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「うんしょ……うう、どうしてこんなに窓枠が高いの……」

 ヒィヒィと大汗を書きながら窓の外に身を乗り出す僕をお嬢様たちはあたふたと見ている。

「あの!あの!危のうございます!」

「あの!飛行の魔法は習得済みなのですよね?!」

 んなわけあるかーい!僕は魔法使いとしてこの世界に生まれてきたはずなのに、魔法が使えないんだい!

 魔力が桁違いなのと、多すぎて扱えないのと、僕の周りには僕が放っている魔力が濃いから、引火爆発みたいな現象が起こるんだい!
 掌より小さな火を生み出すファイアの魔法で部屋を黒焦げにしたトラウマはまだ忘れてないんだぞ。
 ふーふーと息を上げながらなんとか窓辺に座り込む事が出来た。

「セラス様ー?セラス様ー?」

「やば!」

 メイド達が僕を呼ぶ声が聞こえる。バレたか、急がねば!
 廊下の角からお仕着せの裾がひらりと見える。

「セラスさま?!な、なにを!!」

 まだ十分に距離があったから、僕は余裕で空中に身を躍らせる事が出来た。

 やったね、バイバイ!地面にぶつかるのは痛そうだけど、仕方がない。あれこれ注文をつけるから悪かったんだ。少しでも動けるうちに死んでおけば良かったんだよ。
 今までの事が走馬灯になって駆け巡る。とても残念なことに、覚えている事は少なくて、アランがたくさん出てきた。笑って怒って失言して。好きだと言ってくれたのはアランだけ。レオンも気に入ったとは言ったけど、穴だけとか酷いやつだ。
 アランとの思い出もすぐに消えて、どうしたことかティンの顔まで浮かんで来た。嫌いなんだけどなー、絆された?まあティンが魔力を吸うから僕はここ最近はずっと意識がはっきりしている。
 だから、ティンの顔を思い出すんだろう。

 あんまりな人生だったけど、やっぱり元を正せばチートなんて要求した僕が馬鹿だったんだ。自己責任って重い言葉だな。
 僕に関わった人達で幸せになれ人はいたのかな?一人でもそんな人がいたなら、僕はここに生まれて来た意味があったと言えるんだけどな。
 迷惑ばかりかけていた気がする。今度はチートなんか貰わずに、自分の手で人の役に立つ人間になりたいな。
 
 ああ!頼むから助かったりしないでくれよ!もう寝たきりは勘弁して欲しいんだ!
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