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キノコ神の使徒達

30 イニシャルK(キノコ)

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 ネズミの体はどんどん、どんどん神殿の奥へ吸い込まれる。

「どどどうなってええええ!」

あっー!アッーー!そんなに吸引されたら!されたら!!!

「ぬ、抜け!抜けちゃうううう!」

 いやーーー!キノコが!キノコが!!!

ポン!と良い音が俺の中で弾けて、ネズミの頭から本体が取れてしまった。
 アッーーー!キノコだけになり、更に軽量化された俺は、奥へ奥へと吸い込まれる。

「ひぃええええ!」

 高速でコーナーを攻め、S字カーブをぶっちぎり、キノコの端を溝に引っ掛けながら、信じられない速度で慣性ドリフトする。

 廃棄寸前のポンコツキノコが神殿最速だぜ!インベタのインを攻めてキノコが絶叫する。

「たーすけてーーー!」

 それどころじゃなかった。



 どんどん吸い込まれてきた奥の部屋から声が聞こえてきた。それは祈りなのか詠唱なのか。

 部屋には巨大な魔法陣が描かれていて、中央に大量のウスベニ裏毒茸が山盛りに盛られていた。

 あれは。古い記憶で覚えている、アルトの記憶だ。アルトが作ったのはもっともっと小さいものだったし、使った素材も少なかった。
 アルトの研究に金をかけて、大掛かりにしたような。これは、このままでは!
 ジタバタしても、キノコでは手も足も出せない!ああ!せめてネズミの体があれば、その辺にしがみついて、魔法陣に入るのを阻止できたかもしれないのに。


あああーーー!

 ウスベニ裏毒茸の山の中にスポンと埋もれてしまった。





 何度も何度も王命で繰り返される「降臨の儀式」素材も術式もとても特殊で、全て王と宰相が用意した。

「森に隠してあった錬金術の秘儀の書き写し」

「最初に成功したのはこれだった」

「素体と、核となるおじ様が」

「片っ端からウスベニを集めればそのうち引っかかるかも」

 意味が分からないやり取りを聴いた事があるが、とにかく

「この通りにやってほしい」

 王からの依頼なら素材が送られてくる度にやらねばならない。

 そして、とうとう今日

「魔法陣が光った!」

「風が!」

 使われなかったと思われる大量のウスベニ裏毒茸の真ん中に素っ裸の男がうずくまっている。

 その顔、その姿は正に毎日奉っている神そのものだった。

「おお……!神よ!」

「神が降臨なされた!」

「連絡を!王宮に連絡を!」

 
神が降臨なされた!!!!


「嘘だろ……どうしよう……」

 神も困惑されているようであった。早く王の判断を仰がねば!

 神は立ち上がり、歩き出そうとする。流石に何もお召しになられておられぬと、神々しすぎますぞ!女性神官もおります故に!!

「お、お待ち下さい!お待ち下さい!王がいらっしゃるまで!」

「そ、その王が来る前に逃げないと!嫌な予感がする!」

 神たろうものが逃げるなど!そんな必要はないではないですか!

「あなたは様は神なのではないのですか!」

「違う!」

な、なんだって……?!

「俺は神じゃない!ただのキノコだ!!!」

 キノコならば神ですよ!!

「どちらにせよ、王が来るまでしばし!しばしお待ちを!」

「だから!その王はあの子達なんだろう!逃げないと!!」

「早くー!王をお呼びしろー!」

「やめてー!森に帰りたいいいいーー!」

 現場は大混乱だった。
 
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