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キノコ神の使徒達

33 新しいお帰り

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「そういう訳で、私は神でないのでなんの力もないんです」

 ウスベニ教の神殿で、俺は偉い神官達に説明していた。

「しかし、これほどまでに神像に似ておられる」

「気のせい」

「いやしかし」

「気のせいです!」

「そ、そうですか……?」

「そうです!私はどこにでもいる普通人!神々しくないでしょう??」

「そう言われてみれば……?」

「そうなんです!!」

 押し通した。これ以上予定を入れられてはたまったものではない。

「でもウスベニ教は素晴らしいですね。全てを愛するなんて」

 僧服の色も親近感の持てる薄いピンク色なのだ。

「そうなのですよ!全てを愛するなど、我らの神の懐の深さに感動を覚えます!」

 キノコはもういっぱいいっぱい通り越して満杯爆発寸前だから、やっぱり神にはなれないよ!

「良く分かりました。貴方様はウスベニ教の神、ウスベニ様ではない」

「はい、その通りです」

 しかし、ウスベニ様ってなんだよ!神様なのに毒キノコなのか!

「貴方様はウスベニ様がこの世に遣わされた、ウスベニ様の聖女様なのですね?!」

 ツッコミ所が多すぎてどうしたらいいのか分かりません。

「なるほど」「納得です」「良く分かりました」「うむ、良い話だ」「感動した」

 偉い人達は色々分からんのです!

「えっと、あの?」

「分かっております、わかっております!この国では王家の力が強い。あちらの要求を先に飲まねばならぬのは必定。いかな聖女様とはいえ、神殿に頻繁に来られぬのを憂いていらっしゃるのでしょう!」

 憂いていらっしゃるのは、男の俺を聖女と呼ぶ貴方達の頭の方です。

「月に一度で良いので!聖女として民衆に微笑みかけて下さいませんか?それだけで結構です!それ以上は望みません」

「いやしかし!だがしかしですね??」


……押し通されてしまった……もしかして俺って押しに弱い……?

 薄いピンクの聖女用の服とヴェールを押し付けられて、王宮行きの馬車に詰め込まれた。
 当然ながら、女性物のワンピースで

「良く男の俺が入るサイズがあったな……」

 そこら辺に驚いた。王宮に帰ってきて

「俺、聖女なんだってよ」

「お、おじさま聖女……新しい!」

 と、真面目な目で見られたので、教育はしっかりしなくては!

 この国にキノコおじさん聖女が爆誕した瞬間だった。俺はこの国を立て直さなければ、エドヴァルドに顔向け出来ないと心に誓った。

 なんか、すごくごめん。



 最初の風の日

「ルドおおおおお!!!会いたかったぁぁーーー!」

「どぉふぉ?!」

 親方、空から暗殺者が!シャラが降ってきた。飛竜で飛んで来て飛び降りたようだ。
 胸を強打され、空気が吸えなくなって目の前が暗転しかけるが、絶妙なタイミングで呼吸が戻された。

「ルド!ルド!聞いてください!私はとうとう理想の王を見つけたのです!いくら殺そうと思っても殺せないんですよ!最高です!本気を出されると触ることすら出来ないなんて!素晴らしすぎてもう、私は!私はわた……」

 突然、シャラはぽけーっと空中を見ている。ど、どうした??

「あ、ママがトンだ」

「しばらくしたら戻るから。ママ興奮しすぎ」

「はっ?!」

 戻った。

「ど、どうした……シャラ…」

「え?どうしたもこうしたもルドのせいじゃないですか!菌糸ですよ、菌糸!菌糸が頭の中に残っちゃいましてね?たまに森のキノコみたいに意識が飛ぶんです。これがあるから、暗殺者は廃業ですよー!」

 あはははは!と笑うシャラは、人格が少し変わった気がする。……気のせいじゃないな。

「そりゃ、思考が全部キノコで埋め尽くされましたから!変わりもします。始終どうやって胞子を飛ばそうか考えるのってなかなか楽しいですね」

 シャラが心の友に見えてきた。殺し合った末に育まれた真の友情!?

「ルドも好きなんですけどねー。この刺しても折っても死なないキノコボディ!はー魅力的」

「ちょっ!ちょっと!シャラ!服を脱がさないで!」

 殺伐とした昔話をしながら、スルスルと俺の服を脱がして行く。やめてったら!

「あーやっぱり傷がない。新しい素体?ってので作ったんですっけ?やっぱりルドの体は最高。新しい心臓を一回止めてみよっか?」

「やめて!」

「良いじゃないですか。2人で胞子を飛ばす夢をみましょう?私は飛ばせないけど」

「シャ、シャラ!君はシルフ様と結婚したんだろ!浮気は良くない!!」

 一瞬、シャラはキョトンとした顔をしたが、華やかに笑った。

「キノコは別枠だから大丈夫です!ヴェント、シャルア。遠慮してたらおじちゃまをママに取られちゃいますよ!何せママはおじちゃまの弱いところ、いっぱい知ってるんですからねー?」

 嘘だろ!嘘だと言ってくれ!

「風の渓谷にキノコを持ち帰ってみんなで仲良くイチャイチャしましょうよ?」

「なにそのただれた関係ーーーー!いやぁーーー!」

 キノコをほどよく蹂躙して、笑いながらシャラは帰って行った。

「ルド、ルド。君はルドじゃないけれど、私にとって君はルドなんです。君の大事なエドヴァルド王を殺してごめんね」

「シャラ……俺はお前を」

「ルドが私に謝ることなど何一つありません。今、私はなかなか幸せなんですよ?一つの理想に辿り着いた心境です。だからルドも自分を許して上げてください」
 
 もしかして、シャラ。それを言いに来た?

「たった1人殺しかけたくらいで、7年も休眠されたら皆困るんですよねー!私の責められること、責められること!ははは!は……」

 あ、またトンでる。

「おじちゃま、ママはいい子でしょう?許してあげて」

「許すも何も……」

「おじちゃまが幸せにならないと、ママも幸せにならないの。おじちゃまママはもういい子でしょう?」

 ミニシャラ達め!可愛いでキャラ立てて来たな!何がおじちゃまだ!俺はお前たちのおじさんじゃないぞ!
 おじさんなのはセアンとリィム、おまけでブラウとアーテルだ!まったく精霊王の子供だからって毒は効かないし、でかいし、やりたい放題、7年前のセアン達まるで変わらない!
 人のキノコを掴んでにこにこしている悪魔!悪魔め!!

「ああ、シャラはいい子だね」

「ママを許してくれる?」

「勿論だよ。ヴェントとシャルアのママも俺を許してくれるかな?」

 ミニシャラーズは顔を見合わせててから、ニタリと笑う。

「もっとえっちなこといっぱいさせてくれたら!」

 やだ!この子たち!怖い!

「はっ!なになに?楽しそうなことするんですよね?私も参加しますよ?」

 シャラまで戻ってきて、最初の風の日はやっぱり酷い目にあった。


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