫌がっているな。ルドが泣き叫ぶのは楽しいな」 

 くくく、と笑っているのが見えて怒りが倍増した。死ね!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)
BL
悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!? ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。 「お父様とお母様本当に仲がいいね」 「良すぎて目の毒だ」 ーーーーーーーーーーー 「僕達の子ども達本当に可愛い!!」 「ゆっくりと見守って上げよう」 偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。

隷属神官の快楽記録

彩月野生
BL
魔族の集団に捕まり性奴隷にされた神官。 神に仕える者を憎悪する魔族クロヴィスに捕まった神官リアムは、陵辱され快楽漬けの日々を余儀なくされてしまうが、やがてクロヴィスを愛してしまう。敬愛する神官リュカまでも毒牙にかかり、リアムは身も心も蹂躙された。 ※流血、残酷描写、男性妊娠、出産描写含まれますので注意。 後味の良いラストを心がけて書いていますので、安心してお読みください。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

僕の調教監禁生活。

まぐろ
BL
ごく普通の中学生、鈴谷悠佳(すずやはるか)。 ある日、見ず知らずのお兄さんに誘拐されてしまう! ※♡喘ぎ注意です 若干気持ち悪い描写(痛々しい?)あるかもです。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

処理中です...