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「え?あ、うん。なんか真っ白な所にね、箱が一個あるの。小さい箱なんだけど、多分中に母様がいるよね?」

「セラスと……話せたんだな?」

「うん、母様って呼んだら最初びっくりしてた。それから子供がいっぱいいるのよって、教えたら凄く驚いてた」

「……シュリン、お前はなんで凄い子なんだ!」

「へ?」

 ウィスティードはシュリンを抱き上げた。

「セラスを起こしたんだな!凄い、凄いぞ!シュリン!セラスは、他に何か言ってなかったか?!」

「子供、多すぎじゃない?って100人超えはやり過ぎって言ってたけど、もっと弟と妹がいても良いよって言っておいたよ」

「シュリン、お前は良い子だ!」

 ウィスティードは精霊を増やすのにセラスを抱くが、気に入っているから側に置きたいとも思っていた。


 シュリンはセラスを起こせるかも知れない。精霊王達の期待は膨らんだ。

「母様ーー!」

「やっぱり来たねぇ。シュリンの声は良く通るんだよなぁ」

 白い世界の中に小さな箱が変わらずあってシュリンは安堵する。

「母様!シュリン、父様以外の王様にもお願いされたの!母様を起こしてって」

「……そう、なんだ」

 声が曇った事をシュリンは敏感に察して、しょんぼり眉毛を下げた。

「母様、起きたくないの?」

「……」

 ますますシュリンの眉毛は下がる。

「母様、シュリン達に会いたくない?」

「会いたくない訳じゃないんだけど……もうあの世界には戻りたくないと言うか……あの世界に意味を感じないと言うか……」

 シュリン達セラスの子供は皆、聞かされている話だ。お前たちの母様は起きる事は無いだろうと。
 荒れた精霊界の回復と減った精霊を増やす為にいるんだと何度も何度も聞かされている。

「声をかけてもらう事も、頭を撫でてくれる事もないだろう。でも母様はお前達を産んでくれたし、育つ為の魔力もくれる。少し寂しいかと思うが我慢して欲しい」

 全員が我慢している事をシュリンは知っている。でもここに来れば母様とお話は出来る。皆、シュリンと同じ事を試した。でもここにたどり着けたのはシュリンだけだった。

「……じゃあシュリン、ずっとここにいる」

「だ、駄目だよ!こんな濃い魔力の中にいたらシュリンの存在が魔力で潰されちゃうよ」

「いい、それでも良い。シュリンが母様を起こせないって分かったら、また虐められるし。ならシュリンもあの世界に帰りたくない。ここにいる」

 シュリンは小さな箱の隣で蹲った。

「だめだ、シュリン。シュリン!帰るんだ!」

「嫌っ!母様と一緒にいる!」

 シュリンは膝を抱えて石のように小さくなる。

「だめだ!シュリン。死んじゃうよ!」

「いい!母様の隣で死んじゃうならそれで良い!」

「だめっ!」

「やだっ!」

「シュリン!」

「やだあーーー!シュリンは母様と一緒にいるーーー!」

 二人は正しく親子であり、似た者同士であった。



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