16 / 61
16
しおりを挟む
「ぎゃあああー!!」
朝早くにメイドの悲鳴で屋敷は慌ただしくなった。
「なんだ?!セラス様の部屋の方から?!」
アランはさっと着替えて、走り出した。
「セラス様っ!」
扉を乱暴に開けると、風に切り裂かれたように傷だらけのメイドと、ベッドの上で小さくなって震えているセラス様が見えた。
「アラン……?アラン、どこ?見えない、見えないの……怖い、怖いし、痛いよ……アラン、アラン……」
目の焦点が合っていない。それに右腕から血を流している。
「ここです!私はここです、セラス様!」
走り寄って、ふわふわと空を漂っていた両手を掴んて抱き寄せた。
「アラン?アラン、見えない、また見えない……嫌だ、また何も分からなくなるのは嫌だ。助けて、助けてアラン!」
血に濡れた手で私にぎゅっとしがみついてくる。ああ!なんてお可哀想な!そう思う反面、喜びも湧き上がってくる。こんなにも求めてくださる事が!
この可愛い方は私がいないと何も出来ないということが!
「大丈夫です、アランです。目はすぐに見えるようにします。そらよりこのお怪我はどうなさったのです?」
「寝てたら、突然。誰か入ってきたみたいだった。一人でいたくない、アランやっぱり一緒にいて。ここのやつら、夜に僕を虐めるんだ」
ガタガタと震える体を包み込むと、少し安心したのか、力が抜けた。
「何があった?!」
管理官が遅れて飛び込んで来る。
「どうやら、セラス様がそのメイドに襲われたようです。メイドは全員捕らえたのではなかったのですか?!」
血塗れで床に横たわるメイドは手に短剣を持っている。それでセラス様を刺したのだろう。怪我の具合からすればメイドの方が重傷だが、我々はセラス様の方が大切だ。
「全員のはずだ。名簿も照らし合わせた。辞めさせられた者達の照合はまだまだが、このメイドは一体?!」
「ミリィ!いやぁ!!」
メイド長が叫び出す。
「ミリィ!ミリィ!一体何が!!」
「メイド長、お前の知り合いか?」
「娘です!ミリィ!」
静止を振り切り、メイド長は傷だらけの娘に駆け寄る。
「ミリィ!ああ!生きてる!良かった、神様、ありがとうございます!」
ひとしきり神に祈った所で、セラス様の方を向いて鬼の形相を見せた。
「この人形のくせに!人間のなりそこないのくせに!私の可愛い娘に怪我なんかさせて、タダで済むと思ってるのかい!汚らしいゴミクズ!今日こそはくびり殺してやるっ!」
「助けて!アラン!あいついつも僕を殺そうと首を絞めるんだ!怖いっ」
なんて事を!可愛いセラス様に暴言を吐くだけでも許されないのに、首を絞める?!この細くて可憐な首にあんな狂女の指が触れていいわけないだろう!
セラス様を背中に隠して、迎え撃とうとしたが、メイド長は管理官の連れてきた兵士に蹴飛ばされ
「ぎゃっ!」
と、言いながら床に転がった。
「本当になんて事をしてくれる親子なんだ!あり得ない!」
管理官は絶望に打ちひしがれるが、明らかにしなければならない事が多すぎた。
朝早くにメイドの悲鳴で屋敷は慌ただしくなった。
「なんだ?!セラス様の部屋の方から?!」
アランはさっと着替えて、走り出した。
「セラス様っ!」
扉を乱暴に開けると、風に切り裂かれたように傷だらけのメイドと、ベッドの上で小さくなって震えているセラス様が見えた。
「アラン……?アラン、どこ?見えない、見えないの……怖い、怖いし、痛いよ……アラン、アラン……」
目の焦点が合っていない。それに右腕から血を流している。
「ここです!私はここです、セラス様!」
走り寄って、ふわふわと空を漂っていた両手を掴んて抱き寄せた。
「アラン?アラン、見えない、また見えない……嫌だ、また何も分からなくなるのは嫌だ。助けて、助けてアラン!」
血に濡れた手で私にぎゅっとしがみついてくる。ああ!なんてお可哀想な!そう思う反面、喜びも湧き上がってくる。こんなにも求めてくださる事が!
この可愛い方は私がいないと何も出来ないということが!
「大丈夫です、アランです。目はすぐに見えるようにします。そらよりこのお怪我はどうなさったのです?」
「寝てたら、突然。誰か入ってきたみたいだった。一人でいたくない、アランやっぱり一緒にいて。ここのやつら、夜に僕を虐めるんだ」
ガタガタと震える体を包み込むと、少し安心したのか、力が抜けた。
「何があった?!」
管理官が遅れて飛び込んで来る。
「どうやら、セラス様がそのメイドに襲われたようです。メイドは全員捕らえたのではなかったのですか?!」
血塗れで床に横たわるメイドは手に短剣を持っている。それでセラス様を刺したのだろう。怪我の具合からすればメイドの方が重傷だが、我々はセラス様の方が大切だ。
「全員のはずだ。名簿も照らし合わせた。辞めさせられた者達の照合はまだまだが、このメイドは一体?!」
「ミリィ!いやぁ!!」
メイド長が叫び出す。
「ミリィ!ミリィ!一体何が!!」
「メイド長、お前の知り合いか?」
「娘です!ミリィ!」
静止を振り切り、メイド長は傷だらけの娘に駆け寄る。
「ミリィ!ああ!生きてる!良かった、神様、ありがとうございます!」
ひとしきり神に祈った所で、セラス様の方を向いて鬼の形相を見せた。
「この人形のくせに!人間のなりそこないのくせに!私の可愛い娘に怪我なんかさせて、タダで済むと思ってるのかい!汚らしいゴミクズ!今日こそはくびり殺してやるっ!」
「助けて!アラン!あいついつも僕を殺そうと首を絞めるんだ!怖いっ」
なんて事を!可愛いセラス様に暴言を吐くだけでも許されないのに、首を絞める?!この細くて可憐な首にあんな狂女の指が触れていいわけないだろう!
セラス様を背中に隠して、迎え撃とうとしたが、メイド長は管理官の連れてきた兵士に蹴飛ばされ
「ぎゃっ!」
と、言いながら床に転がった。
「本当になんて事をしてくれる親子なんだ!あり得ない!」
管理官は絶望に打ちひしがれるが、明らかにしなければならない事が多すぎた。
12
お気に入りに追加
837
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
R18/君が婚約破棄するというので、絶対離さないと分からせるまで愛するのをやめない
ナイトウ
BL
傾向:溺愛執着一途婚約者攻め×おバカざまぁサレ役ポジ王子受け
夜這い、言葉責め、前立腺責め、結腸責め、強引
政略結婚とかまっぴらなのでダミーの浮気相手作って婚約破棄宣言したら秒で却下されるわ夜襲われるわ。
オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい
りまり
BL
僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。
この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。
僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。
本当に僕にはもったいない人なんだ。
どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。
彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。
答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。
後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
異世界で普通に死にたい
翠雲花
BL
寝て起きて回避。寝て起きて回避。
もう疲れた。僕はのんびり過ごしたい!
しかも珍しく寝なかったらこれだよ。
ここどこなんだーー!!
『じゃあ、君に転生してもらうよ!頑張ってね!楽しい生活が君を待ってるよ!』
初投稿、初完結の物語になります。
タイトルに☆が付いている場合は性描写ありになります。本番有りは★にします。
苦手な方はご注意下さい。
前編だけ、最近の書きた方に修正しています。後編もそのうち修正します。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる