上 下
34 / 71
キノコ神の使徒達

34 聖女さまが

しおりを挟む

私はセリエ。セリエ・フィオ。フィオ子爵家の三女。子爵家の三女なんて、よっぽど素晴らしい能力がなければ惨めなものです。
 良縁が来るわけでもないのに、貴族のしきたりに囚われ、自由恋愛など出来はしません。どこかの有力貴族の後添えか……そんなのは真っ平ごめんな私は、教会で地位を確立しようとしました!
 そう!聖女です!聖女にさえ、選ばれさえすれば、この先人生バラ色間違いなし!です!

 そこで選んだのが、少々……いえ、かなーり怪しい……最近出来た教会、ウスベニ教です。
 毒キノコを神として奉る、若干頭のおかしな……いえいえ!これから使えようとする神になんて不敬な。
 何せこのウスベニ教会はこの国の王が大切にしている教会で、寄進も凄く潤っちゃってる教会なんです!

 しかも僧服が薄ピンクでとっても可愛いんです!!!

 そこの聖女にさえなれれば王様やその側近様にお近づき放題なのです!たまりません!!!
 そこで王とそのご友人達の8人の誰かに見染められれば!4人はまだお子様ですが、全て見目麗しく美青年になる事間違い無し!なのです!
 勿論1番の狙いはセアン王ですがね!フフフ。

 私は真面目に真面目に教会で働き、愛を伝え、胞子活動……?奉仕ですよね?に精を出し、周りの信頼を得て、上級神官になりました!
 このままいけば私が聖女に認定される!はずだったのに!!!

「せ、聖女様が現れ……た?」

「驚きましたね!セリエ様。何でも神そっくりなご容姿ですが、聖女様との事ですよ」

 私の計画が足元から崩れる!せ、聖女は私!私なのよ!!!



 その聖女様がみえられるという日に、私達は並んで出迎えた。聖女様は普通神殿で暮らすものだと思うが、その聖女様はなんと王宮で暮らしている。

「何故ですか……?」

「王や宰相、全ての方がそうお望みだからですよ」

 …嘘だ。私はすぐに分かった。きっと聖女だからとあの若く美しい王に取り入ったのだ!間違いない!
 聖女だから……きっと何かの力で無理矢理王様に近づいたんだ!羨ましい!
 ……じゃなくて、なんて浅ましい!!

 私の聖女様に対する印象は会う前から最悪でした。

 王宮から立派な馬車が到着し、いよいよ聖女様がお見えになる。ドアが開き、深々と下げた頭の隙間からどんな悪女が現れるか見てやろうと、私は目を光らせます。
 なかなか現れません。一緒に来たであろう宰相のブラウ様が声をかけ、手を差し伸ばしても、出てこようとしないのです。

「やややっぱり嫌だ!嫌すぎる!」

「今更ですよ、おじさま。ピンクの聖女服がお似合いです」

「だから嫌なんだよ!」

 は?!おじさまって言った?!宰相ブラウ様は確かに中に乗っている人に小声だけれども、「おじさま」と呼びかけた!
 ま、まさかね……?

 ほぼ無理矢理ブラウ様に引っ張り出された聖女様は……女性にしては、でかい方だった。
 多分私以外の神官達の頭の中にもあの言葉がぐるぐる回っただろう。

【おじさま……おじさま……って】

  しぶしぶと引き出された方は頭からすっぽりとヴェールを被り、顔は見えない。見えないから、想像が偏ってしまう。まさか……いや、まさかね?
 やはりでかい足が馬車の踏み台を踏み……僧服の裾も踏んだ。

「あっ?!」

「おっと」

 聖女?様は転がりかけ、ブラウ様が受け止める。その一瞬ヴェールがめくり上がり、顎の辺りだけ見えた。見えてしまったのです。

「お、おじ……」

 おじさんと呼ぶほどではないのですが、若い男性の顎のラインに間違いなかったのです。

 どうして!おじさんが聖女なのよ!!!!

 私は大声で叫びたかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)
BL
悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!? ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。 「お父様とお母様本当に仲がいいね」 「良すぎて目の毒だ」 ーーーーーーーーーーー 「僕達の子ども達本当に可愛い!!」 「ゆっくりと見守って上げよう」 偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!

梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。 あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。 突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。 何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……? 人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。 僕って最低最悪な王子じゃん!? このままだと、破滅的未来しか残ってないし! 心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!? これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!? 前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー! 騎士×王子の王道カップリングでお送りします。 第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。 本当にありがとうございます!! ※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。

処理中です...