39 / 61
39
しおりを挟む
「え?あ、うん。なんか真っ白な所にね、箱が一個あるの。小さい箱なんだけど、多分中に母様がいるよね?」
「セラスと……話せたんだな?」
「うん、母様って呼んだら最初びっくりしてた。それから子供がいっぱいいるのよって、教えたら凄く驚いてた」
「……シュリン、お前はなんで凄い子なんだ!」
「へ?」
ウィスティードはシュリンを抱き上げた。
「セラスを起こしたんだな!凄い、凄いぞ!シュリン!セラスは、他に何か言ってなかったか?!」
「子供、多すぎじゃない?って100人超えはやり過ぎって言ってたけど、もっと弟と妹がいても良いよって言っておいたよ」
「シュリン、お前は良い子だ!」
ウィスティードは精霊を増やすのにセラスを抱くが、気に入っているから側に置きたいとも思っていた。
シュリンはセラスを起こせるかも知れない。精霊王達の期待は膨らんだ。
「母様ーー!」
「やっぱり来たねぇ。シュリンの声は良く通るんだよなぁ」
白い世界の中に小さな箱が変わらずあってシュリンは安堵する。
「母様!シュリン、父様以外の王様にもお願いされたの!母様を起こしてって」
「……そう、なんだ」
声が曇った事をシュリンは敏感に察して、しょんぼり眉毛を下げた。
「母様、起きたくないの?」
「……」
ますますシュリンの眉毛は下がる。
「母様、シュリン達に会いたくない?」
「会いたくない訳じゃないんだけど……もうあの世界には戻りたくないと言うか……あの世界に意味を感じないと言うか……」
シュリン達セラスの子供は皆、聞かされている話だ。お前たちの母様は起きる事は無いだろうと。
荒れた精霊界の回復と減った精霊を増やす為にいるんだと何度も何度も聞かされている。
「声をかけてもらう事も、頭を撫でてくれる事もないだろう。でも母様はお前達を産んでくれたし、育つ為の魔力もくれる。少し寂しいかと思うが我慢して欲しい」
全員が我慢している事をシュリンは知っている。でもここに来れば母様とお話は出来る。皆、シュリンと同じ事を試した。でもここにたどり着けたのはシュリンだけだった。
「……じゃあシュリン、ずっとここにいる」
「だ、駄目だよ!こんな濃い魔力の中にいたらシュリンの存在が魔力で潰されちゃうよ」
「いい、それでも良い。シュリンが母様を起こせないって分かったら、また虐められるし。ならシュリンもあの世界に帰りたくない。ここにいる」
シュリンは小さな箱の隣で蹲った。
「だめだ、シュリン。シュリン!帰るんだ!」
「嫌っ!母様と一緒にいる!」
シュリンは膝を抱えて石のように小さくなる。
「だめだ!シュリン。死んじゃうよ!」
「いい!母様の隣で死んじゃうならそれで良い!」
「だめっ!」
「やだっ!」
「シュリン!」
「やだあーーー!シュリンは母様と一緒にいるーーー!」
二人は正しく親子であり、似た者同士であった。
「セラスと……話せたんだな?」
「うん、母様って呼んだら最初びっくりしてた。それから子供がいっぱいいるのよって、教えたら凄く驚いてた」
「……シュリン、お前はなんで凄い子なんだ!」
「へ?」
ウィスティードはシュリンを抱き上げた。
「セラスを起こしたんだな!凄い、凄いぞ!シュリン!セラスは、他に何か言ってなかったか?!」
「子供、多すぎじゃない?って100人超えはやり過ぎって言ってたけど、もっと弟と妹がいても良いよって言っておいたよ」
「シュリン、お前は良い子だ!」
ウィスティードは精霊を増やすのにセラスを抱くが、気に入っているから側に置きたいとも思っていた。
シュリンはセラスを起こせるかも知れない。精霊王達の期待は膨らんだ。
「母様ーー!」
「やっぱり来たねぇ。シュリンの声は良く通るんだよなぁ」
白い世界の中に小さな箱が変わらずあってシュリンは安堵する。
「母様!シュリン、父様以外の王様にもお願いされたの!母様を起こしてって」
「……そう、なんだ」
声が曇った事をシュリンは敏感に察して、しょんぼり眉毛を下げた。
「母様、起きたくないの?」
「……」
ますますシュリンの眉毛は下がる。
「母様、シュリン達に会いたくない?」
「会いたくない訳じゃないんだけど……もうあの世界には戻りたくないと言うか……あの世界に意味を感じないと言うか……」
シュリン達セラスの子供は皆、聞かされている話だ。お前たちの母様は起きる事は無いだろうと。
荒れた精霊界の回復と減った精霊を増やす為にいるんだと何度も何度も聞かされている。
「声をかけてもらう事も、頭を撫でてくれる事もないだろう。でも母様はお前達を産んでくれたし、育つ為の魔力もくれる。少し寂しいかと思うが我慢して欲しい」
