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キノコ転生

6 フィル

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 結局、俺は部屋に閉じ込められた。自称師匠はどこかに連れ去られたが、これはかなりやばいのでは無いだろうか??
 早くフィルの所に帰らなくちゃ。

 しょうがない、アルトの記憶が出来ると言うのでそれを試す事にする。

「おーい、衛兵さーん衛兵さーん俺があっても良い1番偉い人連れてきてー」

 扉の向こうにいるであろう衛兵さんに声をかける。

「お前みたいな怪しいヤツに会える人などいない!」

 じゃあしょうかない。

「じゃあ衛兵さん、聞いてよー。中庭の樫の老木の下に死体が埋まってるから取ってやってー」

「ウソを言うんじゃない!」

「あと、低木の黄色薔薇の根元に毒瓶が6本埋まってて、1本割れてるから掘り出してあげて。枯れかけてる黄色薔薇があるからすぐ分かるよ」

「嘘だよな?」

「嘘だと思うなら確かめてごらんよ」

 1人走り去ったのが聞こえた。

「後は、後はないのか?」

よし、食いついた。

「えーと、マルリデル公爵は王妃様と浮気してるよ」

「は?!」

「2番目の王子は王様の子供でなくて、王様の弟の子供だよ」

「え?!?!」 

 扉の外が騒がしくなる。ふふふふふふ

「宮廷魔術師は王様の暗殺を企てていて、今日の夜に暗殺ギルドに行くんだよ」

「そ、そんな馬鹿な!」

「王様は侍女のサリナとの間に2人目の子供を作ったってさ」

「いや、そんなはずは……」

「王子様はネンディール家のお嬢様と寝たけど、金を握らせて追放したんだって!」

「まて!待て!!!」

 全てを見て、全てを聞いている植物ネットワーク舐めんなよ。

「なんだよー何か聞きたい事ある?あ、衛兵隊長は女を抱けない男色だよ」

「嘘だーーーー!」

「本人に聞いてみなよ。可愛がって貰えるかもよ?昇進だね!」

「嫌だーーー!」

 別の声が聞こえて来た。

「ねえねえ!宰相様の噂はないの?」

「宰相はーー仕事のし過ぎで勃たない!」

「うそーーーー」

「騎士団長様は?麗しのウィンスコット公爵!」

「騎士団長は……奥様が好きすぎて、家に帰ると膝の上に乗ってるらしいよ。そんで「えみりーちゃぁんナデナデしてぇ」ってお願いするらしい」

「「「嘘でしょーーーー」」」

「何事だ!!!」

 大きな声がする誰だろう。

「誰?」

「あ、親衛隊隊長様……」

「これはなんの騒ぎだ!」

「すいません、中の男がとんでもない嘘ばかりつくので、皆面白がって……」

 親衛隊隊長ね?誰か知ってる?
知ってる知ってる!たくさん挙手。有名なのか。

「えーと、親衛隊隊長クラウスさんは3日に1度陛下と寝ます。因みに昨日呼ばれたので次は二日後です」

「え?!」「は?!」「うそ」

「「ワシはもう若くないからお前を満足させられんな」「陛下はいつでもご壮健であられます。今夜も素晴らしかった」が昨日の感想になっています」

「き、貴様ーーーー!」

 鍵がかかった扉が引きちぎられて、俺は顔を真っ赤にした多分クラウスさんと言う人とご対面した。

「窓開けてヤらない方が良いですよ。聞いてるモノは聞いてますので」

 俺はクラウスさんに一刀両断されてしまった。頭のキノコが真っ二つ!ちーん




「どっこいしょっと」

 用意していたキノコに俺は戻っている。ちなみに時期外れに生えた俺とフィルの子供?のウスベニ裏毒茸を素材の上に生やして行ったのだ。
 俺はキノコで目を覚まし、素体に菌糸を伸ばして体を作った。アルトっぽかった顔はフィル寄りになり、体は子供サイズになった。

「体が死ぬとこうやってキノコで戻れるのはすごいなー」

 お姉様たちもくっ付いてきているので、問題ない。

「フィル、大丈夫かな?」

とびらを開けてフィルを探す。

「フィルーフィルーやっぱお前の師匠ダメダメだったよー……フィル……やっぱりか」

 部屋の真ん中でフィルが死んでいた。体は冷たいから、もしかしたら、俺が出て行ってすぐ殺されたのかも。

「フィル、やっぱり行かなきゃ良かった。お前の頼みでも断ればよかった」

 死にながらフィルは泣いていた。悲しいね、フィル。

 俺は近所の人に挨拶する。
フィルは殺された。ホムンクルスの理論は人間には早すぎる気がする。

「研究の全てを持って森に帰るよ。家は誰か住んで……ちょっとキノコ生えやすいけど」

 俺は荷物を全てまとめ、焼けるモノは焼き、大事な理論を書いた本を持って家を出た。フィルはアルトの隣に埋めておく。

「俺が居なくても2人なら色々話が出来るでしょ」

俺は街を後にして、生まれた森に帰って行った。
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