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俺はアラン。ハズレの魔力の破砕の一族に生まれた。
俺達の破砕の魔力は文字通り、他人の魔力を壊してしまう。吸い取るなら使い道が多かったのに、大事なエネルギー源である魔力を壊してしまう俺達は、日陰に暮らす事を余儀なくされた。
戦いや、戦闘には使える事もあったが、ハズレはハズレだった。
所が俺に転機があった。セラス様に引き合わされたのだ。
セラス様は綺麗な方だった。一目で恋に落ちたような物だったが、目に生気のない人形の様な人だった。
ただ、座りそこに居る。でもそこにいるだけで、この方は素晴らしく美しい。
それが酷すぎる今までと、多すぎる魔力のせいだと説明された。
「アラン、お前がセラス様の魔力を砕いてみるんだ」
「分かりました」
最初は近くから。上手く砕けるとわかると、手を繋いでみた。手を伸ばすとビクッとして一瞬引っ込めた麗人。何かあったのだろうとは思うが優しく握ると焦点の合っていない目できょとんと見上げられた。
心臓が掴まれるとはこの事だと思った。
本当に物凄い量の魔力が全身から溢れ出していた。漏れ出たものは簡単に砕け、慎重に手のひらに溜まった魔力を砕いた。
「っ!」
セラス様は手を振り払った。驚いたのだろう。やっとこの時、俺を認識したような気がする。
「痛みますか?」
そんな事はないと思うが、俺は優しく聞いてみた。セラス様は最初、ピクリと指先を動かす。それから手を握ったり開いたりしている。
「……て、うご、く……」
まさか、魔力が多すぎて動かせないでいたのか?
「失礼します」
こめかみの辺りに手を置いて、慎重に魔力を砕いて行く。顔のそばを触られて驚いたようだが、害がないと分かると大人しくしていてくれた。一度やると何となくこの人の魔力の質が分かってくる。
とても、きれいな魔力だ。輝いて均一で歪みがない。後から後から溢れて来るような膨大な魔力の奔流が感じられる。
これは外側から砕いてもすぐに……。
「どうですか?あまり持たないとは思いますが、目と頭の周りの魔力を砕きました」
「あ……見える……聞こえます」
セラス様は光の灯った紫色の瞳を俺の方に向けた。
「見えます……凄い……今まで良くみえなかった。言葉も何を言っているか、わからなかった」
何という事だ。この人は自分の魔力のせいで、何も分からず生きていたのか。
「あ、ああ!また、見えなくなって来た……」
絶望に沈む声。湧き出る魔力が上って来たんだ。もう一度、目の周りの魔力を砕く。
「見える……!」
目を輝かせる人に俺は言う。
「もっと深い所から砕かなければすぐに魔力が押し寄せて来るんです」
「深いところ?」
俺は口を開けて中を指さす。
「体の中から」
少し迷ったようだが、こくりと頷いたので周りの偉い人にも了承を取り、俺は迷う事なく唇を合わせた。
男同士?嫌悪感は一欠片も無かった。俺はこの美しい人が可愛くて、好きで堪らない。
「あ、あふ」
舌を這わせて、唇を割り開く。おずおずと開かれるを待てずに、中に入り込む。
「んむっ、んっ」
いきなり突っ込まれて苦しいのか、戸惑ったのか。小さく上げた声も吸い込んでしまうほどに舐め上げる。
可愛い、可愛い!
少し逃げようとする頭を掴んで引き寄せていた。駄目、逃がさない。喉の奥まで味あわせて?
ぐちゅぐちゅと絡み合う舌が、いやらしい音を立てているが、どうでも良い。可愛い、可愛い。どこを舐めても美味しい。
今まで所在なさげにしていた両手が俺の背中に回される。ああ、俺を感じてくれている。痛みなどないよう、苦しくないように慎重に砕いて行く。
「あっ、あ……っ、んっ!」
固まった大きな魔力を砕くと気持ち良い。それはセラス様も一緒のようで、小さな声が漏れている。
たまらない、ああ、なんて可愛い人!
周囲の監視人が、咳払いをするほど長く口づけをしていたが、大体の魔力を砕き終わって離すと、くたっと力が抜けていた。
「ああ……すごい……何年ぶりかな、きちんと考えられるのって」
頭まで魔力に浸けられていたんだ。この人は。
俺がセラス様の従者に正式に任命されたのはこの時からだった。
俺達の破砕の魔力は文字通り、他人の魔力を壊してしまう。吸い取るなら使い道が多かったのに、大事なエネルギー源である魔力を壊してしまう俺達は、日陰に暮らす事を余儀なくされた。
戦いや、戦闘には使える事もあったが、ハズレはハズレだった。
所が俺に転機があった。セラス様に引き合わされたのだ。
セラス様は綺麗な方だった。一目で恋に落ちたような物だったが、目に生気のない人形の様な人だった。
ただ、座りそこに居る。でもそこにいるだけで、この方は素晴らしく美しい。
それが酷すぎる今までと、多すぎる魔力のせいだと説明された。
「アラン、お前がセラス様の魔力を砕いてみるんだ」
「分かりました」
最初は近くから。上手く砕けるとわかると、手を繋いでみた。手を伸ばすとビクッとして一瞬引っ込めた麗人。何かあったのだろうとは思うが優しく握ると焦点の合っていない目できょとんと見上げられた。
心臓が掴まれるとはこの事だと思った。
本当に物凄い量の魔力が全身から溢れ出していた。漏れ出たものは簡単に砕け、慎重に手のひらに溜まった魔力を砕いた。
「っ!」
セラス様は手を振り払った。驚いたのだろう。やっとこの時、俺を認識したような気がする。
「痛みますか?」
そんな事はないと思うが、俺は優しく聞いてみた。セラス様は最初、ピクリと指先を動かす。それから手を握ったり開いたりしている。
「……て、うご、く……」
まさか、魔力が多すぎて動かせないでいたのか?
「失礼します」
こめかみの辺りに手を置いて、慎重に魔力を砕いて行く。顔のそばを触られて驚いたようだが、害がないと分かると大人しくしていてくれた。一度やると何となくこの人の魔力の質が分かってくる。
とても、きれいな魔力だ。輝いて均一で歪みがない。後から後から溢れて来るような膨大な魔力の奔流が感じられる。
これは外側から砕いてもすぐに……。
「どうですか?あまり持たないとは思いますが、目と頭の周りの魔力を砕きました」
「あ……見える……聞こえます」
セラス様は光の灯った紫色の瞳を俺の方に向けた。
「見えます……凄い……今まで良くみえなかった。言葉も何を言っているか、わからなかった」
何という事だ。この人は自分の魔力のせいで、何も分からず生きていたのか。
「あ、ああ!また、見えなくなって来た……」
絶望に沈む声。湧き出る魔力が上って来たんだ。もう一度、目の周りの魔力を砕く。
「見える……!」
目を輝かせる人に俺は言う。
「もっと深い所から砕かなければすぐに魔力が押し寄せて来るんです」
「深いところ?」
俺は口を開けて中を指さす。
「体の中から」
少し迷ったようだが、こくりと頷いたので周りの偉い人にも了承を取り、俺は迷う事なく唇を合わせた。
男同士?嫌悪感は一欠片も無かった。俺はこの美しい人が可愛くて、好きで堪らない。
「あ、あふ」
舌を這わせて、唇を割り開く。おずおずと開かれるを待てずに、中に入り込む。
「んむっ、んっ」
いきなり突っ込まれて苦しいのか、戸惑ったのか。小さく上げた声も吸い込んでしまうほどに舐め上げる。
可愛い、可愛い!
少し逃げようとする頭を掴んで引き寄せていた。駄目、逃がさない。喉の奥まで味あわせて?
ぐちゅぐちゅと絡み合う舌が、いやらしい音を立てているが、どうでも良い。可愛い、可愛い。どこを舐めても美味しい。
今まで所在なさげにしていた両手が俺の背中に回される。ああ、俺を感じてくれている。痛みなどないよう、苦しくないように慎重に砕いて行く。
「あっ、あ……っ、んっ!」
固まった大きな魔力を砕くと気持ち良い。それはセラス様も一緒のようで、小さな声が漏れている。
たまらない、ああ、なんて可愛い人!
周囲の監視人が、咳払いをするほど長く口づけをしていたが、大体の魔力を砕き終わって離すと、くたっと力が抜けていた。
「ああ……すごい……何年ぶりかな、きちんと考えられるのって」
頭まで魔力に浸けられていたんだ。この人は。
俺がセラス様の従者に正式に任命されたのはこの時からだった。
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