全員が我慢している事をシュリンは知っている。でもここに来れば母様とお話は出来る。皆、シュリンと同じ事を試した。でもここにたどり着けたのはシュリンだけだった。
「……じゃあシュリン、ずっとここにいる」
「だ、駄目だよ!こんな濃い魔力の中にいたらシュリンの存在が魔力で潰されちゃうよ」
「いい、それでも良い。シュリンが母様を起こせないって分かったら、また虐められるし。ならシュリンもあの世界に帰りたくない。ここにいる」
シュリンは小さな箱の隣で蹲った。
「だめだ、シュリン。シュリン!帰るんだ!」
「嫌っ!母様と一緒にいる!」
シュリンは膝を抱えて石のように小さくなる。
「だめだ!シュリン。死んじゃうよ!」
「いい!母様の隣で死んじゃうならそれで良い!」
「だめっ!」
「やだっ!」
「シュリン!」
「やだあーーー!シュリンは母様と一緒にいるーーー!」
二人は正しく親子であり、似た者同士であった。
2
お気に入りに追加
836
あなたにおすすめの小説
【短編完結】悪役令嬢が私に婚約者を押し付けて来る!どれも要らない!お断りです
鏑木 うりこ
恋愛
高柳はるは異世界召喚で聖女として呼び出されてしまった!しかもそこは悪役令嬢に聖女がざまぁされる小説ほぼ一緒だった!
内容を知っているハルはなんとか上手く立ち回ろうとするけるども……令嬢達の様子がおかしいんです。
短編と言うよりショートショートですね!5000字切ってます。
書きたいものがとっ散らかってしまい、纏まらないー💦
完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!
音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。
頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。
都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。
「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」
断末魔に涙した彼女は……
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!
ユウ
恋愛
エリーゼは、王妃になる予定だった。
故郷を失い後ろ盾を失くし代わりに王妃として選ばれたのは後から妃候補となった侯爵令嬢だった。
聖女の資格を持ち国に貢献した暁に正妃となりエリーゼは側妃となったが夜の渡りもなく周りから冷遇される日々を送っていた。
日陰の日々を送る中、婚約者であり唯一の理解者にも忘れされる中。
長らく魔物の侵略を受けていた東の大陸を取り戻したことでとある騎士に妃を下賜することとなったのだが、選ばれたのはエリーゼだった。
下賜される相手は冷たく人をよせつけず、猛毒を持つ薔薇の貴公子と呼ばれる男だった。
用済みになったエリーゼは殺されるのかと思ったが…
「私は貴女以外に妻を持つ気はない」
愛されることはないと思っていたのに何故か甘い言葉に甘い笑顔を向けられてしまう。
その頃、すべてを手に入れた側妃から正妃となった聖女に不幸が訪れるのだった。
前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです
珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。
老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。
そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。
【完結】今度こそもふり倒す人生になれなかった平民の男の話〜俺の幸せどこ行った?
鏑木 うりこ
BL
俺の名前はジュード。平民だからそれでおしまい。
俺には前世と言うものがあって、どこぞのど偉い腹黒公爵のおじさん38歳だった。大失敗して、おじさん38歳は失脚。家族も何もかも無くし、38歳おじさんだった俺はもふもふに目覚めたのだ。
残りの人生をもふもふの為に使い、もふらー天国を作りかけた所で元妾の子供に拷問の末殺されてしまった!
貴方が私の可愛い子供達を助けてくれるなら、赤ん坊の頃からもふもふさせてあげましょう。
神はいた!!
俺は今度の人生は全てもふもふの為に使うのだ!
完結致しました。たくさんのご声援ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる